お知らせ

1月度 徳洲会グループ 医療経営戦略セミ

2023.02.08

1月度 徳洲会グループ 医療経営戦略セミ

谷口・湘南鎌倉病院センター長 臨床現場から世界に貢献 自ら研究し解決する姿勢が重要

「若手医師を積極的に国際学会へ」と谷口センター長

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)免疫・アレルギーセンターの谷口正実センター長は「臨床現場から世界の医療に貢献する-アレルギー臨床研究を例に」をテーマに講演した。谷口センター長の前任地である国立病院機構相模原病院は日本の“アレルギー中心拠点病院”として指定。自身は成人アレルギー部門と臨床研究センターの代表として、成人の重症アレルギーや喘息、血管炎などに関し、臨床に加えて診断・治療法の確立に長年取り組んできた。

「患者さんにとっての“最善の医療”は、ガイドラインやエビデンス(科学的根拠)に基づく医療はもちろん、患者さんの状態に応じた世界最高レベルの医療を提供すること」と定義。「そのためには未解決の臨床領域を自ら解決する姿勢が重要」と指摘した。続いて、臨床で感じた疑問を出発点として自ら取り組んできた数々の研究成果を紹介。まず、以前は発症機序が不明で有効な治療法もなかったアスピリン喘息を例に挙げ、発症機序を解明し、オマリズマブ(抗IgE中和抗体)を用いた治療の有効性に関する研究成果を提示した。

さらに指定難病の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)に対しては大量γグロブリン療法の有効性を検証、同薬剤の保険適用につながった。EGPAに対するメポリズマブの有効性を検討する国際臨床試験にも参加し、これも保険適用に結び付いた。「早くから世界基準を知り、世界レベルの臨床や研究を実践することが大切。そのためにも若手医師を積極的に国際学会に参加させることが重要です。私自身も20代から参加し影響を受けてきました」と強調。特許取得のための知財部門設立の重要性や、臨床研究を積極的に実施することで熱意ある若手医師を引き付けられることなども訴えた。

澤木・湘南鎌倉病院部長 GIST治療で診療支援 経験値上がりにくい希少疾患

「GIST治療で、お困りのことがあれば、ぜひ相談を」と澤木部長

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)腫瘍内科の澤木明部長は「GISTとその診療支援の試み」をテーマに講演した。GIST(消化管間質腫瘍)はまれな疾患で、発症頻度は10万人当たり年間1~2人とされる。

まず澤木部長はGISTに対し用いられている分子標的治療薬であるイマチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)に言及。イマチニブはもともと、慢性骨髄性白血病の治療薬として開発された薬剤だが、その後の研究で、KITと呼ばれる遺伝子の働きを阻害する効果があることがわかった。そして、このKIT遺伝子は、GISTの発生(腫瘍化)にも大きくかかわっていることが明らかになり、20年ほど前にフィンランドのヘルシンキ大学が行った臨床研究によって、GISTに対するイマチニブの有効性が示された。

澤木部長は自身が経験したイマチニブ投与によって著明な治療効果を得た十二指腸GISTの症例を紹介。さらにイマチニブ抵抗性のGISTに対しても治療効果が期待できるスニチニブという分子標的治療薬を用いた症例も解説した。標準治療の手立てがすべてなくなった紹介患者さんで、前医の治療経過での「スニチニブによって、わずかに腫瘍が縮小した」というエピソードをふまえ、患者さんの状態に合わせて投与スケジュールを変更しスニチニブを再投与した結果、腫瘍縮小効果を得た。澤木部長は『GIST診療ガイドライン』の改訂ワーキンググループの一員で、スニチニブ再投与のスケジュール変更はガイドラインにも取り入れられている治療法だ。

最後に澤木部長は「GISTは希少疾患であり薬物治療の経験値が上がりにくいということが言えます。グループ病院でGIST治療中の患者さんに関し、ご相談いただければオンラインや対面で診療支援を行い、お役に立てればと考えています」と呼びかけた。

時間・場所問わない研修 徳洲会の可能性を広げる 八重樫・千葉西病院部長

「教育で医療の標準化目指します」と八重樫部長

千葉西総合病院の八重樫牧人・内科部長は「徳洲会グループの教育資源と可能性について」をテーマに講演した。現在、八重樫部長は週の前半は同院で診療や院内レクチャーなどを行い、週の後半は全国の徳洲会病院で教育研修を行っている。「当院の講義はすべてデータ化し、職員全員が見ることができます」と、時間・場所・対象者を問わない研修をアピール。   

昨年12月に一般社団法人徳洲会(社徳)研修委員会が運用を開始した研修医向け学術フォーラムSummit(動画視聴システム)でも八重樫部長の講義動画などを公開していることに触れ、各病院での活用も促した。「医師により指示などが異なると、連携する他の職種も大変になります。医療を標準化しスムーズな多職種連携につなげていくことが、教育研修の目的です」。

