徳洲会放射線部会 離島へ遠隔撮影支援 実証実験により課題抽出
徳洲会放射線部会
離島へ遠隔撮影支援
実証実験により課題抽出
バーチャル・コックピットによる実証実験の様子(沖永良部病院)
徳洲会放射線部会は離島への遠隔撮影支援システムの実証実験を実施した。これはシーメンスヘルスケアの「バーチャル・コックピット」を用い、離島の病院に設置しているMRI(磁気共鳴画像診断装置)の操作を、経験豊富な診療放射線技師がいる都市部の病院からサポートするもの。
ただし、現在の法律では、施設内にいる診療放射線技師でないとMRIを操作してはならないため、同システムをそのまま臨床利用することはできない。このため同実験では、同システムの動作環境の検証に加え、将来、遠隔操作が可能になった際に発生する課題などを洗い出した。
同部会長である鎌ケ谷総合病院(千葉県)の服部篤彦・放射線科技師長は「都市部と同じような検査が受けられるよう、離島・へき地の病院にも高機能装置を導入しています。それら装置の能力を最大限に引き出すには、豊富な知識と経験が必要ですが、離島・へき地では検査数が少なく、なかなか経験が積めないため、エキスパート技師による遠隔での操作支援はとても有用だと考えます」と意図を説明する。
同実験は中部徳洲会病院(沖縄県)の技師が、名瀬徳洲会病院(鹿児島県)と沖永良部徳洲会病院(同)に対し、それぞれ実施。
レビュー項目として①モニターの解像度、②リモートコンソールの表示速度とレスポンス、③テキストチャット、オーディオチャットの使用感、④IPカメラ(ネットワークカメラ)の表示速度とレスポンス――などを検証した。
中部徳洲会病院の石崎理子・放射線科副技師長は「撮像に関しては、臨床で利用可能なレベルだと思います。患者さんの安全確認は、IPカメラの台数が増えれば、ある程度カバーできますが、検査室内やガントリ内がはっきりと確認できないのは厳しいです。現地にいる技師により、安全確認やポジショニングなどの対応が必要になります」と指摘。
同院の祖堅光彦・診療放射線技師は「現在、名瀬病院、沖永良部病院に対し、遠隔画像診断システムによるサポートを行っていますが、遠隔撮影支援を行う場に読影医がいれば、同システムに画像を転送することなく、リアルタイムに撮影の指示を出すことができるのはメリットだと思います」と強調する。
一方、沖永良部病院の堤志起・放射線科副技師長は「たとえば、応援で訪れた循環器科医師に撮影依頼を受けても、心臓のMRI撮影は年に数回しかやらないので不安があります。遠隔撮影支援により、エキスパート技師に、その都度確認しながら操作できるのは後ろで見てもらっている安心感があります」と吐露。もし遠隔操作が可能になったら、「MRIの操作は非常に複雑で、知識や技術をもった技師が行えば、より良い画像が撮影できるので、心強いです」と明かす。
今後、同部会では同実験を継続すると同時に、離島・へき地の病院をサポートする仕組みを整備する計画だ。