宇治病院の手術支援ロボット「ヒューゴ」 前立腺がん手術が好調 徳洲会グループで初めて導入
宇治病院の手術支援ロボット「ヒューゴ」
前立腺がん手術が好調
徳洲会グループで初めて導入
手術アーム独立し症例に柔軟対応
「患者さんのQOL向上にもつながります」と伊藤部長
ヒューゴは内視鏡カメラと、メスや鉗子を装着するロボットアームを備えた「アームカート」、アームを操作する「サージョンコンソール」、手術中の画像を映し出し手術スタッフと共有する「システムタワー」で構成。術者は離れた場所にあるサージョンコンソールで、専用の3Dグラスを装着し、モニターに映し出された立体画像を見ながらアームを操作して手術する。
術者が見ている画像を映し出すシステムタワー。スタッフは同じ画像を見ながら作業
皮膚の切開範囲が小さく出血が少ないなど低侵襲なため、術後の回復が早い。手ぶれを抑える機能を搭載し、より安心で安全な手術をサポートする。
ヒューゴはアームが1本単位で独立している点が特徴。位置が調節しやすいため、症例や患者さんに応じて柔軟に配置できる。また、サージョンコンソールのモニターは座位の視線と同じ高さに設定できるオープンコンソールを採用。アームを操作しながらモニター越しにスタッフの動きが視認できたり、操作画面を術者以外にも複数人で同時に確認できたりするため、手術室スタッフのコミュニケーションもスムーズだ。
ダヴィンチと2台体制で充実
操作する伊藤部長。オープンコンソールは視線を下げない姿勢で操作できる
宇治病院は3月に同機器を導入。伊藤部長らスタッフは、トレーニングを受け8月25日に1例目の手術を行った。患者さんは前立腺がんの70代男性。当日は製造販売元のコヴィディエンジャパンのスタッフが立ち会った。
伊藤部長が同機器を操作し手術は無事に終了。術後も問題なく、患者さんは1週間ほどで退院した。その後、同院は2例の前立腺全摘術を実施。いずれも患者さんの経過は良好だ。「鉗子の位置などを細かく調整でき、とてもスムーズにできました。従来の手術支援ロボットと操作性も近いので、すぐに慣れると思います」と伊藤部長。
とくに、伊藤部長はヒューゴの視認性の良さを高く評価する。「モニター画面が大きく、細い神経もつぶさに確認しながら手術できます。腫瘍の除去に加え、男性機能(勃起機能)の温存や膀胱と尿道を吻合する再建手術など、繊細な作業を必要とする手術がよりスムーズに行えます」。これにより、性機能障害や尿失禁など前立腺全摘術後の合併症リスク軽減や、術後の患者さんのQOL(生活の質)の向上が期待できる。
同院は2011年、内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入。12年以降、前立腺がん、胃がん、喉頭がんなどに保険適用が拡大するなか、主に消化器外科や泌尿器科で手術を実施。地域の医療機関からも対象となる紹介患者さんが増え、ダヴィンチ1台だけでは十分に対応しきれなくなったため、ヒューゴの導入を決定した。現在、ヒューゴでは保険適用となっていない手術はダヴィンチで行うなど、2台を使い分け、充実した診療体制を構築している。
伊藤部長は、「新たな手術支援ロボットの導入で、より安心、安全かつ患者さんの負担軽減につながる手術を行い、地域医療を支えていきます」と意欲を見せる。徳洲会グループでは、23 病院が計24台のダヴィンチ、3病院が国産初の内視鏡手術支援ロボット「hinotori」を1台ずつ導入している。