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神経内分泌腫瘍に核医学治療 「ルタテラ治療」を開始

2022.12.14

神経内分泌腫瘍に核医学治療
「ルタテラ治療」を開始

「高い治療効果を期待できます」と村井部長(右)、卯月副主任 ルタテラは約30分かけ点滴投与

湘南鎌倉病院は神経内分泌腫瘍(NET)に対するルタテラ(一般名:ルテチウムオキソドトレオチド)を用いた核医学治療を開始した。RI(放射性同位元素)を組み込んだ薬剤を投与し、腫瘍細胞に放射線を内部照射して抗腫瘍効果を得る治療法だ。同治療に取り組んでいる医療機関は全国で約50施設にとどまる。

NETは10万人当たり年間3~5人程度の発症とまれな疾患で、膵臓や消化管に発生しやすい。

ルタテラは昨年8月に保険適用となった新しい医薬品。適応はNETのなかでもソマトスタチン受容体陽性のタイプ。ソマトスタチンの類似物質にルテチウム177というβ線を放出する放射性物質を結合させてあり、投与するとソマトスタチン受容体をもつ腫瘍細胞に薬剤が集積、β線を放出するという仕組みだ。

村井太郎・放射線腫瘍科部長は「無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)を改善する可能性があるルタテラは、既存の手術や化学療法に加わるべき、NETに対する新たな重要な治療選択肢です」と強調する。

8週間ごとに1回投与というサイクルを4度繰り返すのが基本的な投与スケジュール。投与前日に入院し、治療当日はRI室で、まず腎臓への被曝を低減するアミノ酸輸液の投与を開始、続けてルタテラを点滴静注する。ケースによっては骨髄抑制や腎機能障害など副作用が現れることがある。

同院放射線科の卯月大輔副主任(診療放射線技師)は「入院は2日間ほどですが、ルテチウム177は半減期が約7日あり、RI室だけでなく病室を一時的に管理区域である特別措置病室とします。ここには放射線防護用の衝立を設置するなど他の患者さんや職員の防護措置を講じます」と厳重な管理の下に行う治療であることを指摘する。

退院後も治療から1週間以内は「トイレは2回流す(放射線物質のほとんどは尿から排泄)」、「洗濯物は家族と分ける」、「風呂の順番は最後」といった生活を送る。

ルタテラ(画像提供:富士フイルム富山化学)

1例目の患者さんへの初回投与は9月で、11月に予定どおり2回目の投与を終えた。2例目、3例目の患者さんも今後控える。村井部長は「新しい治療法でもありますので着実に実施していきたい。グループ病院でNETの患者さんを診ている先生がおられ、この治療に興味がありましたら、お気軽にご相談ください」と呼びかけている。

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