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札幌東病院 「日本DMAT」が発足 徳洲会グループで12施設目

2022.09.07

札幌東病院
「日本DMAT」が発足
徳洲会グループで12施設目

札幌東徳洲会病院は道からDMAT(災害派遣医療チーム)指定医療機関の指定を受けるとともに、院内に日本DMATが発足した。同指定医療機関は災害医療活動の中心的な役割を務め、地域災害拠点病院に準ずる施設。災害時の傷病者の受け入れや搬送、災害医療チームの派遣、地域の災害対策本部機能などを担う。日本DMAT保有は徳洲会グループで12施設目。7月20日には、道内の地域災害拠点病院に所属するDMATとともに、衛星電話を使った通信訓練を実施。8月には院内に北海道DMATが再発足した。

(左から)井沼主任、宍戸看護師、合田医師、山城主任、福永看護師 道内25施設のDMATが参加した衛星電話を使った通信訓練

DMATとは医師、看護師、業務調整員で構成、災害急性期に活動できる機動性をもち、専門的なトレーニングを受けた医療チーム。これまで札幌東病院は、活動が道内に限定される北海道DMATを有していたが、同チーム隊員が日本DMAT隊員養成研修を受講し、同指定医療機関の指定を受けたことで、同チームが日本DMATに切り替わった。日本DMATは厚生労働省が管轄で、活動範囲が日本全国に及ぶ。

同院が日本DMAT発足を目指したのは、「北海道胆振東部地震(2018年9月)がひとつのきっかけでした」と隊員の合田祥悟・救急集中治療センター医師。同地震の際、病院の被災状況をEMIS(広域災害救急医療情報システム)に入力し、重症患者さんの搬送を依頼したところ、DMATに助けてもらったことがあり、「次の段階として、当院でもDMATを保有し、地域貢献を目指したいと考えました」と振り返る。

札幌市で日本DMATを保有している病院は、同院を含め6施設、同院以外はすべて三次救急医療機関だ。同院は札幌丘珠空港に近く、広域搬送拠点臨時医療施設(SCU)としての役割も期待される。これは、地震や津波などの大規模災害が発生した時、傷病者を被災地外の災害拠点病院などに広域医療搬送するための拠点となる医療施設。トリアージ(緊急度・重症度分類)や初期治療など応急救護所としての役割も求められる。

同院の日本DMAT隊員は合田医師に加え、井沼浩政・救急救命士主任、山城祐亮・看護主任、宍戸宏樹看護師、福永よしえ看護師の5人。救急救命士がチームに入るのは例が少ない。井沼主任は「救急救命士は病院前救護のプロフェッショナルです。災害現場という病院外での活動では、救急救命士のスキルが役に立つと思います。また、消防の知識も有しているので、業務調整員として医療機関や消防署、避難所のなかで、潤滑油的な役割も担えると考えます」とアピールする。

看護師の3人は災害看護への興味をもちながら、いまだ被災地支援の現場には立っておらず、「困っている人を支えたい」という思いで日本DMAT隊員に志願した。

山城主任は「院内にDMATがあることを周知していくと同時に、災害看護を目指す看護師にとって自分がモデルケースになれるように精進していきます」、宍戸看護師は「人の役に立ちたいという思いで看護師になりました。院内だけでなく、困っている人は外にもいるので、自分のできることをしていきたい」、福永看護師は「日本看護協会の災害支援ナースに登録していますが、まだ活動はできていません。被災地支援はもちろん、院内の災害時への備えも見直していきたいです」と意気込みを見せている。

道内 施設のDMATが 衛星電話で通信訓練行う

同院の日本DMAT隊員は全員、NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)の国内災害医療支援トレーニングコースを受講している。TMATは徳洲会グループの職員を中心に構成、国内外の被災地で医療支援活動などを行う組織。国内の多くの被災地でDMATと活動した経験がある。

TMATは最近では19年の台風19号災害、20年の九州南部豪雨災害への医療支援活動、海外では18年のインドネシア・スラウェシ島地震被害、ロヒンギャ難民への医療支援活動、22年のモルドバ国内のウクライナ避難民への継続的支援活動などがある。

合田医師は「DMATだからできること、TMATだからできること、それぞれの役割や特性を考えて活動していくことで、被災地で一層役に立てると思います。両者をつなぐ橋渡し的な役割も担っていければと考えます」と抱負を語る。また合田医師はTMATが20年に創設した新しい研修コースである「病院防災コース」の立ち上げにも尽力。同コースは災害発生時の病院の対応を総合的に学べる研修だ。

同院は7月20日に、道内の地域災害拠点病院に所属するDMATとともに、衛星電話を用いた通信訓練を実施。事前に参加した25施設を4グループに分け連絡網を配布、災害が発生したと想定するなか、まずEMISにチーム登録を行い、連絡する相手チームの連絡先をEMIS上で確認したうえで待機。続いて、グループ内の前のチームから衛星電話で連絡を受けた後、自院の災害対策本部の設置状況を次のチームに伝達。同院はグループのしんがりを務めたため、最後にグループリーダーに連絡し、訓練終了となった。

今後は定期的な訓練や院内への周知活動を行うとともに、災害マニュアルの見直しや院内外で災害訓練を企画する予定。また、8月には院内に北海道DMATが再発足し、さらに体制が盤石なものとなった。合田医師は「チームの結束を高めるためにユニフォームを用意しました。夏用、冬用とありますが、動きやすさと寒さ対策を考慮して採用しました。北海道の冬は寒さが厳しいので、被災地で体調を崩さないようにしなければなりません。今後、院内外での活動で着用し、当院のDMATをアピールしていきたいです」と意気盛んだ。

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