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ビッグデータやAIを積極活用 「臨床意思決定支援システム」開発へ 徳洲会グループが委員会立ち上げ本格化

2021.11.02

ビッグデータやAIを積極活用
臨床意思決定支援システム」開発へ
徳洲会グループが委員会立ち上げ本格化

徳洲会グループは、臨床意思決定支援システム(Clinical Decision Support Sy-stems :CDSS)の開発を本格化する。CDSSとは、医療者が個々の患者さんに対し何らかの意思決定を行う際、役立つ情報を迅速に提供できるようデザインしたコンピューターシステム。臨床ビッグデータやAI(人工知能)などを活用する。グループ全体で推進するため委員会も設置し、委員長を湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の亀井徹正総長、事務局を徳洲会インフォメーションシステム(TIS)が務める。今後、グループ内外から委員を集め、本格的に活動する予定だ。より正確な意思決定につなげ、医療の質や安全性を高めるのが狙い。

診断や予後予測サポート

「CDSSを通じ、さらに良い医療を提供したい」と亀井総長TISで医療分野でのAI活用に取り組む植松SE

CDSSは個々の患者さんに対して行う医療者の判断をサポートするシステム。最新のエビデンスによる情報をもとに絶えず更新し、医療者は何らかの判断を行う際に役立つ情報がすぐに得られる。判断する際に人間がもつ弱点(知識や意識、考え方の偏り)を回避し、患者さんの安全確保や標準的医療の推進などが期待できる。

システムは主にビッグデータやAIを用い開発を推進。具体的には「臨床診断」、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)装置、内視鏡などから得た「画像診断」、飲み合わせの禁忌など「処方関連」、患者さんの「予後予測」をそれぞれ支援するシステムだ。すでに海外では、このようなシステムを活用した医療が急速に拡大している。

その背景について亀井総長は「医学や医療の複雑性」を指摘。「今や医学や医療は日進月歩ではなく秒進分歩。日々、世界中で大量の情報が生まれ、たとえば医学関係の論文だけでも年間200万件と言われています。膨大な情報のなかから、意味あるものを拾い上げ臨床現場にきちんと返していくのは、人間の能力だけでは不可能。新しい技術を使わなければ、最善の医療を提供して患者さんの満足を得ることはできません」と説明する。

徳洲会でも、これまでグループのビッグデータを管理するTISを中心に、国内外の医療関連企業とAIを用いた画像診断支援システムの共同開発、あるいは一部の徳洲会病院がTISと連携し臨床研究でCDSSの開発などを実施。

湘南藤沢病院もこれまで徳洲会のビッグデータを活用し、C型肝炎の見落としを回避するためのサーベイランス(調査)システムや、バイタルサイン(生命兆候)を点数化し急変リスクを判定する「NEWS」にAIを加え精度を高め、入院している患者さんや新型コロナ感染症患者さんの重症化を予測するシステムの開発などに取り組んでいる。

亀井総長は、自院の取り組みについて「ビッグデータがなければわからなかった多様な結果が得られています」と成果を強調。「臨床現場にはさまざまな課題があり、なかにはCDSSで解決可能と思われる課題も少なくない」ことから、CDSSの開発を徳洲会グループとして本格的に推し進めるべきと考え、そのための委員会の設置をグループ幹部に提案、承認を得た。

「アイデアを提案する“場”がなく、TISと相談しながら病院単体で進めているのが現状。似たようなシステムが他の徳洲会病院にあるのかもわからず、比較することもできません。CDSSにかかわる常設の委員会がグループ内に必要と考えました」(亀井総長)

事務局のTISでは主に植松直哉システムエンジニア(SE)ら開発部のメンバーが携わる。今後、委員を決め定期的に会合を開く。亀井総長は「CDSSの開発はまさに“シン・徳洲会”の入り口。グループとして新たなステージを迎え、進化・深化につながります」と期待を寄せ、「委員はデータサイエンスを専門とする外部の方も検討していますが、現場の多様な課題を解決するためのシステムですから、やはり徳洲会のさまざまな職員の方に加わってほしいです」と呼びかけている。

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