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早期乳がんに低侵襲治療 湘南鎌倉病院 ラジオ波焼灼療法を導入

2024.03.27

早期乳がんに低侵襲治療
湘南鎌倉病院
ラジオ波焼灼療法を導入

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)を導入、1例目を行い奏功した。これはラジオ波電流を用い、がんを熱凝固する新しい治療法で、患者選択に適格基準はあるが、手術と遜色ない治療効果が期待できる。低侵襲で、乳房の形をそのまま残せるのがメリットだ。RFAは昨年12月に保険収載され、実施施設は全国で20施設(3月14日現在)、徳洲会グループでは同院のみ。

実施施設は全国20・徳洲会グループ初

「根治性を維持したまま高い整容性を実現します」と神保部長

早期乳がんに対する手術治療は、乳房をすべて切除する乳房切除術と乳房の形をなるべく温存する乳房部分切除が標準治療であるが、どちらの術式も本来の乳房の形を失うことは避けられない。乳房部分切除は全切除に比べ、乳房をある程度温存しながら腫瘍を切除し、根治性を高めることができるとは言え、とくに乳房下垂の再現は難しく、術後に左右差ができることもあり、全例で患者さんが納得いく結果にするのは困難だ。

早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法の様子

一方、RFAは“切らない乳がん治療”。病変部位に刺したニードル(Cool-tip RFAシステムEシリーズ)からラジオ波電流を発生させ、分子の振動による熱エネルギーで組織をタンパク凝固する。根治性を損なうことなく、整容性も重視した局所治療だ。

RFAは2004年に肝がん治療に初めて保険適⽤され、22年に肺がん、腎がん、悪性⾻軟部腫瘍、類⾻⾻腫(良性)に対して適用が拡⼤。23年7⽉には早期乳がんに対し薬事承認、同年12⽉に保険収載された。

乳腺超音波で病変部位を確認しニードルを刺し込む神保部長(左)

RFAの患者選択には、適格基準がある(表)。加えて、妊娠中もしくは妊娠している可能性がある、心臓ペースメーカまたは植え込み型除細動器を留置している、局所の活動性の炎症や感染を合併している、重篤な心疾患や脳疾患を有している症例なども適応除外となる。

RFA実施施設になるには、日本乳癌学会の施設認定を満たす必要がある。施設基準には、①実施診療科の医師数が常勤医師2人以上、②RFA術者要件を満たした常勤の乳腺外科専門医または乳腺専門医が配置されている、③病理部門が設置され、eラーニング(病理用)を受講した病理専門医が配置されている、④新専門医制度の基幹・連携施設――などがある。

RFA術者要件では、①乳腺外科専門医または乳腺専門医の経験年数が5年以上、②日本乳癌学会が監修するラジオ波焼灼療法 eラーニング(術者用・病理用)を受講している、③当該医療技術の経験症例数が実施者(術者または助手)として 3 例以上――など。

3月14日現在、RFA実施施設には20施設、RFA術者には26人が認定されている。

また、術後のフォロー指針も決まっており、放射線治療後3カ月で画像診断および超音波ガイド下針生検を焼灼腫瘍に施行。さらに吸引式組織生検(VAB)を行い、病理診断で病変残存が確認された症例は外科的切除を行う。術後12カ月以後は、6カ月ごと5年まで定期的に検査を行い観察する。

根治性と整容性を両立

同院のRFA術者は神保健二郎・乳腺外科部長だ。神保部長は前職の国立がん研究センター中央病院で、先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究「早期乳癌へのラジオ波熱焼灼療法の有効性の検証と標準化に向けた多施設共同研究(RAFA-ELO試験)」に参加。同研究の成果を活用し、早期乳がんへ適応追加の薬事承認を得て、保険適用された後は、まず同研究に参加した医師がRFA術者として認定された。

神保部長は「RFAは小さな初期の乳がんが対象になりますが、根治性を維持したまま高い整容性を実現できます。また、低侵襲で出血はなく、術後疼痛もほとんどないため、入院日数が短く、患者さんの社会復帰が早いのもメリットです」とアピール。一方、デメリットにも言及し、「RAFAELOという試験でもまだ術後10年未満ですので、局所再発や合併症などの長期成績が不十分と言えます。また、病変部位を焼灼するため、術後の病理評価ができません。そのため現段階では、患者選択に厳しい適格基準が設けられており、標準治療ではなく、あくまでオプションという扱いになっています」と説明する。

同院では2月8日に早期乳がん患者さんに対するRFAの1例目を実施。整容性の高さから、RFAという選択肢を知った患者さんが希望するケースは多く、地域の医療施設からの紹介も増えている。

神保部長は「現在、湘南地区でRFAを実施するのは当院のみです。乳がん治療の新しい選択肢を提示できるのは、患者さんにとって良いことだと考えます。しかし、重要なのは根治性であり、整容性を優先することはありません。患者さんの希望を聞いたうえで、治療の効果をしっかりと説明し、納得のいく乳がん治療を進めていきたい。今後も地域医療に貢献していきたいと思います」と気を吐く。

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