山内病院が透析の新たな選択肢 電解水透析をグループ初導入 患者さんQOL向上など期待
山内病院が透析の新たな選択肢
電解水透析をグループ初導入
患者さんQOL向上など期待
「患者さんのQOLやWell-beingが大事」と日髙センター長
血液透析は機能が低下した腎臓の代わりに、人工腎臓とも呼ばれるダイアライザーを用いて、血液を浄化する治療。一定量の血液を体外のダイアライザーに送り、老廃物や過剰な水分の除去、電解質の補正を行ったうえで、再び血液を体内に戻す。
血液透析療法は治療法の確立が進み、現代では数十年と長く透析を受ける患者さんは増加している。しかし、週3回程度の通院、1回4時間に及ぶ治療を一生続ける必要がある。食事や服薬にも注意しなければならないなど、患者さんの延命だけでなく、QOLの向上や就業支援が課題となっている。
徳洲会グループ入りを契機に透析室を整備
こうしたなか、1回の血液透析で約120lを使用する「水」と、抗酸化作用や抗炎症作用をもつ「水素」に着目し、水素を含有する水を透析液として利用する新たな透析療法として注目を集めているのが電解水透析だ。
透析治療を行う際、透析液が必要となり、透析液の原液か粉末を透析用水で希釈して生成する。電解水透析は、水を電気分解することによって水素が発生した陰極の水(陽極は酸素)を透析用水として活用する。
松崎医師は「透析患者さんの身体的・心理的負担を少しでも軽減したい」
抗酸化作用など水素の特性を大量に用いる透析の水そのものにもたせることで、患者さんのQOL向上などを図る。
日本発の治療方法として2007年に臨床研究がスタートし、11年から製造・販売。これまでに透析患者さんの重度疲労感のほぼ消失、搔痒感の軽減、透析前後の血圧の変動幅減少による降圧薬の投与量減少、通常透析に比べ総死亡と心脳血管の複合発生リスク軽減といった報告があり、国際学術誌で論文発表されているものも多い。
機械室の多人数用透析用水作製装置。このシステムで電解水を生成し各装置に送り込む
山内病院は電解水透析を4月に開始。グループ初の試みとなった。昨年9月に徳洲会傘下となり、病院の新たな特徴として透析医療を掲げ、施設基準を満たしたり、湘南鎌倉病院でスタッフが研修を受けたりするなど、環境や体制を整えた。
現在、松崎秀男・循環器内科医師(日本透析医学会認定専門医)を中心とし、湘南鎌倉病院の日髙寿美・腎臓病総合医療センター長が非常勤医師として月に1、2回訪れ、同院をサポート。豊富な経験を生かし、透析室スタッフとのカンファレンス、治療や透析室の運用に関するアドバイスなどを行っている。
カンファレンスの様子。透析中の血圧や、ふだんの食事など患者さんの状況を確認
登録患者数は順調に増加し、9月に透析装置を3台増設。日髙センター長は「血液透析の患者さんは寝て治療を受けているだけのように見えますが、体外に血液を送るため、つねに心臓から余分に血液が送られるなど、体の消耗をともないます。また、血液がダイアライザーという異物に接すれば、血小板が活性化するといった反応が起こります。動脈硬化も炎症が関係しています」と、あらためて指摘。
電解水透析に対して「透析液から電解水が体内に届いて活性酸素が除去できれば微細な炎症がなくなるイメージ。患者さんのWell-beingにつながるのではないでしょうか」と期待を寄せる。松崎医師も「透析治療の新たな選択肢になれば」と期待。「少しでも透析患者さんの負担が軽減できるように、今後もスタッフ一同、力を合わせ努力していきます」と意欲的だ。
徳洲会グループでは山内病院に続き、湘南鎌倉病院が6月に電解水透析を開始。