湘南鎌倉病院 ICUに特化した情報管理システム 「TIMES-DX」グループ初導入
湘南鎌倉病院
ICUに特化した情報管理システム
「TIMES-DX」グループ初導入
患者安全向上・業務効率化を期待
「TIMES-DX」は“DX(デジタルトランスフォーメーション)時代のTokushukai ICU Management Enhancement System” の略。湘南鎌倉病院の神尾直・集中治療部部長が2018年に入職し、以後、TISと協議しながら開発した。
TISと共同開発
将来はAI(人工知能)の活用なども視野に入れる神尾部長 新システムを導入したICU。ベッドサイドディスプレイには検査結果やバイタルトレンドが大きく表示
その理由について神尾部長は「重症患者さんを診るICUは医療機器が多く、管理すべき情報が多いのですが、重症患者さんの状態把握に必要な情報が電子カルテ内に散在し、情報収集に一定の時間を要していました。すでにICUの部門システムは販売されていますが、独立型であることが多いため、ICU専従でなければスタッフは、ふたつのシステムで作業しなければなりません。そこでTISがシステムを一元管理している徳洲会の強みを生かし、新たなICU特化型のシステムを開発すれば、グループ全体のメリットが大きいと思いました」。
4月に新たに救命救急センターがオープンしたことから、まず同センターのICUに新システムを導入、開発を進め7月から本格稼働している。
ICUの各システムは電子カルテと連動し、検査結果やバイタルサイン(生命兆候)など医師や看護師に必要な情報が、リアルタイムに時系列でわかりやすく表示。電子カルテと異なりIDやパスワード入力が不要で、瞬時に情報を把握できる仕様になっている。モニターはタッチパネル式で操作も簡便だ。
また、天井には安全面に配慮し、ルームカメラを設置。こうしたさまざまな情報をスタッフステーションで確認することができ、患者さんの状況を絶えずモニタリングできる。カメラには録画機能も搭載し、端末の画面上で動画を巻き戻すこともできるため、ケアなどを振り返り、教育につなげることも可能だ。
カンファレンス用のモニター(42型)も配備し、多職種で話し合うために必要な画面やICUの稼働状況などを自動で表示。JIPAD(日本集中治療医学会が運営する診療データベース)に対応できるシステムも整備した。
タッチパネルを操作し確認する神尾部長 スタッフステーション。天吊りのモニターなどで患者さんの状況をひと目で把握 モニター右下の「ルート情報」では点滴針など患者さんの体内に挿入されている器具情報をわかりやすく表示
これらの機能により、情報共有が図りやすくなるとともに、情報収集に費やす時間が短縮、職員の負担軽減も実現した。同センターの川﨑維月看護師は「重要なデータを医師にすぐに見せられるので、回診が一層スムーズになったと思います」と話す。
脇坂愛子・看護主任も「ひと目で必要な情報がわかりますし、たとえば点滴針の交換時期や1日の水分摂取量・水分喪失量など、今まで電子カルテから情報を入手して計算、入力していたデータが、自動で計算・表示されるので、業務も効率化し、とても助かっています」と強調する。
絶えず改善を図り、今後は栄養管理に関する画面などの追加、タブレット端末の導入などを予定。ベッドサイドモニターにカメラを装着し、WEBで患者さんがリハビリテーションを行っている様子を家族が見たり、面会したりすることも検討しているという。「ご家族や患者さんが、より励みになることも取り入れていきたいと考えています」と神尾部長。
「重症患者さんには、目に見えるバイタルサインではなく、その前の段階で気付くことが大事。それを促すシステムが現代の医療には少ない。10年後、20年後は今よりもっと情報で判断していく時代になるでしょう」と指摘し、「このシステムはアジャイル開発(短期間で反復しながら効率的に開発を進める)。データベースの構築を含め、多様なニーズに合わせて改善するので終わりはありません」と意欲は尽きない。