徳洲会グループ第5回QI大会 成果共有し全体の質改善 全病院・施設職員参加は初めて
徳洲会グループ第5回QI大会成果共有し全体の質改善 全病院・施設職員参加は初めて
過去最多116演題応募
「QIプロジェクトを大きく育てていきたい」と東上・副理事長
幅広く多様な演題を選定するため「臨床」、「患者目線」、「地域社会」、「職員目線」、「経営」の5カテゴリを設定し、各3演題を選出した。オンライン開催となったことで、初めて全病院・施設の一般職員が参加・投票できるQI大会となった。カテゴリごとに1人1票投票でき、総数は2万8283票に上った。獲得票の多い順にカテゴリ内で順位を決定(表)。
QIプロジェクト担当理事の東上震一・医療法人徳洲会副理事長はビデオメッセージを寄せ、「各病院の質改善活動をグループで共有することが、全体の質向上に寄与します」と強調した。表彰順位ごとに発表概要を紹介する。
臨床
「院内で委員会をつくって対応したい」と小松主任(前列右から3人目)
身体抑制ゼロ目指す ──南部徳洲会病院
小松ちひろ看護主任が「急性期病院における身体抑制廃止に向けた取り組み~抑制のない看護を目指して~」をテーマに発表。院外研修参加者がリーダーになり、各病棟で身体抑制廃止に向けた取り組みを推進、さらに拘束用具の中央管理や受け取り時のフローチャート作成など実施した。
結果、18年度は15.1%あった身体抑制率が2.0%まで減少、小松主任は「スタッフの倫理的視点を高め、看護ケアの意識向上につながりました」。1位を獲得し、「取り組み始めたばかりの活動なので、意識的に継続して定着させていきたいです」とやる気十分だ。
ACLSを5分以内に ──中部徳洲会病院
宮里典子・看護師長が「ACLS5分以内遵守率」と題し発表。院内緊急放送が発動した後、5分以内にACLS(二次救命処置)をできなかった症例を分析し、改善策として声が聞き取りやすい固定電話で連絡、緊急エレベーターは救急優先で定位置の2階に戻すなど実施した。結果、遵守率は年々増加。「CPA(心肺機能停止)発見の8割が看護師であるため、質の高い看護教育などが必要です」と考察。
ペア体制で除水量確認 ──湘南鎌倉総合病院
山下昭二・血液浄化部看護師長(現・山北徳洲会病院看護部長)が「透析中の除水量変更に関するインシデントの低減化」をテーマに発表。透析時にしっかり除水できないと心臓への負担が増すことから、ペアチェック体制を整備し、定型文として「目標除水、UFR(除水速度)、透析時間、担当者名」の記録を徹底した。結果、インシデント発生率は低下、「除水量変更に関するインシデントを検討した報告はまれであり、有効な方法を示せました」と強調した。
患者目線
「“寄り添う看護”で患者満足度が向上」と北條師長
コロナ病棟で高い満足度 ──湘南藤沢徳洲会病院
北條真智子・看護師長が「覚悟・使命感・患者満足度を改めて考える─COVID-19患者の看護を通して─」をテーマに発表。コロナ病棟の患者満足度向上のため①ⅰPad導入(回診・面会用)、②買い物代行、③食事に折り鶴を添えて提供、④症状に合わせた看護――などを実施。結果、患者アンケートで「満足」、「やや満足」の回答が97.2%に上った。
「患者さんは身体的苦痛以上に精神的なダメージをともなっていることがわかりました。『患者さんに寄り添う看護』を提供したことで、満足度の向上につながったと考えます」と北條師長。「コロナ病棟の取り組みを院内外に知っていただく機会となり、スタッフ一同、励みになります」。
待ち時間が大幅に減少 ──札幌徳洲会病院
前田健太・薬剤部主任が「薬局待ち時間短縮への取り組み~業務体系と人員配置の見直し~」と題し発表。20年4月から「翌日注射処方の払い出し時刻を昼から午後4時半に変更」など業務体系を変更、午前中は外来処方調剤に人員を多く配置するなど改善策を実行。結果、同年2月と比べ10月には、処方箋枚数は増加したものの外来処方待ち時間が6.2分へと約10分短縮。「引き続き改善に努めたい」と結んだ。
残食率の低下に成功 ──白根徳洲会病院
信太麻未・管理栄養士が「残食率からみる摂取量の推移と摂取量増加の取り組み」をテーマに発表。残食率25%以下を目標に献立の変更を実施。「味が薄い」との意見があったため、毎食の汁物を朝のみに変更。1日の塩分量に余裕ができ、副食の味付けを多少濃くできるようになった。残食率が4~5%低下し目標を達成。「献立を再検討し、さらなる改善に取り組んでいきたい」。
地域社会
「活動が評価され光栄です」と遠藤課長
感染対策し医療講演再開 ──庄内余目病院
