新型コロナウイルス感染にも配慮 「被災者さんのため少しでも力に」NPO法人TMATが熊本県で災害医療活動「令和2年7月豪雨」
2020.7.28
新型コロナウイルス感染にも配慮 「被災者さんのため少しでも力に」NPO法人TMATが熊本県で災害医療活動「令和2年7月豪雨」
7月3日から九州や中部地方をはじめ、日本各地で記録的な大雨に見舞われた令和2年7月豪雨。死者数は70人以上に上る。NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は被害が甚大な熊本県に5~17日まで隊員を派遣。診療や避難所のサポート以外に、今回初めて避難所の立ち上げや避難所からの避難など支援を行った。また、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況から、現地にウイルスをもち込まないよう事前に健康チェックを行うなど、感染防止を徹底しながら活動を展開した。
避難所避難や避難所開設は初
集中豪雨で氾濫した球磨川。橋の下まで水位が上昇。泥まみれの道路や横倒しの車、積み上げられたごみ袋などが被害の大きさを物語る
新型コロナウイルスへの配慮から現地では原則、マスクやゴーグルを装着。腰に手指消毒液を携帯して対応
福岡病院の鈴木裕之・救急科医長(右)はTMATの活動報告で熊本県庁内の災害対策本部を訪問
徳洲会グループの鏡クリニック(熊本県)は物資供給など拠点としてTMATに協力
TMAT事務局は4日の早朝から情報収集を開始し、熊本県の球磨(くま)川氾濫などにより、大規模な水害が発生したことなどから、熊本県への隊員派遣を決定。翌5日から17日まで現地のニーズを考慮しながらリレー形式で3隊を送り、主に被害が大きい人吉市、葦北(あしきた)郡芦北(あしきた)町、球磨郡多良木町で支援活動を行った。まず先遣隊として、福岡徳洲会病院の坂元孝光・消化器内科医長をリーダーに、同院の鈴木裕之・救急科医長、川添陽介看護師、和田秀一看護師、西原健太・資材課職員の5人が5日から8日まで活動。
11日に篠崎伸明TMAT副理事長(医療法人沖縄徳洲会副理事長、右)が現地を視察
届いた薬を受け取る橋本薬剤師(左)
避難者の受け入れに向け準備(球磨地区廃校の避難所)
同日から引き継いだ第2陣は医療ニーズが少なくなったことをふまえ、看護師を中心に編成。湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の佐藤哲也看護師をリーダーに、同院の鵜澤佑・救急救命士、福岡病院の古森喬看護師、和泉医療センターの小坂耕平看護師の4人が現地で支援した。
また、所用で熊本県内に滞在していた湘南藤沢病院の浦部優子・非常勤医師が合流し、先遣隊と第1陣のメンバーとともに活動したほか、一般社団法人徳洲会医療安全・質管理部の海老澤健太・課長補佐が現地入りし第1陣と第2陣をサポートした。
いずれも現地で自治体や行政関係者をはじめ保健師、自衛隊、DMAT(国の災害医療チーム)、医師会など支援に入ったチームなどと連携しながら活動。薬の調達手配を含む診療支援や避難所の運営支援など従来のサポート以外に、初めて避難所を一から立ち上げたり、環境の悪い避難所から別の避難所に避難者を移動させる“避難所避難”の支援を行ったりした。13日間で対応した避難者は計200人超。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、隊員を派遣する際は感染対策を徹底。事前に支援する際のマニュアルを整備しただけでなく、第1陣以降はPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査などでの陰性確認を含めた健康チェックを実施。活動中も健康チェックを行い、避難者に診療支援する際はマスクやゴーグルの装着、手指消毒などを徹底した。
人吉・球磨地区に設けられた避難所のひとつでリーダーを務めた境目昭博・球磨郡球磨村役場税務課課長は「今まで被災地に応援に行ったことはありましたが、いざ自分の地域が被災した時のノウハウがなく、TMATのメンバーがいろいろアドバイスしてくださいました」と振り返り、「本当に助かりました」と謝意を表した。
初めて隊員として派遣され、被災地での支援に臨んだ小坂看護師は避難者のメディカルチェックをはじめ、常用薬の確保、避難者の健康台帳づくり、清掃、トイレの設置場所の提案など細かいニーズに対応。「正直、しんどいこともありましたが、とてもやりがいを感じました。なかには涙を流して感謝してくださる方もいて、被災者さんのために少しでも力になりたいという思いでした。機会があれば、また被災地を支援したいです」と振り返った。