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小林・湘南鎌倉総合病院院長 「断らない救急」&「働き方改革」両立 ニッポン医療提供体制の未来に向け大胆提言!

2026年(令和8年)05月25日 月曜日

小林・湘南鎌倉総合病院院長 「断らない救急」&「働き方改革」両立 ニッポン医療提供体制の未来に向け大胆提言!

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の小林修三院長のインタビュー記事が、日経メディカルOnlineに掲載された。テーマは「『断らない救急』への仕組みづくりが働き方改革に結び付く」。2024年4月から始まった「医師の働き方改革」の下、いかにして「断らない救急」と医師のより良い働き方を両立させ、さらなる進化を遂げるか――。同院の先進的な取り組みの紹介と、日本の医療提供体制の未来に対する提言を行っている。要約を記す。

「パッション、ミッション、ラブをもって仕事を」と小林院長湘南鎌倉病院の2025年の救急搬送件数は約1万8,000件に達する

湘南鎌倉病院は、徳洲会の理念である「断らない救急」を掲げ、長年にわたり地域医療の最後の砦としての役割を果たしてきた。25年の救急搬送件数は約1万8,000件に達するなど、24時間365日、いかなる時も救急患者さんを受け入れる体制を維持し続けている。

24年4月に「医師の働き方改革」が施行されたが、同院の救急搬送件数や救命救急センターの体制に大きな影響はなかった。小林院長は「当院の人員体制は昔から大きくは変わっていません。医師が無理なく勤務できるよう、じつは15年前から3交代制を敷けるだけの人数をそろえてきました」と強調。続けて「8時間勤務すれば帰宅できる仕組みがあるため、若手からベテランまで、子育てや家族の介護など私生活を大切にしながら、働くことができる環境が整っています」と明かす。

もちろん、新たな法規制への適合に向けた細やかな対応も怠っていない。各診療科の診療実態を詳細に分析し、循環器内科、外傷センター、脳神経外科、産婦人科、麻酔科、外科、心臓血管外科、歯科口腔外科の計8部門で「宿日直許可」を取得。これは、夜間・休日の当直業務を「軽度または短時間の業務」に限定することを条件に、労働基準監督署長の許可を受け、その時間を時間外労働の上限規制などの対象外として扱える制度だ。これにより、特定の条件下で待機時間を適切に管理できるようになった。

さらに、医師の負担を軽減するための「タスクシフト・シェア」を徹底。同院では26年3月時点で、診療看護師を10人、特定行為研修を修了した看護師(特定看護師)を24人養成・配置し、各診療科で専門性の高い業務を分担している。特定行為とは、医師(または歯科医師)が作成した手順書に基づき、診療補助のうち高度な知識・判断力が必要とされる21区分38行為を、所定の研修を修了した看護師が実施できる制度だ。

加えて、医師事務作業補助者を約40人配置。そのなかでも、とくに高度な実務能力をもつ約10人が「メディカルアシスタント(MA)」として、現場の第一線で活躍している。

また、徳洲会グループのスケールメリットを生かした「相互応援体制」も、働き方改革を支える大きな柱だ。全国に広がる92のグループ病院間で、時間外労働の上限や勤務間インターバルの制約により手術や診療が困難になる事態を防ぐため、医師が互いに応援に入る仕組みを構築している。

「たとえば、心臓血管外科などでは宿日直許可を得ていても、月の時間外勤務が100時間を超えるケースがあります。そうした際は、近隣の湘南藤沢徳洲会病院などから医師を招くことで、手術や救急を一切断ることなく件数を維持しています。また、手術を3人で行っていたのを、2人で担うようにしました。こうした仕組みづくりこそ、これからの地域医療に必要だと考えます」と小林院長は持論を展開する。

しかし、改革への道は決して平坦ではなかった。25年3月には、時間外労働が月100時間を超える恐れのある医師への面談(追加的健康確保措置)が不十分であるとして、厚生労働省から改善指導を受けた。小林院長は「それ以来、面談の徹底はもちろん、午後5時の終業時刻には、上長が必ず医師の勤務状況を確認し、必要に応じた業務調整や退勤指示を出す運用を厳格化しています。とくに研修医には『午後5時には必ず帰る』ことを徹底しており、病院全体に労務管理の意識が深く浸透してきました」と振り返る。

一方、小林院長は現在の日本の医療提供体制と経営環境に対し、強い危機感を抱いている。「今の状況は、もはや『国難』に近いと感じます。赤字を埋めるために診療を充実させれば、皮肉にも残業時間は増え、医師の労働環境が悪化するという悪循環に陥ります。さらに、残業時間を一律に縛ることで、医療の質の低下を招く恐れがあり、このままでは10年後に日本の医療が危険な状況に陥るのではないでしょうか」と懸念。

