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下山・さいたま記念病院副院長 徳洲会リアルワールド データ研究の成果発表

2026年(令和8年)11月02日 月曜日

下山・さいたま記念病院副院長 徳洲会リアルワールド データ研究の成果発表

“腫瘍循環器”と呼ばれる新しい医学領域がある。がん治療の影響などで発症する循環器疾患の予防・治療が研究目的で、2017年には日本腫瘍循環器学会が設立された。徳洲会グループは匿名化した診療ビッグデータを活用し、医学の発展に貢献するため、「徳洲会リアルワールドデータ(TREAD)・プロジェクト」を推進しており、この腫瘍循環器領域でも着々と研究成果を上げている。9月5日から2日間開催された同学会の第9回学術集会では、さいたま記念病院の下山ライ副院長(外科)が最新知見を発表した。

日本腫瘍循環器学会学術集会に登壇

「ATEのリスク因子を念頭に置いて診療を行うことが大切です」と下山副院長

演題名は「Risk Factors for Incident Arterial Thromboembolism in Metastatic Gastrointestinal Cancer: Tokushukai Real-World Data Project (TREAD 07)」(転移性消化管がんにおける動脈血栓塞栓症[ATE]のリスク因子の解析:TREAD 07)。転移性消化管がん患者さんに関して、心筋梗塞や狭心症などの急性冠症候群、虚血性脳卒中、末梢動脈閉塞といったATEの発症に関連するリスク因子について検討を行い、結果を発表した。

下山副院長は2年前の同学術集会でも、ATEを発症した転移性消化管がん患者さんを対象とした研究を発表し、ATEの1年累積発症率(1年間のうちに対象集団のなかから当該疾患を発症する率)は5.2%であり、死亡リスクは約1.5倍になるという解析結果を報告。

さらに昨年の日本臨床腫瘍学会学術集会ではATEの頻度(1.7%)に加え、主要心血管イベント(MACE=急性心筋梗塞、脳卒中、心血管死、不安定狭心症、心不全など)についても頻度(2.9%)と予後を調べて発表するなど、TREAD 07として継続的に取り組んでいる。

背景には、近年になって注目されてきたものの、静脈血栓塞栓症と比べて動脈血栓塞栓症についての研究報告が少ない現状がある。研究が進んでいるのは主に深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症など静脈血栓症だ。

徳洲会は患者さんの診療を通じて得られた貴重なビッグデータの活用によって、あまり開拓が進んでいない研究領域を探索し、得られた知見を還元することで、医学の発展や患者さんへの貢献につなげていく方針。徳洲会の診療ビッグデータは、併存疾患を有する高齢の患者さんなど、市中病院が実臨床で診療する機会の多い症例を豊富に含み、まさしく“リアルワールドデータ”であるのが特徴であり、研究データとしての強みだ。

TREAD07の対象は、2010年4月から2024年3月までに転移性消化管がんと診断された6,580人。ATE発症のリスク因子を調べた今回の研究では、このうち採血データを入手できた4,251人の解析を行った。内訳は食道がん207例、胃がん1,494例、小腸がん60例、大腸(結腸・直腸)がん2,490例。

患者背景や既往歴、採血データなどを解析(多変量解析)した結果、胃がん、糖尿病、高血圧、心房細動・心房粗動、血小板減少がATEの有意なリスク因子として示された。リスクの増加率は、胃がんは大腸がんと比べて110%、糖尿病は97%、高血圧は74%、心房細動・心房粗動は114%、血小板減少は10万減少当たり24%で、病理組織型による影響や相違は認めなかった。

下山副院長はこれらの研究成果を紹介するとともに、転移性消化管がん以外の幅広いがん種に関しても、ATE発症のリスク因子について大規模な解析を行う研究計画があることを示し、発表を終えた。

下山副院長は「転移性消化管がん患者さんに関し、ATE発症と関連性のあるリスク因子を明らかにすることができました。今回の解析データは、ATEの予防や新たな治療戦略を導き出せるものではありませんが、これらの因子を有する患者さんには相応のリスクがあることを念頭に置いて、臨床医は診療に臨むことが大切であるというエビデンス(科学的根拠)が得られたのは一定の成果だと考えています」と振り返る。

続けて「日本腫瘍循環器学会の学術集会は、今回で第9回とまだまだ新しい領域であり、研究の進展が望まれます。がん治療を行う医師と循環器診療を行う医師が、相互に興味をもっていただき、患者さんに、より良い治療を提供していくために、タッグを組んで進んでいけると理想的だと思います」と展望している。

TREAD07の研究成果に関しては、現在、論文を作成中。また今回の発表でも明かした他の幅広いがん種を対象にした横断的な研究は、約3万8,000症例規模の大規模な解析になる見込みだ。

「来年10月には、アジア太平洋地域で初開催となるGlobal Cardio-Oncology Summit (GCOS=世界腫瘍循環器サミット) 2027が東京で行われます。同サミットで横断研究の成果を発表できればと考えています」と意欲を見せる。

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