TOPIC

田邉・湘南鎌倉病院院長補佐 腎移植増へグループ横断的に活動 徳洲会6病院で「腎移植相談外来」実施

2025年(令和7年)10月27日 月曜日

田邉・湘南鎌倉病院院長補佐 腎移植増へグループ横断的に活動 徳洲会6病院で「腎移植相談外来」実施

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の田邉一成・院長補佐兼腎移植センター長は、腎移植の症例数アップを目的に、グループ横断的に「腎移植相談外来」に取り組んでいる。透析患者さんのなかにいる移植希望者を全国のグループ病院で掘り起こし、まずは年間50例の移植実施を目指す。この取り組みは、移植医療へのアクセス格差を解消し、若手医師育成や民間病院トップへの実績確立にもつながる挑戦だ。

「すべての患者さんにチャンスを!」

「腎移植をあきらめていた患者さんに選択肢を提供したい」と田邉・院長補佐 腎移植相談外来では移植の意思が固まっていない段階でも気軽に相談できる 退院を翌日に控えた患者さんが涙ながらに感謝を告げる 国内初のロボット支援下同種生体腎移植をダヴィンチ5で実施

田邉・院長補佐は2年前に「腎移植相談外来」を、鹿児島徳洲会病院を皮切りに福岡徳洲会病院、羽生総合病院(埼玉県)、山形徳洲会病院、沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)、東京西徳洲会病院の計6病院に開設、月1回、病院を訪れ、同外来を実施している。「腎移植をあきらめていた患者さんに、選択肢を示すことが大切です」と狙いを説明する。

日本では透析治療を受ける患者さんの移植医療へのアクセスが地理的・情報的に制約があるのが現状。田邉・院長補佐は「透析を続けている患者さんのなかには、『移植は自分には無理だ』、『費用が高すぎる』といった誤解や不安を抱えている方が少なくありません」と指摘。そこで同外来は、「移植の意思が固まっていない段階でも、気軽に相談できる場として設けました」。

同外来では、患者さんから「いくらかかるのですか」と質問されることも多い。そこで田邉・院長補佐は、「患者さんが費用のことで二の足を踏むことのないよう、啓発していきたいと考えています」。また、将来的には同外来を10~20病院に拡大し、現地で移植後のフォローアップにも対応する「腎移植外来」へ転換する構想をもつ。

湘南鎌倉病院の現在の腎移植実績は年間約40例。まず年間50例を達成するために、各病院から年間2〜3人の移植を想定し、10病院で20〜30人を増やすことが目標。ゆくゆくは年間100例を達成し、民間病院トップを目指す。年間200例に到達すれば、日本の移植数の約10%を占める中核施設に成長することになる。

この目標は若手医師の育成にも重要だ。年間50~100例規模の症例があれば、若手が安定して高度な技術を習得することが可能となるからだ。育成後はグループ病院に派遣し、移植医療を展開するサイクルを構築することで、組織的・持続的な体制をつくり上げる。さらに湘南鎌倉病院では、将来的に肝臓移植や心臓移植も手がける「臓器移植センター」設立も視野に入れている。

同院の腎移植は、血管の問題や免疫学的な課題のある難易度の高い症例にも対応。取材した日は、翌日に退院を控えた患者さんが「関西にある3病院に抗体を理由に腎移植を断られ、2年間透析を続けていました。絶望のなか、最後の望みをかけて湘南鎌倉病院に電話したところ、新たな道が開けました」と経緯を説明。「手術はもちろん、術後の拒絶反応への万全な備えもあり、安心してお任せできました」と、涙ながらに感謝を告げていた。

また、同院は先進医療への取り組みにも積極的だ。8月26日にはダヴィンチ5を用い、国内初となるロボット支援下同種生体腎移植を特定臨床研究として行った。田邉・院長補佐は「安全かつ可能な限り侵襲が小さい術式の確立や、保険適用を目指しています」とロボットを用いた腎移植に意欲的だ。

こうした取り組みにより、経済状況や居住地にかかわらず、すべての患者さんにチャンスを提供できる。

田邉・院長補佐は「腎移植を進めることは“三方よし”、すなわち患者さん、医療者、病院運営すべてにとって良いと考えています。徳洲会の“生命だけは平等だ”の理念、“われわれは正しいことをしている”という信念が、プロジェクト推進の最大の原動力になります」と語気を強める。

ページの先頭へ