TMAT トルコ南東部地震被災地で医療支援に尽力 救急・外科処置・訪問診療と多岐にわたり活動
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トルコ南東部地震被災地で医療支援に尽力
救急・外科処置・訪問診療と多岐にわたり活動
トルコ南東部地震は2月6日午前4時頃(現地時間、以下同)に発生、TMATは翌7日に先遣隊の派遣を決定した。メンバーは坂元孝光・福岡徳洲会病院総合診療科部長、西村浩一・松原徳洲会病院(大阪府)看護主任、上田由美子・静岡徳洲会病院健康管理センター係長の3人。8日昼過ぎから現地で調査活動などを行い、医療ニーズがあることや、WHO(世界保健機関)のEMTCC(緊急医療チーム調整本部)から被災地での医療活動の許可が得られたことなどを受け、TMATは10日に医療支援チーム本隊の派遣を決めた。本隊は第1陣、その後、第2陣の合計19人が現地入り(表)。
右腕を切断した4歳女児は診療が終わり笑顔。父親も地震で腕を切断し通院している
第1陣が現地に到着したのは12日昼過ぎ。機能不全に陥ったバーチェ・リハビリ病院敷地内の仮設診療所テントで診療を本格的に開始すると、ふたりだけで24時間診療していたトルコ国立医療レスキューチーム(UMKE)の医師が「昼夜問わず200人を超える患者さんの対応をしている」と説明、TMAT隊員に謝意を示すとともに喜びをあらわにした。TMATは3つの診療テントのうち、ふたつのテントに分かれ救急と創傷治療など外科処置を担当。当初はUMKEスタッフと一緒に活動していたが、次第に信頼関係が醸成、ふたつとも任されるようになった。
外科では地震によるけがや、避難先のテントが狭く熱い飲み物をこぼしてやけどをした患者さんらに対応。1日に40人近くの患者さんを診療する日もあった。なかには、地震で骨折してから1週間以上が経過し、「痛みで歩けず、やっと今になって来ることができました」と涙を浮かべる患者さんもいた。
訪問診療の依頼があった患者さんを診療テントに搬送
また、毎日通院が必要な患者さんにも対応。地震で右腕を切断、左腕にも大きなけがを負った4歳女児は、ガーゼを交換するために訪れるものの、テントの中に入るのを拒み、大声で泣きじゃくることがあった。連日対応した坂口薬剤師は「消毒の痛みに耐える彼女の姿を見ると、地震の悲惨さを思い知ります。それでも拘縮していた左手の指が動くようになり、少しほっとしました」と胸の内を吐露。
毎日通う患者さんのなかには、顔見知りになった隊員に笑顔で話しかけるなど、心の交流が芽生える様子もうかがえた。
訪問診療も積極的に行った。めまいや発熱があるものの、自力歩行ができない患者さんからの依頼を受け、急遽、町田医師と上國料・看護副主任が自宅を訪問。その場では処置が難しいと判断し、診療テントに搬送した。テント内でエコー検査や心電図測定などを実施した後、救急車で遠方の病院に搬送した。「訪問時に病院での受診を勧めましたが、拒否されたため、いったん私たちの診療テントに搬送しました。検査の結果、やはり入院が妥当だったため、ご家族に説明し、患者さん本人も納得されたので病院に救急搬送しました」と町田医師。家族からは「日本から来て、さらに自宅まで足を運んでいただいて本当に感謝しています。今後も困っている方のために、ご助力をお願いします」と期待を寄せられた。
第1陣&第2陣メンバー。(前列左から)合田医師、村上看護師、坂口薬剤師、當麻部長、通訳のセマ・アクチャさん、伊豫田看護師、上國料・看護副主任、(中列左から)西沢課長、鈴木センター長、村田部長、浅野・看護主任、油江看護師、土山・看護副主任、柳川薬剤師、通訳のアリ・アクチャさん、(後列左から)佐藤・看護師長、久保山看護師、通訳のテラダ・アキラさん、佐野看護師、町田医師、篠原・副薬局長、阪木・事務局員
ひと足早く撤収するUMKEの医師らとフラッグを交換
診療テントでの診療の傍ら、避難所への訪問診療も積極的に行った。活動拠点近くにあるサッカー場には約300人が避難所テントに避難しており、声かけや血圧測定など健康チェックを実施した。
ある日、「胃瘻を造設している寝たきりの人がいるので、病院に入院させたい」と避難住民から相談が寄せられ、バーチェ・リハビリ病院の院長に状況を説明し、調整する場面も見られた。こうした訪問診療について佐藤・看護師長は「地震で車が壊れ、遠方の病院に行けない方もいます。訪問する意味は十分にあります」と強調する。
診療テントでの対応は22日で終了。その後、TMATは一部機能が復旧したバーチェ・リハビリ病院1階の一角にある診療室に活動拠点を移した。UMKE撤収後、同院スタッフが本格的に診療に参加できるようになるまでの間、一時的にTMATも内科・外科問わず診療、対応患者数が増加した。
震災後、睡眠時無呼吸症候群の治療が継続できず息苦しさを訴える女性
活動拠点周辺では倒壊している建物も
23日以降は引き続き外科領域を中心に対応しているが、時間の経過とともに、外科を必要とする患者さんが減少してきた。その一方で、呼吸器疾患や発熱など内科的疾患のほうが増え、同院や地元の医療機関で対応が可能になるなど、医療機能が復旧し始めたことから、TMATは現地での活動を27日をもって終了することを決定した。
トルコ南東部地震被災者支援 クラウドファンディング実施中
NPO法人TMATはトルコ南東部地震の被災者への緊急医療支援を行っており、これまでに先遣隊3人、医療支援チーム19人を派遣しました。
現在、活動に必要な医療物資などの購入費用、隊員を派遣するための渡航費用と現地滞在費用、被災地への物資支援などに対する寄付金を募集しています。ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
3月6日発行号から連載スタート
小紙『徳洲新聞』ではトルコ南東部地震被災地でのTMATの活動を、よりきめ細かく報じるため、3月6日発行号から隊員へのインタビュー記事を連載します。