湘南鎌倉病院消化器病センター 小泉・主任部長&市田医長の論文 『Endoscopy』に2本同時掲載
湘南鎌倉病院消化器病センター
小泉・主任部長&市田医長の論文
『Endoscopy』に2本同時掲載
小泉・主任部長(右)と市田医長の論文が『Endoscopy』に同時掲載
小泉・主任部長は「膵全摘Roux-en-Y再建胆管空腸吻合術時の副肝管完全離断例における直視型超音波内視鏡を用いた胆管空腸吻合術」がテーマ。膵胆道疾患の手術時には胆管損傷は避けられない合併症。胆管が完全離断した際には、再手術や磁石圧迫吻合術などにより修復するが、患者さんの身体的負担は大きい。論文では、直視型超音波内視鏡を用いて実施した胆管空腸吻合術について報告した。
一般的な斜視型の超音波内視鏡では再建腸管例におけるスコープ挿入は難しいとされるが、直視型であれば胆管への到達が状況により可能となる。これを用い、最も挿入が困難とされるRoux-en-Y再建例で、超音波内視鏡下に離断胆管空腸吻合術を行い、再手術を回避した。
小泉センター長は「論文では直視型超音波内視鏡を活用するための工夫を詳述しています。再手術をすれば治療期間が長くなりますが、今回の方法では4日で退院することができました。このような方法があることを知らない先生は多いと思います。権威ある論文に掲載されたことで、知る人が増え、治療を低侵襲に受けられる患者さんが増えることを期待します」と強調した。
市田医長は「内視鏡的粘膜下層剝離術のテクニックを用いた食道ステントの切断と除去」がテーマ。胃がんの手術後、食道と小腸をつなげる際に吻合不全を起こした症例に対し、日本では保険適用外だが、院内の倫理委員会をとおし、食道ステント(網目状の金属が付いた人工血管)を用いて治療。しかし、傷がふさがった後、ステントを抜去しようとしたところ、長期間の留置により組織に埋まった状態になった。
これに対し、一般的には外科的手術やアルゴンプラズマ凝固法を用いて治療する方法が考えられるが、論文では内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)のテクニックを用いてステントを抜去する方法を解説。
市田医長は「ふだんからESDを実施しているからこそ思いついた方法です。患者さんの身体的負担を大幅に軽減できました。食道ステントは悪性腫瘍にのみ保険適用されていますが、今回報告したリカバリー方法があることが知れ渡れば、良性疾患への適用にもつながると思います。そのためには症例を積み重ねなければなりません」と課題提示。さらに「現在、大学院で臨床疫学を学んでいます。内視鏡分野の新たなエビデンスを提示できるよう、良い研究をしていきたい」と意欲的だ。