湘南鎌倉病院「膵がんセンター」開設 質の高い外科手術に加え 高度な集学的治療を提供
湘南鎌倉病院「膵がんセンター」開設 質の高い外科手術に加え 高度な集学的治療を提供
モットーは「あきらめない膵がん治療」と山上センター長
膵がんは部位別がん死亡数で、肺がん、大腸がん、胃がんに次ぎ4位。近年、膵がん症例は増加傾向にあり、さらに死亡数が増加する可能性が高い。また、膵がんは「見つかりにくく死亡率の高いがん」であり、診断から治療まで高いレベルを求められるが、専門的な診療を行える施設は少ないのが現状だ。
こうしたなか、湘南鎌倉病院は膵がんセンターを開設。山上センター長は「当院はトモセラピーによる放射線治療に加え、陽子線治療にも対応でき、先進的な医療機器がそろっています。また、内科系・外科系とも高い技術をもった医師が多くいるため、これらを生かすシステムさえあれば高水準の膵がん治療を提供できます」とアピール。副センター長として川原敏靖・肝胆膵外科主任部長、小泉一也・副院長兼消化器病センター主任部長が就任、外科手術および診断を牽引する。
膵がんに対する手術を行う山上センター長
まず、重要なのが早期診断だ。膵がんはステージ(病期)1であっても5年生存率が6割程度と言われており、求められるのはステージ0(がんが膵管上皮内にとどまる状態)での発見。そのためには、間接所見――膵がんの徴候である膵管の拡張や膵嚢胞を見逃さないことが重要となる。これらの発見には、地域の医師会や病院協会に所属する医師の協力が不可欠であり、山上センター長は自ら診療所や病院を訪れて説明している。また、ゆくゆくは同院の予防医学センターで「膵がんドック」を始める計画だ。
治療では、がんの大きさや浸潤などをもとに、独自の治療アルゴリズムを作成。基本的な方針は、「手術を中心に、化学療法と放射線治療などもあわせて、高度な集学的治療を提供すること」(山上センター長)。また、膵臓の周囲には多くの重要な血管や神経が走っており、手術の難易度は高い。そのため術前にCT(コンピュータ断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像診断)で血管の位置や走行を確認し、出血の少ない手術を目指す。
進行がんへの治療にも対応する。たとえば、動脈に浸潤した膵がんは一般的に手術不能と言われるが、同センターでは化学療法の後に陽子線治療を行い、そのうえで膵がんの摘出と動脈再建を行うというフローで治療可能と考えている。山上センター長は「肝胆膵外科だけでなく、当院の優れた心臓血管外科や形成外科の医師と力を合わせて、進行がん患者さんの『生きる希望』につなげたいです」と語気を強める。
「あきらめない膵がん治療」
チーム医療はきわめて重要で、多診療科、多職種の協力で患者さんの体力面と精神面を支えていく。手術前後にリハビリテーションを行うことで、手術や術後の治療に耐え得る「貯筋(筋力をアップすること)」ができる。加えて、リハビリを完遂するには管理栄養士によるサポートも必要だ。また、患者さんを精神的に支えるために、緩和ケアの専門スタッフが、治療開始後から患者さんに寄り添う。
山上センター長は「当センターでは、患者さん目線で、患者さんが本当に幸せになれるかどうかを考えて治療方針を考えます。そして、患者さんと共に、とことん『あきらめない膵がん治療』を実施していきます」。さらに「徳洲会と言えば、がん診療と言われるくらい精進していきたいです」と抱負を語る。