BNCTワークショップ 世界で4番目の施設へ 来年3月までに臨床スタート
BNCTワークショップ
世界で4番目の施設へ
来年3月までに臨床スタート
BNCTの施設計画について後藤室長がスウェインソン博士に説明 湘南鎌倉病院で建造中のBNCT装置の一部
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は国際原子力機関(IAEA)原子力科学応用局物理化学部のイアン・スウェインソン博士を招き、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)ワークショップを実施した。
BNCTはホウ素と熱中性子の核反応を利用した新しいがんの治療法。ホウ素化合物であるBPA(ボロノフェニルアラニン)は点滴すると腫瘍に取り込まれる性質がある。患部に照射した熱外中性子が体内で熱中性子になり、ホウ素と反応してアルファ線とリチウム7粒子を放出、がん細胞を破壊する。2020年6月に「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん」に対する治療が保険適用となった。
スウェインソン博士はIAEAで加速器ベースBNCTの技術仕様書(TECDOC)作成の編集責任者を務めており、IAEAが今後発刊するTECDOCには同院で準備中のBNCTの情報が掲載される予定。視察や情報交換などのため今回のワークショップを企画した。
ワークショップでは井上登美夫・同院先端医療センター長(寺田茂彦・同センター長補佐が代読)、中島留美・予防医学センター長らが挨拶した。
続いて先端医療センターの後藤紳一マーケティング推進室長が、国内のBNCT配置状況を説明したうえで、現在、実臨床で使用されている加速器ベースのBNCTは世界に3施設のみであり、いずれも日本にあることを紹介。同院が4番目の臨床施設を目指していることをアピールし、23年の第一四半期(3月末)までにBNCTの臨床使用を開始する計画を明かした。
同院放射線腫瘍科の柴慎太郎医長は、頭頸部がんについては良好な治療成績が見込まれ、すでに保険適用となっていることから、同院ではまず頭頸部がんを対象にスタートする意向。
最後にスウェインソン博士が登壇し、BNCTに関してIAEAが取り組んでいる人材育成など各種活動や、今後実施を計画しているトレーニング・ワークショップ、BNCTに関する多施設共同研究の構想などを説明。また、これまでにIAEAが出版してきたTECDOCに言及し、前回01年に出版したBNCTに関するTECDOCの改訂版を今年出版する方針を示した。
ワークショップ終了後には同院で建造中のBNCT装置や、今年1月に稼働開始した陽子線治療装置などを視察した。