遠藤豊喜・企画課課長が「地域医療活動を止めない!~コロナ禍でも安全、安心の医療講演会の開催」をテーマに発表した。コロナ禍のため20年3月から医療講演を中止していたが、地域から再開希望の声が多く寄せられたため、講演での感染対策ルールを設け、職員の順守はもちろん主催者や参加者への協力要請、行政との協議などを行い同年6月から再開。感染例はなく、目標の月11回以上を開催し「安心・安全な講演会が開催できました」とアピールした。1位に選ばれ、遠藤課長は「終息の兆しが見られないコロナ禍ではありますが、今後も地域への発信を頑張ります」。
介護連携システムを強化 ──鹿児島徳洲会病院
「介護支援等連携指導料の算定向上に向けた取り組み~PFMを活用して」と題し、入退院支援室の山田こずえ看護副主任が発表した。
入院患者さんが退院後、安心して在宅生活を送るために院内の介護連携システムを再構築。担当者の人員配置変更、PFM (Patient Flow Management)シートを活用した情報共有・責任の明確化などを図った結果、「介護支援等連携指導料の算定件数も増え、地域との連携が深まり、退院後の安心した生活につなげられました」とまとめた。
人員確保意識し広報活動 ──瀬戸内徳洲会病院
院内広報委員会委員の池野秀市郎・放射線室主任(診療放射線技師)が「人員確保を意識した広報活動の変更」と題し発表した。離島・へき地の病院にとって人員不足は慢性的な課題であるため、20年4月からマンパワーの確保を強く意識した広報活動を展開。同委員会の体制や活動を見直し、とくに自院のSNSを充実した結果、ブログやフェイスブック、ホームページなどの閲覧件数が大幅に増え、なかには就職内定に至ったケースもあったことを紹介した。
職員目線
「苦情対応を苦痛なくできるように」と吉田室長
苦情対応を恐れない ──武蔵野徳洲会病院
吉田和子・医療安全管理室室長(看護師)が「苦情対応を恐れない職員を育成する方法~医療メディエーションの概念を実践して~」と題し発表。医療メディエーション(関係の調整)勉強会を年間でシリーズ化して実施したことで、現場での苦情に対する初期対応能力が向上、医療安全管理室への相談件数が減少した。
1位を獲得した吉田室長は「スタッフの協力と勉強熱心さが良い結果につながりました。今後もエラーをサポートし合える文化の醸成を目指します」と意欲的だ。
メール活用し医師負担減 ──湘南藤沢徳洲会病院
「PCR陰性患者への検査結果メール送信~医師業務負担軽減の実現」と題し、山口純和・情報システム管理室課長補佐が発表。従来、陽性・陰性問わずPCR検査結果の電話連絡は医師が行っていたが、検査件数増で診療業務に影響したため、陰性の場合は事務職員がメールで連絡する仕組みに変更。医師の電話業務時間が7割削減できた。
離島病院のNP導入効果 ──徳之島徳洲会病院
髙橋博之・診療看護師(NP)が「離島におけるNPの業務作成と導入効果に関する検討」をテーマに発表した。医師業務の軽減や患者さんの処置の待ち時間の減少などを目的にNP業務を実践。①胃瘻交換時間、②形成外科手術開始時間――の指標に着目しNP導入の改善効果を調べた。結果、①は短縮を認めた一方、②は短縮には至らなかった。「今後はポリファーマシーへの介入や形成外科的アセスメント能力や処置技術に関する院内教育などにも貢献したい」。
経営
「予選通過も想像できず、うれしいです」と野坂副主任
ゴミ分別徹底で経費削減 ──東京西徳洲会病院
野坂昌宏・資材課副主任が「ゴミの分別状況改善による経費削減対策について」をテーマに発表。同院はゴミ処理を複数の業者に依頼しているが、契約によりひと月当たりの費用が量にかかわらず定額の業者もあった。そこで清掃担当職員が院内50カ所でゴミの分別状況を採点評価。点数が低い部署に介入したところ、定額の業者が扱うゴミに分別されるものが増え経費削減に成功した。1位に選ばれ野坂副主任は「正直びっくりしています」と驚くことしきり。
精神科の運営方法を提案 ──長崎北徳洲会病院
古田博明・精神神経科医師が「徳洲会病院・精神科、万年不採算部門からの脱出」をテーマに発表。①きっちりとした診療行為の保険点数化、②収入源の拡大、③患者数の増加――の3つの改善策に取り組んだ。
結果、救急医療を担う一般病院の併設精神科でも黒字運営が可能であると強調。「そのためには臨床心理士などコメディカルの協力が不可欠で、代替可能な行為を分配し、保険点数の加算を増やし、漏れなく点数化していくことなどが大切です」と示した。
廃棄量を大幅削減 ──吹田徳洲会病院
看護部(手術室)が「リユースリネン導入後の評価と今後の課題について」と題して発表した。廃棄量削減やコスト削減のため同院はリユースリネンを導入。導入前後1年間を比較した結果、全体のコスト削減率は0.7%にとどまったが、ディスポ(使い捨て)リネンの使用量が大幅に減少、廃棄物の削減率は73.7%に上った。「使用感や保温などの面で課題があり、調査・改善を継続したい」とまとめた。