宇治病院 生体豚を用いトレーニング 胸腹部の貫通性外傷に対応
宇治病院
生体豚を用いトレーニング
胸腹部の貫通性外傷に対応
畑センター長(前列中央)がコーディネーターを担当
宇治病院は2020年6月に畑センター長が入職し、救急外傷外科を開設。地域での救急外傷患者さんを積極的に受け入れるなど、マネジメントに努めてきた。しかし、胸腹部の貫通性外傷は対応機会が少ないのが現状。畑センター長は今後、オリンピックや万博(25年に大阪府で開催予定)など国際的なイベント開催により、テロのリスクが高まる危険性もあり、万全を期して準備しておくことが必要と考えた。
畑センター長は「胸腹部の貫通性外傷はトレーニングする機会が少なく、初めて診るのが臨床現場というケースも多くあります。とくに当院の救命救急センターには若手医師が多いため、トレーニングの機会を設けるべきだと考えました」と明かす。
今回の外傷マネジメントトレーニングコースは、米国で開発された外傷外科トレーニングコースであるATOM(Advanced Trauma Operative Management)のインストラクター資格をもつ畑センター長が、コーディネーターを担当。同様のコースを外部で受講すると高額な受講費用がかかるが、若手教育に熱心な末吉敦院長の配慮により、自前での開催が可能となり、研修費用も抑えることができた。
同コースでは5つのシナリオをもとに、12の臓器の損傷に対するマネジメントを学んだ。参加者を2チームに分け、そのなかでシナリオごとに執刀医、第二助手、器械出し(看護師)を決め、日並部長と橋本副部長がそれぞれのチームで第一助手を担当。残りの参加者は第三者的にトレーニングの様子を見学し、シナリオ終了後に振り返りを行った。
受講した竹内豪・外科医師(6年目)は「実臨床では、外傷患者さんを手術する機会はそれほどなく、いざ手術が必要な外傷患者さんに対応する際には、経験不足もあり、なかなか自信がもてませんでした」と吐露。同コースを受講した後は、「実臨床に沿った臨場感のある内容で、今後の外傷患者さんへの対応に生かせる貴重な経験になりました。外傷診療は生死にかかわるもので、緊張感がありますが、今回のようなトレーニングを経験することで、救命への自信につながります」と手ごたえを感じている。
畑センター長は「第三者的にトレーニングを見学する立場の人をつくったのは良かったです。自分が執刀医だとあわててしまいますが、冷静に見守りながら、自分ならどうするか、どのような知識・技術が必要かを考える時間ができたのは勉強になったようです」と強調。さらに「今後は、今回の受講者が講師として指導する立場になれば、より理解が深まると思います」と期待を寄せる。
同院では、ハイブリッドERシステム(HERS)を運営。これはCT(コンピュータ断層撮影装置)とCアームの血管造影装置を配備し、外来初期診療やCT検査、TAE(動脈塞栓術)、緊急手術がひとつの寝台で行えるER(救急救命室)だ。運営には多職種連携が不可欠であり、リーダーとして医師の役割が重要となる。
畑センター長は「当院には外傷マネジメントに必要な環境は整っています。現在はリーダーの育成に注力しており、今回のようなコースで学ぶことで、より自信をもてるようになると考えます」とアピール。今後も同コースの開催は継続する意向で、「グループ病院とコースを開催するためのノウハウを共有し、共同開催するのも良いと思います」と抱負を語る。