加えて、建築費の高騰により新改築の投資が困難になっている現状も、病院経営を圧迫する要因となっている。

プロは仕事を時間で考えない 一律の規制による質低下危惧

なかでも小林院長が最も危惧しているのは、医師の「プロフェッショナリズム」と法規制の乖離だ。「作家の曽野綾子さんの言葉に『アマは仕事を時間で考え、プロは仕事を時間で考えない』という趣旨のものがありますが、これには非常に共感します。プロである医師は十分な時間をかけてでも、質の高い成果を出そうとする芸術家や職人に通ずる職種だと考えます」と力を込める。

「質の高い医療」という成果を追求したい、もっと学びたいという医師の情熱が、「早く帰りなさい」という画一的な指導によって削がれてしまう現状に、小林院長は疑問を投げかける。「小学校の下校放送のように帰宅を促される今の仕組みが、果たして正しいのか。自己研鑽を志す医師の基本的人権や自由意思を尊重する観点から、もう少し柔軟な法律のつくりようがあったのではないでしょうか」と苦言を呈する。

具体的な改善案として、小林院長は「医師が自らの使命感に基づいて自発的に業務にあたる場合は、時間外労働と見なさないような付帯条件を検討すべきだったのではないでしょうか。とくに、研修医の教育時間の扱いについては、今後、見直しが不可欠だと考えます」と主張。ワーク・ライフ・バランスの重要性を認めつつも、「法で『働くな』とまで命じることへの違和感」を指摘する。

活気にあふれ黒字を生む病院は 情熱・使命感・愛で仕事をする

病院経営の現状に目を向けると、同院は増収減益という課題に直面しつつも、黒字を確保。25年度の年間医業収益(収入)は約470億円を見込むが、経常利益率は19年の13%から直近では5.9%まで低下している。

この背景には、高額な薬剤や医療材料費の増大に加え、安全管理のためのダブルチェックに薬剤師を2人配置するといった「管理コスト」の増大がある。とくに、地域がん診療連携拠点病院として高度な薬物療法を提供すればするほど、手間に対して技術料が設定されていない内科的医療の利益率は下がる傾向にある。小林院長は「内科医が患者さんの状態を見極め、複雑な処方調整を行う判断は、立派な技術のはずです。ここに適切な技術料設定がないことは大きな問題だと考えます」と私見を述べる。

それでも同院が活気にあふれ、黒字を維持できる理由として、①救急を断らない、②診療も断らない、③患者さんに優しい、④部下を教育する、⑤研究し論文を執筆する――といった明確な5つの条件を満たす医師が集まっているからだ。

また、25年は科学研究費の採択実績が8件に上り、隣接する湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)内の研究所では、外国人ポスドク(博士研究員)も雇用するなど、臨床と研究を両立できる環境を整備している。

「職員にはパッション(情熱)、ミッション(使命感)、ラブ(愛)をもって仕事してほしい」と小林院長。「最先端の研究と医療に挑み続ける姿勢が、結果として患者さん、医師、そして経営のすべてに恩恵をもたらす『三方よし』の環境をつくり上げるのだと思います」と、語気を強める。

病床は地域医療の大切な資源! 1床も無駄にしない信念を貫く

医療の倫理性にも言及。経営維持のために不要な入院や退院の延長を行う風潮に対し、小林院長は「医療の原則は『For the Patient(患者さんのために)』。患者さんの利益にならない入院は本末転倒です」と断じる。

ただし、救急の現場では「入院が不必要である」という判断は難しく、大丈夫だと思って患者さんを自宅に帰した後、急変するケースはよくある。とくに、高齢者の急変リスクを考慮した判断の難しさは顕著だ。

「断らない救急」を実践する同院では、こうした患者さんが搬送されてくるケースが多く、あっという間に病床が足りなくなるのが現状。そのため救急搬送からの入院率は、全国平均を下回る30%にとどまっている。これは決して入院を拒んでいるのではなく、つねに病床が逼迫している裏返しでもある。

「病床は国民の税金に支えられた大切な『資源』。1床たりとも無駄にはできない」という信念の下、「動的平衡」(つねに適正な満床に近づける運用)を追求し、病床稼働率約110%、平均在院日数9.4日を維持。地域の後方支援病院と強固に連携し、地域医療を推進している。

今後は、周産期医療の強化や助産院の併設、小児医療の充実を展望。さらに、26年4月には「内科総合診療センター」を開設したが、内科を急性期・回復期・慢性期の3グループに再編することで、病棟に配置する内科医師を3分の2に削減しながらも、医師の休暇取得の柔軟性を高めている。また、「急性期総合診療センター」の設置により、夜間の入院振り分け業務を効率化し、さらなる働き方改革を推し進める。

最後に、小林院長はすべての臨床医に向けて「自分がやりたい医療を、喜びと楽しさをもって追求できる場を見つけてほしいと思います。患者さんの役に立っているという実感をもちながら仕事をすれば、自ずと診療や研究の質は高まります。そのような充実感こそが、これからの医師に最も必要なものです」とエールを送る。

日経メディカル Online2026年3月12日掲載記事を『徳洲新聞』が再編集(参考文献:『医師として』小林修三著、幻冬舎刊)

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t301/202603/592370.html

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