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吸収性局所止血材「ピュアスタット」 新たな止血材用い内視鏡治療 東京西病院

2022.09.22

吸収性局所止血材「ピュアスタット」
新たな止血材用い内視鏡治療 東京西病院

東京西徳洲会病院は漏出性(にじみ出ること)の消化管出血に対し吸収性局所止血材「ピュアスタット」を用いた内視鏡治療を実施している。「ピュアスタット」は、昨年12月に保険収載された新たな医療用品で、出血している血管の粘膜に塗布することで止血効果が期待できる。同院は昨年12月から使用し、連携している武蔵野徳洲会病院(東京都)と同止血材に関する共同研究も実施。東京西病院の山本龍一・肝胆膵内科部長(消化器病センター長、内視鏡センター長)は「これまで100例以上に使用し、止血効果の持続性を感じています。欧米では創傷治癒効果も指摘され、可能性を感じています」と期待を寄せる。

より良い医療を追求する消化器病センター 山本部長(右)と吉本部長

「ピュアスタット」は消化器内視鏡治療で使用する止血材。一般的に、胃潰瘍やESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)など出血をともなう治療では、止血鉗子による焼灼、クリップやバルーンによる圧迫などで止血するが、同製品を用いることで焼灼回数の低減などが期待できる。

同製品による止血のメカニズムは、米国で発明された“自己組織化ペプチド技術”をベースとしている。自己組織化ペプチドはアルギニン、アラニン、アスパラギン酸の繰り返し構造をベースとするアミノ酸で、酸性溶液の中では液体だが、中性もしくは塩基性の溶液中ではゲル化(自己組織化)する。ピュアスタットは、この特性を生かしている。透明なペプチド水溶液を出血部位中心の粘膜に塗布すると、体液と接して粘性のあるペプチドハイドロゲルとなって覆う。血管浅部が閉塞され、血液(血球)と混合ゲル化し、血液凝固による止血が期待できるという仕組みだ。

実際に治療する際は、最初に専用カテーテル内をピュアスタットで先端まで満たし、そのうえで専用カテーテルを鉗子孔に挿入する。出血をできるだけ除去し、出血部位を確認したうえで直接、塗布する。止血するまで数回、塗布。止血が確認できれば、余剰部分のゲルを洗浄除去する。再出血した場合は一連の処置を繰り返す。

ピュアスタットは生体内に存在するアミノ酸で構成、やがて体内で分解代謝される。とくに漏出性出血に対して高い効果を得る可能性があり、動脈から勢いよく吹き出すような噴出性出血には適さない。

他にも、①プレフィルドシリンジ(あらかじめ注射筒に所定の投与量の薬剤が充塡されている注射剤)であるため使用前に調製の必要がない、②止血だけでなく、出血部位が不明瞭でも出血点を確定するのに寄与する、③澄明なペプチド溶液のため、適用部位の視野を妨げない、④適用周辺部位からの出血も抑える可能性がある、⑤適用部から容易に取り除けるため、繰り返しの適用、術後洗浄、他の止血法への移行が容易――といった特徴もある。

ただし、ペプチド製剤やタンパク質製剤に対し免疫・アレルギー反応の既往歴がある患者さん、血管内の治療への使用は禁止されている。

東京西病院は同製品が保険収載された昨年12月に使用を開始。胃潰瘍や出血性十二指腸潰瘍、放射線直腸炎による静脈性出血、EST(内視鏡的乳頭切開術)後の出血、ESDの潰瘍処置などに用い、すでに使用した症例は100例以上に及ぶ。

そのほとんどを手がけている山本部長は「欧米ではすでに使われていて、日本でも使用できるようになりました。これまでの経験から止血効果が持続すると感じています」と手応えを示唆。「止血効果が低いと最悪、輸血などが必要になるので、そうしたリスクを低減すると思います」と期待を寄せる。

同製品の効果を検証するための臨床研究も実施。同製品を使用している武蔵野病院の吉本泰治・消化器内科部長と共同で行っている。「当院で治療を行っていただくなど、日頃から吉本先生と連携しています。ともにピュアスタットを使用しているので一緒にデータを取得しつつ、両施設が治療を重ねていければ」と山本部長。

「欧米では止血のみならず、創傷治癒効果も指摘されており、製品の可能性を感じています。他の徳洲会グループ病院でも使用していると聞いているので、ぜひ情報交換などを図り、患者さんのために少しでも良い医療を提供していきたい」と意気込んでいる。

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