また、「総合的な医療」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の観点から今後の徳洲会グループの可能性に対する提案も行った。「総合診療専門研修プログラムに参加する病院が増えると、医師も患者さんも集まることにつながります。加えて、他科の先生に気軽に相談できる環境を整えれば、専門医がいない病院でも多様な疾患を診られるようになります」と、総合診療の重要性を伝えた。

さらにテクノロジーを活用することは、働きやすい病院としてのアピール材料になると強調した。なお、Summitはhttps://summit-resident.tokushukai.or.jpから閲覧可能。徳洲会グループの職員で閲覧を希望する場合は、社徳医師人事室の常田ひろみ係長(徳洲会グループ研修委員会事務局担当)まで(Eメール:tokukenshu@tokushukai.jp)。

国の方向性など確認 在宅医療に力入れる 末吉・宇治病院院長&梶原・近江草津病院院長

「徳洲会グループ全体で在宅医療に力を入れましょう」と末吉院長 「機能強化型在宅療養支援病院の取得を」と梶原院長

宇治徳洲会病院(京都府)の末吉敦院長と近江草津徳洲会病院(滋賀県)の梶原正章院長は「在宅療養支援病院」をテーマに講演した。

末吉院長は「国は在宅医療に力を入れるよう、メッセージを出しています。加えて、看取り難民が増えるとも予測されており、在宅もしくは介護施設で看取りをするように進めています」と概説。徳洲会グループでも在宅療養支援病院は全体的に業績が良いことに触れ、「うまく国の要望をキャッチアップすることで、経営面にもメリットが生じます」と強調した。地域包括支援センター運営への参画や、医師による遠隔での死亡診断をサポートする看護師を対象とした研修会に参加し、在宅看取りも行うなど、在宅医療へのかかわりを徳洲会グループ全体で強化していくよう呼びかけた。

梶原院長は「病院として地域との連携強化を図り、集患につながる強みや機能の拡大を目指したいという思いから、機能強化型在宅療養支援病院(単独型)の届け出を2022年に行いました」と説明。届け出をするうえでは、在宅医療を担当する常勤医師を3人確保することが課題になると指摘した。また、高齢化がピークとなる40年頃までは在宅医療の需要が増えていくと思われ、「199床以下の病院では機能強化型在宅療養支援病院(連携型)の取得を目指すことをひとつの選択肢として考慮されてはどうか」と投げかけた。

組織・職員の質向上目指し 機能評価認定・資格取得を 宗像・湘南藤沢病院顧問

「資格取得で良質な医療提供を」と宗像顧問

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の宗像博美顧問は「病院機能評価認定取得推進および全職種の資格取得推進についての提言」と題し講演した。病院機能評価とは、病院が組織的に医療を提供するための基本的活動が適切に実施されているかを評価する仕組み。徳洲会グループで未取得の病院に対し取得を呼びかけるとともに、初の受審を控える病院が気軽に相談できる窓口をグループ内に設置することを提言した。

「病院機能評価を取得することで、徳洲会グループが組織的に良質な医療の提供に取り組んでいることの客観的な評価となるほか、グループ外の病院に対しても良い刺激を与えられます。職員一人ひとりも機能評価の基準に沿った質の良い医療を提供するようになり、人材確保の側面からも良いアピール材料になります」と説く。

また、全職種に対する資格取得支援委員会の設置も提言。「将来を託せる職員を育成し、安定した経営基盤を築くためには、自分自身を磨ける教育環境が必要です。職員満足度向上が経営の向上につながります」と説明した。

そのうえで、加算取得に必要な資格を各病院で精査し、具体的な育成計画を作成していくなど方法を例示。規模や立地条件から比較的資格取得をさせやすい病院で必要最少人数以上の職員の資格取得を進め、一定数以上取得後は、それらの病院から取得が難しい病院に出張を行うことから始めるといった案も示した。「資格取得を進めると、患者さんの予後の改善や無駄な医療費の節約など、経営状態の改善につながります」と意義を強調した。

自分が入院したくなる病院 2月1日に新病院オープン 馬場・横浜日野病院院長

「入院はいつでもお待ちしています」と馬場院長

横浜日野病院の馬場淳臣院長は新病院の竣工を報告した。まず「目指したのは、自分が入院したくなる病院です」とアピール。「当院は精神科病院ですので、会場の皆さんは自分が入院する機会はないと考えていると思いますが、恐らく、この会場の多くの人が認知症になると思います」と笑いを誘った。

開設当初の院内の様子と新病院の写真を比較し、改善した療養環境面を強調。個室が増えるなどハード面が大きく変わったほか、住宅街にあるため、住宅側の壁面は開口部の向きや大きさなどを工夫し、互いの視線や生活音を気にせず過ごせるように工夫した。病棟機能では2階に認知症治療病棟を開設し、新たに設置した生活機能訓練室などを用いて認知症治療に注力。また、11月には3階に精神科急性期治療病棟(40床)もオープン予定だ。

同院は1月21日に竣工式を開催し、2月1日にオープン。最後に再び「入院はいつでもお待ちしています」(馬場院長)と笑顔で締めくくった。

ページの先頭へ