医療法人徳洲会・一般社団法人徳洲会 理念・哲学の堅守を掲げ東上震一・新理事長が就任 「つねに弱い人の立場で考え より良い社会を実現」
医療法人徳洲会・一般社団法人徳洲会
理念・哲学の堅守を掲げ東上震一・新理事長が就任
「つねに弱い人の立場で考え より良い社会を実現」
「医療界ナンバーワンの働きたい職場へ」
──理事長就任おめでとうございます。まず徳洲会の理念・哲学に対する思いをお聞かせください。
「“生命だけは平等だ”、『いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会の実現を目指して』――これが徳洲会グループの理念・哲学であることは周知の事実です。その前に、徳洲会創設者の徳田虎雄・医療法人徳洲会名誉理事長は著書のなかで、『自由を求め愛に生きる』という、人として、どう生きるか、根本的な哲学があると述べています。これは、何ものにも捉われない自由な心で、弱い立場に立たざるを得ない患者さん、社会的な弱者に対する愛に生きるという意味です。
この理念・哲学を堅守し、徳洲会グループを拡大、発展させていく必要があります。なぜなら徳洲会の行動は、つねに弱い人の立場で考え、手を差し伸べて医療・介護・福祉という手段で、より良い社会を実現しようという社会運動だからです。多くの仲間が徳洲会の理念・哲学でつながり、それぞれの場所で愚直に患者さんのために医療を行うのが徳洲会の姿です。困難な現場でも『患者さんのために頑張ろう』と、心を合わせられるのが徳洲会の強さの秘密です。
止まることが死を意味する回遊魚のごとく、365日、各病院・施設を回り、何か問題があれば、話を聞き対処した徳田・名誉理事長の現場主義は、徳洲会の理事長として、何を置いても受け継ぐべき基本姿勢であると考えています。“生か死か、真実を求めて”行動した徳田・名誉理事長の意思の強さと各病院・施設に対する愛情の深さ、大きさを思わずにはいられません。徳田・名誉理事長が目指した徳洲会グループのあるべき姿を求めて、皆さんと一緒に努力する覚悟です」
──理事長就任後、最初に取り組むのは?
「今までの徳洲会グループの運営で踏襲すべきは踏襲し、変えるべきは変えていく当たり前の努力を行うつもりです。人材登用とリーダー層の若返りは、組織の絶えざる活性化に不可欠です。これは最初に取り組み、新体制下で病院間の連携強化を図りたいと思っています。全国セミナー、ブロック会議など徳洲会のやり方を守りながらも、新しさを加味したい」
──離島・へき地医療については?
「患者さんが動くのか、医療チームが動くのか、選択すべきは明らかです。地理的、経済的なハンデを抱えた患者さんのことを第一に考え、離島・へき地に良質な医療を届けるため、徳洲会は病院をつくってきたのです。離島・へき地医療は徳洲会にとって最も大切なものです。患者さんのために医療者が動く工夫、小型ジェット機『ホンダジェット』の導入を真剣に討議してまいります。
離島・へき地、地方の病院をどうやって活性化するかという命題は、徳洲会にとって克服しなければならない最重要課題です。そのためには医師を中心にグループがもつ人材を有効活用する必要があります。何より活発な人材交流が大切です。超規模・大規模病院のリーダー、ひいてはグループのリーダーになるためには、離島・へき地での勤務を義務化するのも、ひとつの良い方法と考えます。これについてはコンセンサスを図りたい。
また、離島・へき地でも良質な標準治療を提供するのが基本と考えます。さらに若い研修医にとって十分なトレーニングの場になり得ます。将来的に徳洲会がさらに拡大していくためには、慢性期主体の病院群をもつことも必要になるでしょう。慢性期医療の現場でも研修医がある期間、身を置いて学ぶべき重要なことがあるのも事実で、研修プログラムの工夫が必要と考えています」
──救急医療については?
「『断らない医療』は徳洲会の理念であり、原点でもあります。病院の医局、職員のマンパワーが十分でなくても、何とか工夫して救急対応するのが徳洲会です。医療の高度化と専門化のなかにあっても、救急の領域ではファーストタッチが重要であることは言うまでもありません。また、優秀なジェネラリスト(総合診療医)を養成することも徳洲会の果たすべき役割と考えています。離島・へき地、地方の病院のためにも、横断的な『総合診療医局』の創生が必要です」
──「医師の働き方改革」への対応は?
