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国産手術支援ロボットで前立腺全摘術 南部徳洲会病院「hinotori」順調 離島の患者さんにも恩恵大きく

2022.06.21

国産手術支援ロボットで前立腺全摘術
南部徳洲会病院「hinotori」順調
離島の患者さんにも恩恵大きく

南部徳洲会病院(沖縄県)は国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」を導入、2月に1例目の手術を行い、5月下旬までに3例の手術を施行した。いずれも前立腺がんに対する前立腺全摘術。同機は4本のロボットアームに手術器具や内視鏡(腹腔鏡など)を装着し、専用の操作台で3D画像を見ながら医師が遠隔操縦して手術を行う。精度が高く、低侵襲で出血量も少ないなど、患者さんの負担軽減に寄与する。同機導入は、武蔵野徳洲会病院(東京都)に続き、徳洲会グループで2施設目。那覇空港から車で約20分という地の利を生かし、離島の患者さんを積極的に受け入れ、ロボット手術を施行していく方針だ。

(左から)向山副院長、島袋部長、上地室長 国産初の手術支援ロボット「hinotori」(画像提供:メディカロイド) ©Tezuka Productions サージョンコックピットで遠隔操縦し手術を行う

hinotoriは「サージョンコックピット」と呼ばれる専用の操作台と、4本のロボットアームを備えた「オペレーションユニット」などで構成。泌尿器科領域の一部手術が2020年9月に保険適用となった。

ロボットアームのうち1本は内視鏡カメラを保持し、残り3本は鉗子(手技を行うためのマジックハンドのような手術器具)を装着。鉗子には組織の把持や剝離、結紮・縫合を行うものから、電気メスのように組織を切開・凝固する機能をもつものまで、さまざまな種類がある。人間の手首よりも可動域が広く、視野の拡大表示や手ぶれ補正などの機能も備わっており、精緻な低侵襲手術をより安全に施行できる。これにより出血量が少なく、術後早期の回復や機能温存に寄与する。

南部徳洲会病院は昨年12月に同機を院内に設置。プロクター(手術指導医)として、武蔵野病院の桶川隆嗣院長を招聘し、2月に1例目の手術を実施した。並行して南部徳洲会病院の手術室スタッフらは他院の手術見学を行い、泌尿器科の向山秀樹・副院長兼主任部長と島袋浩勝部長は同機を用いた手術を行うために必要なトレーニングを履修。

その後、2例目を島袋部長、3例目を向山副院長が執刀した。すべて前立腺全摘術。6例目まで手術予定が決まっている。

前立腺全摘術は今日、ロボット支援下に行うのがスタンダード。そのため手術希望の患者さんは、これまで手術支援ロボット「ダヴィンチ」を有する中部徳洲会病院(沖縄県)に紹介してきた。

「hinotori導入により、院内で前立腺がんに対するロボット手術が可能になりました。さらに当院には、根治目的にも使える高性能放射線治療装置サイバーナイフがあります。患者さんの希望に応じ、どちらでも治療できます」(向山副院長)

21年4月に南部徳洲会病院に入職した島袋部長は、前任地の中部徳洲会病院でダヴィンチ手術を手がけてきた。「とくに前立腺全摘は骨盤奥の狭い術野で膀胱と尿道の吻合を行うなど、とても精緻な手技が求められる難度の高い手術です。自由自在に動く鉗子や拡大視野など、ロボット支援のメリットは大きく、より安全で質の高い手術が期待できます」と島袋部長は強調する。

向山副院長は石垣島徳洲会病院(沖縄県)と沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)、島袋部長は与論徳洲会病院(同)と沖永良部病院で2週間に1回、または1カ月に1回の外来診療を行う。3例目は石垣島で向山副院長が診療していた患者さんだ。

「当院は那覇空港から車で20分ほどとアクセスが良いので、手術を希望する離島の患者さんがおられれば積極的に受け入れていきたいです。術後のフォローも各病院で外来診療を行っているため問題ありません」と向山副院長はアピールする。

医療安全向上について経営企画室の上地利明室長は「事前に危険を洗い出し、あらかじめ対策を行うFMEA(Failure Mode and Effects Analysis=故障の影響解析)に取り組んでいます。これはJCI認証(国際的な医療機能評価)の審査項目にも採用されています。その他、術前・術後の点検マニュアルやクリティカルパス(診療計画表)を作成するなど、安全性と治療の質を高めるよう計画・実践しています」。

新型コロナを巡る状況の変化を受け政府は外国人観光客などの受け入れ制限を緩和。南部徳洲会病院はhinotoriを医療ツーリズムの目玉とし健診・人間ドックと並び治療も柱にする考えだ。


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