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野崎病院附属研究所 著名な学術論文誌に 2つの研究成果発表

2022.06.30

野崎病院附属研究所
著名な学術論文誌に
2つの研究成果発表

野崎徳洲会病院附属研究所(大阪府)の由井理洋・悪性腫瘍新規治療法開発研究部部長と山口智之・免疫システム研究部部長の研究成果が、それぞれ著名な学術論文誌に掲載された。

骨肉腫の新たな治療法開発を示唆する由井部長 山口部長は遺伝子発現制御の新しいモデルを提唱

由井部長は「線維化抑制剤による骨肉腫肺転移抑制~骨肉腫に対する新規治療法の開発~」と題する論文が『International Journal of Cancer』に掲載された。骨肉腫は有効な肺転移抑制療法が確立していないのが現状。研究では骨肉腫細胞そのものではなく、腫瘍周囲環境を標的として転移抑制を試みた。

骨肉腫の原発巣は線維が豊富で硬い骨組織。転移先となる肺は、骨に比べて軟らかく線維が少ないため、増殖するには多くの線維が必要になると推測される。研究では臨床サンプルと動物実験から、骨肉腫の肺転移巣は高度に線維化していることを確認し、動物実験により、線維化抑制剤で骨肉腫の肺転移を抑制できた。

由井部長は「本研究の結果は、骨肉腫の新たな治療法開発につながることが期待されます。今後はさらにデータ収集と処理を行い、メカニズムの解析を進めます」と明かす。

山口部長は「学習過程を使って細胞は遺伝子発現を制御する」と題する論文が『Scientific Reports』に掲載。細胞の中では、1万以上の遺伝子の発現量が状況に応じ正確に調整されている。論文では、人工知能の深層強化学習に類似した学習過程が働いていると想定することで、全遺伝子の制御が可能となることを理論的に示した。

2つの因子(遺伝子)の量は、競合的増幅と誤差依存性減衰の確率過程を繰り返すことで、自律的に最適比率に至る。この学習過程をもつ遺伝子発現制御モデルにより、全遺伝子の多様な分化過程が再現可能。代謝しながらも組成を維持するという生物の特性自体が最適化(学習能)を有することを、「生物学的慣性の法則」として提唱し、数式で示した。

山口部長は「新しい考え方を提示できたと思います。この原理に基づくことで、工学的な医療設計が将来可能となるかもしれません」とアピール。

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