石垣島病院 低侵襲に下肢静脈瘤治療 医療用接着剤を用い血管閉塞
石垣島病院
低侵襲に下肢静脈瘤治療
医療用接着剤を用い血管閉塞
専用機器導入し島唯一の実施施設
「患者さんに新たな治療の選択肢を」と池村院長
下肢静脈瘤は、下肢の静脈内にある弁の機能が低下し、血液が逆流することによって発症する。こぶのようにふくらんだり網目状に浮き上がったりするのが特徴。また、脚のだるさやむくみなどを引き起こし、重症化すると潰瘍ができることもある。
長時間の立ち仕事や肥満、出産、加齢、遺伝などが要因と言われ、女性のほうが発症頻度は高い。40歳以上での発症が多く、年齢が上がるほど増加する。良性の疾患であり生命にかかわらないものの、自然には治癒せず、QOL(生活の質)を損なう。
石垣島病院は新たに「VenaSealクロージャーシステム」という下肢静脈瘤治療用の医療機器を導入。同院はこれまでも下肢静脈瘤に対しては、瘤切除術や高位結紮術、選択的ストリッピング術といった手術に取り組んできた。昨年11月から同機器を用い、血管内治療であるグルー治療を開始した。
グルー治療は、ひざの横から超音波ガイド下にカテーテルを挿入、静脈内に医療用接着剤を注入し圧迫する。接合部位の組織が線維化し、長期間にわたり標的血管の閉塞が期待できる。
医療用接着剤で下肢静脈を閉塞して治療(画像提供:日本メドトロニック)
グルー治療を手がける同院の池村綾院長は「ひざに1カ所、針を刺すあたりに局所麻酔を行うだけでよく、治療にともなう痛みが少ないうえに麻酔も少量ですみます」と患者さんの身体への負担が小さい点をアピール。治療後に弾性ストッキングによる圧迫などを行う必要がなく、行動制限が少ないのも利点だ。続けて「グルー治療は使用する道具がディスポ(使い捨て)でメンテナンスの必要がないことも、マンパワーが少ない離島にとってはメリットと言えます」。
なお、グルー治療やレーザー治療の場合、一定の割合で再発することがあり、再発リスクを低減するため瘤切除術と組み合わせて行うこともある。
「レーザー治療は2011年に保険適用となりましたが、徳洲会グループでは保険適用に先駆けて07年から自由診療として治療を開始しました。私も前任地の中部徳洲会病院(沖縄県)で実施していました。従来にはなかった治療法を患者さんに提供するためです。そして今度はグルー治療に関しても同様に、患者さんにメリットのある治療法として取り入れたいという思いがありました」(池村院長)
グルー治療を行うには、日本静脈学会などで構成する下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会の実施医と実施施設の各認定が必要。22年4月石垣島病院に赴任した池村院長は認定医・指導医の資格をもっていたが、同院が実施施設の認定を有していなかったことから、必要な手続きなど準備を進め、施設認定を取得、条件が整い開始した。
「日常生活に支障を感じることがあれば、受診をおすすめします。診療では、それぞれの治療法にメリット・デメリットがありますので、患者さんによく説明し、理解いただいたうえで選択していただくよう心がけています。グルー治療という選択肢があることを知っていただくため、医療講演にも力を入れていきたい」(池村院長)
今後の取り組みとして、同院は慢性腎不全の発症予防のための啓発活動も行っていきたい考えだ。石垣島では同院を含め3医療機関が人工透析に取り組んでいるが、透析医療が著しく逼迫しており、危機的な状況が続いているためだ。そのため他の医療機関や行政とも連携し、継続的な啓発活動を推進していく意向。また来年2月には日本医療機能評価機構の病院機能評価を受審予定で、島内の医療水準向上への一層の貢献を目指す。