お知らせ

“アカデミックキャンプ” 臨床研究の流れ学ぶ 徳洲会グループが初めて実施

2024.03.04

“アカデミックキャンプ”
臨床研究の流れ学ぶ
徳洲会グループが初めて実施

徳洲会は2月23日から3日間、愛知県内で「第1回徳洲会アカデミックキャンプ 臨床研究『完全マニュアル』ワークショップin名古屋~研究デザイン・統計解析。そして、論文執筆へ~」を開催した。さまざまな専門領域での患者さんを単位とした臨床研究を科学的に実施し、論文として報告するために最低限必要な基礎知識と技術を習得するのが目的。全国から27人が受講、5グループに分かれ、3日間で仮想臨床研究論文を完成させ、最終日に発表した。

グループ挙げて学術活動支援

「新しいエビデンスを示し医療に貢献してほしい」と大橋・副理事長

徳洲会アカデミックキャンプは、講義やハンズオン(コンピュータを使った実習)、グループワークを組み合わせ、臨床研究を実施するための実践的な知識が身に付くようにプログラムを組んでいる。「臨床研究をして論文を書きたいけど、どうしていいかわからない」、「自己流で臨床研究をやってきたが、正しいのか自信がもてない」、「臨床研究をやりたい部下・若手に教えられるようになりたい」という徳洲会グループの医師が対象。

3日間、講師を務めた森本教授

講師は、さまざまな専門領域の臨床研究を数多く実施してきた森本剛・兵庫医科大学臨床疫学教授。森本教授が講義と実習を一貫して担当することで、オムニバス形式の講演会では得られない生きた実践的な技能を得ることができる。

1日目の冒頭、大橋壯樹・副理事長が挨拶。「学会でさまざまな発表を見ていると、徳洲会病院の先生の演題で取り扱っている症例数は、その数の多さに気付きます。徳洲会が“生命だけは平等だ”の理念の下、臨床に力を入れてきた結果です。しかし、臨床だけではいけません。臨床で得た感性やインスピレーションで、『本当にこの治療は正しいのか』、『もっと良い方法があるのではないか』という疑問をもち、正しい統計解析の下、新しいエビデンスを提示し、医療に貢献できるようになってほしい」とエールを送った。

5グループに分かれて仮想臨床研究論文を完成させ発表

チューターや事務担当者の紹介の後、「臨床研究デザイン」の講義からスタート。科学的な臨床研究を実施するための原理原則や、臨床研究を計画するうえで骨格となる研究デザインについて学んだ。続くグループワークでは、5グループにそれぞれチューターが付き、臨床研究計画書の作成(臨床研究の実施に必要な調査票なども作成)に取りかかった。

グループワークの合間に、ハンズオン「統計ソフトウェアを用いた解析」を実施。期間限定で使用できる統計用ソフトウェアをダウンロードし、データの取り込みやデータの保存、さらに実習用データで各種の統計解析を体験した。また「統計解析の原則・記述統計」の講義では、臨床研究で用いる基本的な統計学の原則について、最小限の数式と実例を使い理解し、さまざまな解析に応用可能なセンスを身に付けた。

5グループが仮想研究発表

全国から27人が参加し統計解析の基礎など学ぶ

2日目はハンズオンで「単変量解析実習」の復習からスタート。次に「生存解析と多変量解析の構造」をテーマにした講義とハンズオンで、臨床研究で頻用される生存解析や多変量解析について、基本的な考え方を理解し、適切に利用できるようにした。グループワークでは、次のステップとして「データ解析実習・図表作成」に移行。実習用データを用いて、研究目的に合致した統計解析を実施し、図表を作成した。続いて、「現実性と科学性のトレードオフ」の講義で、臨床研究を計画、実施する際に遭遇するさまざまな問題について、あらかじめ勘案しておく基本的・応用的事項について理解。その後はグループワークを継続し、仮想臨床研究論文を完成させ、発表準備を進めた。

3日目は、グループごとに臨床研究計画と研究実施後の解析結果を報告。発表した研究テーマはそれぞれ「医師の時間外労働時間による担当患者死亡率」、「3mm以上の冠動脈の急性冠症候群患者において薬剤コーティッドバルーン(DCB)vs薬剤溶出性ステント(DES)の短期予後の検討」、「与論島在住者における、与論島出身者と移住者の心血管イベント発症の違い」、「ぺランパネル(フィコンパ):抗てんかん薬:AMPAR拮抗薬が、内頸動脈狭窄症患者に対して内頸動脈ステント留置術(CAS)/内頸動脈内膜剝離術(CEA)後の過灌流症候群の発症を抑えられるか」、「心房細動合併透析患者におけるワルファリンの脳梗塞予防効果の検討」。

森本教授は各グループの発表をもとに受講者と実践的な議論を行った後、今後の実際の研究実施に向けて、必要な技能や課題をレビューし、3日間の講義を終了した。受講した与論徳洲会病院(鹿児島県)の高杉香志也院長は「つねに、より良い医療を目指すには、臨床研究が必要です。離島では難しいと思われがちですが、徳洲会のビッグデータを使えば、じつはどこでもできます。当院に研修に来る若い先生の教育、あるいは与論から新しいエビデンスを発信するためにも勉強し直したいと思い受講しました。いろいろな世代、分野の先生と交流し新鮮な気持ちで勉強できました。内容は非常に濃密で、これをきっかけに課題を見つけて継続的に勉強していきたい」と意気軒高だ。

ページの先頭へ