「現在、グループ内の働き方改革ワーキングチームで検討が進んでいます。この改革の進行状況を見ながらグループとしての対応を考えたい。必要なら、この改革に対応するため医師の異動も考慮すべきかもしれません。いずれにしてもグループ外の医療機関の具体的な変化も見ながら考えてまいります」
──グループ内の連携強化については?
「研修プログラムにより移動する初期研修医、専攻医以外の医師を含む多職種の交流を、どう活性化するかに尽きます。グループは今まで良い意味での競争意識をもちながら、助け合い互いに成長してきました。しかし今、病院間の格差が拡大し、良い意味での助け合う連携が希薄になりつつあるように思えます。これは、まさに内在する徳洲会の危機と考えています。病院間の相互理解のためにも、応援ではないスタッフの交流システムが必要です。その交流はグループ全体のレベルアップにつながります。現在、各部会で行っている交流をさらに拡大してほしい。医師の部会(院長会)での交流が最大の課題です」
──医師会や大学病院との連携などは?
「医師会未加入病院については、各医師会への働きかけをグループ全体でさらに強化することが必要です。アカデミア(大学)との連携についても、これからのグループの成長にとって不可欠です。また、徳洲会という臨床現場で蓄積した成果をもっと学会で発表するなど、活発な学会活動を推奨していきたい」
──国際医療協力については?
「基本的に国境を越え、望まれるなら全世界に医療を届けるのが徳洲会の使命でもあります。現在、取り組み始めたコンゴ民主共和国での病院建設を進めてまいります。またアフリカ諸国で運営している徳洲会がバックアップした透析センターは、可能なら一層強化し腎移植センターとして発展させることも考えています。またアジアでの病院展開にも取り組んでいきたいです」
──最後に、ひと言お願いします。
「医療に携わる人たちにとって、徳洲会が一番働きたい職場になること。これが結果的に徳洲会ブランドだと思います。医療界ナンバーワンの働きたい職場環境を実現したいです」
──本日は、ありがとうございました。
Profile
東上 震一(ひがしうえしんいち) 医療法人徳洲会 理事長 一般社団法人徳洲会 理事長
1954年、大阪府生まれ。和歌山県立医科大学医学部卒業。80年、同大附属病院臨床研修医、82年、同院胸部外科助手、84年、同院紀北分院外科助手、85年、同大附属病院胸部外科助手。90年4月、国保すさみ病院に副院長として入職。同10月、同大附属病院から派遣され、岸和田徳洲会病院(大阪府)心臓血管外科開設のため血管外科部長として入職。2006年、同院院長。また医療法人徳洲会では09年、常務理事、12年、専務理事を経て16年、副理事長、22年6月25日に理事長。同29日に一般社団法人徳洲会理事長。
モットーは、「いかなる状況下でも患者さんを諦めない。あらゆる要請に対しても絶対に断らない」。
東上理事長と安富祖・前理事長が固い握手
がっちりと握手を交わす東上理事長(左)と安富祖・前理事長
医療法人徳洲会(医徳)・一般社団法人徳洲会(社徳)の東上震一理事長と安富祖久明・前理事長は7月1日、社徳東京本部で職員に挨拶した。
東上理事長は、あらためて理事長に就任したことを報告し、「徳洲会の心や精神をはじめ、素晴らしいもの、残さなければならないものを受け継いでいきます。ただ、組織の動かし方などは時代の変化に応じて少しずつ変えていってしかるべき。大事にしていることを守りつつ、その表現方法はいろいろあるはずです。よろしくお願いいたします」と呼びかけた。
安富祖・前理事長は、任期の2年間を「コロナとの対決でした」と振り返り、「人知れず、おびえながらも、どうにか任期を全うできたことに、“やりきった感”を覚えると同時に、職員の皆さんには本当に感謝しています」と謝意を表し、「徳洲会創設者の徳田虎雄・医徳名誉理事長がゼロからつくり上げたこの組織を、向こう50年を見据えて運営していただきたい。私同様、東上理事長を支えてください」と話すと、職員から拍手が湧き起こった。
その後、ふたりは固い握手を交わし、記念撮影を行った。