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湘南大磯病院 循環器内科の診療体制強化 心臓カテーテル室を2室へ増設

2025年(令和7年)05月12日 月曜日

湘南大磯病院 循環器内科の診療体制強化 心臓カテーテル室を2室へ増設

湘南大磯病院(神奈川県)は高性能の血管撮影システムを新たに導入し、心臓カテーテル室を増設した。同システムはAI(人工知能)による画像処理技術を搭載した世界初の装置で、X線照射条件の最適化により、従来機種と比べ40%以上線量を低減しながら高解像度の画像を描出。カテーテルを用いた高度な血管内治療などを強力にサポートする。心臓カテーテル室を従来の1室から2室に増強したことで、救急搬送など緊急疾患への対応力も向上。また昨年から今年にかけ循環器内科の常勤医師が3人から6人に倍増するなど診療体制を大幅に強化。幅広い循環器内科疾患への対応を通じ、同院は一層地域医療に貢献していく考えだ。

世界初AI搭載した血管撮影システム

心臓カテーテル室のスタッフと(前列左から)木村学・循環器内科医長、髙橋副院長、松隂・統括部長、増田部長新病院の完成予想図

血管撮影システムはX線を照射し、心臓や脳をはじめ全身の血管のリアルタイムの透視画像を得るための装置。循環器内科領域では、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患などが疑われる患者さんの手首や鼠径部の血管からカテーテルを挿入し、病変が疑われる部位まで送り込んで状態を確認する血管造影検査や、ステント(金属でできた網目状の筒)、バルーン(風船)などを用いて行う血管内治療に欠かせない医療機器だ。

X線被ばくをできるだけ低減するには、低線量での撮影が望ましいが、低線量ではノイズ(画像の乱れ)の影響で血管の状態などの視認性が落ちるのが課題だった。今回導入した装置では、AIのディープラーニング(深層学習)技術によって、ノイズを抑制したり、コントラストを強調したりし、視認性の向上を図っている。これにより、照射線量を減らしながら高画質の画像描出が可能となった。

松隂崇・循環器内科統括部長は「当院が立地する大磯町は高齢化率が全国平均を超え、心疾患の患者さんも多いのが実情です。検査や治療にともなうX線被ばくは、患者さんに身体的な負担を与える可能性があるので、必要最小限にとどめたいと考えています。同時に、的確な診断や治療には鮮明な画像が求められます。これまで以上に地域に貢献していくため、高性能の血管撮影システムを導入することにしました」と経緯を話す。

同院の心臓カテーテル室は従来1室だった。そのまま血管撮影装置を更新した場合、入れ替え期間中は心臓カテーテル室が使用できなくなる。そこで同院は診療の中断期間をなくすため、新たに心臓カテーテル室を整備。また同院は目下、3年後をめどとした新病院建設プロジェクトが進行中だが、より良い医療をいち早く提供するため新病院開設を待たずに先行導入した。

心臓カテーテル室はX線が外部に漏れないようにするため、壁に鉛を埋め込むなど措置が必要。昨年12月から今年3月までの工期で、地下1階の旧カルテ室を、同院で2室目となる心臓カテーテル室に改修した。

4月1日から2室体制となり、予定手術などで仮に1室使用中の時、緊急対応が必要な救急搬送などがあっても、適切な対応が可能となる利点もある。

髙橋佐枝子副院長は「カテーテル治療は医師だけでなく、看護師や診療放射線技師、臨床工学技士、臨床検査技師など多職種の力が欠かせないチーム医療です。高度医療機器が入り、各職種のモチベーションや向上心が高まるなど好循環が生まれています」と、新しい機器導入がきっかけとなり、心臓カテーテル室に新たな活気が生まれている状況を説明する。

続けて「大磯町、隣の二宮町だけでなく、西湘地区から広く患者さんを受け入れていきたいと考えています。徳洲会の“生命だけは平等だ”の理念の下、“断らない医療”を実践し、患者さんに寄り添った弱者に優しい病院、そして患者さんから『この病院に、かかって良かった』と言ってもらえる病院を目指していきます」と意欲を見せる。

困難症例を受け入れ 診療は安全性最重視

東海大学医学部付属大磯病院(現・湘南大磯病院)を徳洲会が事業承継したのは2023年3月。湘南大磯病院としてスタートした直後、循環器内科の常勤医師は髙橋副院長を中心に3人体制だったが、翌24年に松隂・統括部長と増田尚己・循環器内科部長が着任。この4月には、さらにひとり加わり、常勤医師6人となり診療体制がさらに手厚くなった。

心臓カテーテル治療を行う医師のスキルを客観的に担保する代表的な指標として、日本心血管インターベンション治療学会が運用する「心血管カテーテル治療認定医専門医制度」がある。同院では髙橋副院長、松隂・統括部長、増田部長の3人が同専門医資格を保持している。

松隂・統括部長は「心筋梗塞をはじめ心臓の血管が詰まることで発症する虚血性心疾患は、突然死の原因で最も多いものです。心臓カテーテル室のスタッフと力を合わせ、ひとりでも多くの患者さんを、困難症例も断らずに受け入れ救いたい。そのために尽力していきます。診療では、合併症を起こしては本末転倒ですので安全性を最重視しています。医療を通じ安心して住める町づくりに貢献していきたいです」と抱負を語っている。

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