札幌徳洲会病院 「血友病診療包括外来」を開設 多職種連携でQOLの長期維持に貢献
札幌徳洲会病院 「血友病診療包括外来」を開設 多職種連携でQOLの長期維持に貢献
札幌徳洲会病院は血友病診療包括外来を新たに開設し、同院の特徴のひとつである血友病診療体制の強化を図った。同院は長年にわたり血友病診療に取り組み、2017年に血友病センターを開設、18年には日本血栓止血学会から北海道ブロック血友病診療拠点病院の指定を受けた。同拠点病院は全国でも合計18病院と数が少なく、徳洲会グループでは札幌病院が唯一。血友病は、まれな疾患であるため、専門的な医療を提供する施設が少ないことから、同外来では道内の医療機関と連携し、多職種による患者さんの全身状態の定期的な評価を通じてQOL(生活の質)の長期的な維持に貢献していきたい考えだ。
「気付かないうちに進行してしまう関節症を防ぐため、定期的な受診を」と金田副院長
包括外来では、一人ひとりの患者さんに合わせた診療を提供(診察を行う金田副院長)
血友病は凝固因子欠乏の代表的な疾患。凝固因子とは、出血した時に血液を固めるタンパク質で、これが欠乏すると止血しづらくなる。凝固因子が欠乏する疾患には、血友病(A・B)以外に、フォンビレブランド病などの疾患があり、遺伝性の疾患だ。
札幌病院の金田眞副院長(血友病センター長兼小児科主任部長)は「当院の血友病センターでは小児から成人までの血友病患者さんと、保因者の方を対象として診療を行っています。血友病診療は、かつては出血時の止血管理法として応急的に凝固因子製剤を投与する“出血時補充療法”が中心でしたが、近年は製剤が進歩したことで、“定期補充療法”や“予備的補充療法”が普及し、とくに20代までの若い患者さんは、健常者と大きくは違わない生活を送ることができるようになってきました」と説明。
続けて「一方で、30代以上の患者さんになってくると、これまで繰り返してきた関節内出血による合併症として、血友病性関節症を発症しているケースが多く見られます。また、なかには自覚症状のない“不顕性出血”による関節症が進行している患者さんもおられます。症状が現れる頃には、だいぶ進行してしまうため、未然に悪化を防ぐことを目的として血友病診療包括外来を開設しました」と経緯を語る。
血友病性関節症は主に膝やひじ、足関節などで出血を繰り返すことによって、滑膜に慢性炎症が起こり、関節軟骨や骨が破壊・変形する難治性の合併症。痛みや腫れ、関節の可動域の制限(拘縮)といった症状が現れる。
血友病(A・B)患者さんは全国でも約7,000人と希少疾患であることから、診療機会が限られ、診療技術も蓄積されにくい。同院は現在、約80人の血友病患者さんの診療を受けもち、全国でも有数の専門施設。こうしたことから、ふだんは、かかりつけの医療機関に通院している患者さんに対しても、多職種による精密な画像評価・機能評価などを通じて、年1回程度の全身チェックを提供するのが、血友病診療包括外来の役割だ。
専門技術を学んだ技師などが対応
同外来は毎週月曜と木曜の午後に各2人までの予約制で実施。金田副院長に加え、臨床検査技師、理学療法士、歯科口腔外科医師、臨床遺伝専門医・指導医の資格をもつ小児科医師、看護師が一体となり、一人ひとりの患者さんに多角的にアプローチしている。
関節内の微細な変化を捉える鍵となるのが超音波(エコー)検査だが、血友病特有の滑膜の腫れや軟骨の変性を評価するには、一般的な検査とは異なる高度な専門性が要求される。同院では、血友病の関節エコーを専門的に学んだ臨床検査技師を配置。専門スタッフによる精密な画像評価と、理学療法士による機能評価を組み合わせることで、レントゲンや触診では困難だった変化の把握が可能となる。
「関節の状態を本人の訴えだけで把握するのは限界があります。自覚症状がない段階でいかに微細な変化を見つけるかが重要です」(金田副院長)
また、歯科口腔外科の介入も欠かせない。歯肉炎や抜歯時の出血は大きなリスクであり、定期的な口腔ケアと虫歯予防は全身管理の一環として重要であるためだ。小児科医によるカウンセリング体制も特筆すべき点だ。
血友病を発症するのはほとんどが男性だが、女性の保因者でも手術や出産時に予期せぬ大出血を来すリスクがある。家族歴を正確に把握し保因者への適切な医療情報の提供に努めている。
血友病は現在の医療技術では完治できないため、患者さんを長期的にサポートしていく視点も欠かせない。「患者さんは自己注射の技術習得から、学校生活、就労、そして、がんや循環器疾患など併存疾患に至るまで多岐にわたる悩みに直面します。そうした時に、疾患だけを見ていればいいということではなく、患者さんの精神的なバックアップが必要で、長期的な信頼関係に基づく看護師の役割が非常に重要であると考えています」と金田副院長は強調する。
血友病診療をめぐっては、日本血栓止血学会が中心となり、全国を7つのブロックに分けて、各ブロックに高度な診療を実践する「血友病診療ブロック拠点病院」と、これに準ずる「血友病診療地域中核病院」を指定することで、18年に血友病診療連携体制をスタート。札幌病院は指定制度発足時からの同ブロック拠点病院だ。
今後は同ブロック拠点病院、同地域中核病院、それ以外の血友病診療施設との連携をより強化し、血友病診療の質の向上や維持を図るため、人材育成にも力を入れていきたい考えだ。

