手術支援ロボット ダヴィンチで高精度の低侵襲手術 八尾病院 専用オペ室つくらず手術件数維持
手術支援ロボット
ダヴィンチで高精度の低侵襲手術
八尾病院 専用オペ室つくらず手術件数維持
泌尿器科と呼吸器外科で活用
「前立腺がんの治療を当院で完遂できます」と金丸部長
ダヴィンチは内視鏡(腹腔鏡など)や鉗子を装着する4本のアームをもつペイシェントカートというロボット部分と、それを操作するサージョンコンソール(操作台)からなる。術者は3D画像を見ながら遠隔操縦して手術を行う。ダヴィンチの鉗子は可動域が広く、人の手では困難な屈曲や回転を実現でき、ぶれの少ない安定した動きで手術が可能。精緻な低侵襲手術をより安全に施行でき、出血量の低減や術後早期の回復などに寄与する。
保険適用は年々拡大しており、2012年に前立腺がんに対する前立腺全摘術が適用となったのを皮切りに、16年に腎臓がん、18年に縦隔がん、肺がん、食道がん、胃がん、直腸がん、膀胱がん、子宮体がん、子宮筋腫、心臓弁膜症の手術が加わった。20年にも膵臓がんの手術や腎盂形成術などが対象となり、22年には咽頭がん、喉頭がん、総胆管拡張症、肝切除、結腸がん、副腎摘出、褐色細胞腫、尿管がんに適用が拡大した。
八尾病院は昨年12月にダヴィンチを導入し、2月に1例目の前立腺全摘術を実施。その後も同術の症例を重ね5月下旬に縦隔がんの手術をダヴィンチで実施、呼吸器外科の領域でもスタートした。
「手術件数の維持に腐心しています」と谷部長(左)、八鍬主任
ダヴィンチで前立腺全摘術を行う様子
サージョンコンソールから遠隔操縦
金丸知寛・泌尿器科部長は「前立腺は骨盤の奥のほうにあるため、狭い術野のなかで、とても繊細で正確な手技が求められます。ダヴィンチ手術による恩恵が大きいため、前立腺全摘術はロボット支援下で行うのがスタンダードです。これまで手術希望の前立腺がんの患者さんは他院に紹介し忸怩たる思いがありましたが、当院にダヴィンチが導入され、薬物治療、放射線治療を含め、当院で治療を完遂できるようになりました」とアピール。
手術室改修しダヴィンチ収納のための空間を確保
使用しない時は手術室の一角に収納
泌尿器科では今後、腎臓がんや膀胱がんにダヴィンチの活用を広げていく考えだ。
ダヴィンチ導入に際しては手術件数を落とさないように腐心した。救急・急性期病院にとって手術件数は重要なバロメーターであり生命線であるためだ。同院には手術室が全部で8室あり、このうち1室は、平時は救急など緊急用に空けておく。残り7室で月間500~600件の手術を行っている。これを維持するには、効率的な手術室運営が欠かせない。
手術室のマネジメントを担う谷仁介・麻酔科部長兼中央手術部長は「ダヴィンチ専用の手術室をつくらず、手術室を改修して一角にダヴィンチを収納するスペースを設けました。これにより、使わない時には、そこに収納しておくことができるため、看護師の動きも制約されることがありません。他の手術も問題なく通常どおりに行うことが可能です」と説明する。
同院は21年2月に8番目の手術室としてハイブリッド手術室(血管撮影を実施できる手術室)を開設した。
さまざまな診療科の手術に対応できるように設計・機器選定を行ったことにより、ハイブリッド手術室も高い稼働率を維持しているという。
八鍬貴則・看護主任(手術室看護師)は「より多くの患者さんを受け入れ地域医療に貢献するために、効率性を大切にすると同時に、診療機能のレベルアップを通じた医療の質の向上を図り、患者さんに安心して手術を受けていただけるよう、これからも尽力していきます」と意気込みを語っている。