米国胸部外科学会『JTCVS』 景山・名古屋病院医長が論文
米国胸部外科学会『JTCVS』
景山・名古屋病院医長が論文
徳洲会5病院の手術データ活用
「患者さんのため最善を尽くします」と景山医長
名古屋徳洲会総合病院の景山聡一郎・心臓血管外科医長は、米国胸部外科学会の公式ジャーナル『The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery』(JTCVS)に論文を投稿、徳洲会グループ5病院の約20年に及ぶ手術データを用いた研究成果が掲載された。『JTCVS』は胸部外科領域では世界で最も権威のある学術誌。論文テーマは「80歳以上と80歳未満における急性A型大動脈解離の早期死亡率:多施設後ろ向き研究」。
急性A型大動脈解離は死亡率の高い重篤な疾患だが、これまでの研究報告は症例数が少なく、交絡因子(影響を与える因子)の調整が不十分であるなど限られた内容のものだった。そこで景山医長は年齢、術後早期死亡率、中枢神経系(CNS)合併症の関係を検討。対象は1998年10月から2019年12月までに名古屋病院、松原徳洲会病院(大阪府)、野崎徳洲会病院(同)、宇治徳洲会病院(京都府)、東京西徳洲会病院で急性A型大動脈解離の緊急手術を行った1,037症例。この5病院は名古屋病院の大橋壯樹総長が中心となり、同院でトレーニングを受けた心臓血管外科チームで構成され、治療方針、手術術式は原則同じであり、共通の手術台帳を導入している。
1,037人のうち80歳以上は227人、80歳未満は810人。術後30日以内の死亡は全体で134人、このうち80歳以上は42人、80歳未満は92人。CNS合併症は全体で140人、80歳以上は42人、80歳未満は98人だった。解析の結果、80歳以上の年齢は術後30日以内の死亡率と関係していたが、CNS合併症とは関係がなかった。
景山医長は「今回の研究では術後早期生存率が80%を超えるなど、良好な手術成績であることもわかりました。80歳以上でも手術を行うことは十分に検討に値することを示せたと考えています」と強調。
続けて「1,000例超の症例をもとにした同テーマの論文は今までにありません。自分たちの医療を客観的に評価するためにはデータを残すことが大切であるとの考えの下、1998年に徳洲会グループで手術を開始した大橋先生が当時から手術台帳を整備してきたからこそ実施できた研究です。徳洲会が積み重ねてきた手術が世界的な学術誌に認められうれしいです。今後も患者さんのため“断らない医療”を実践し最善を尽くしていきたい」と意気込みを語っている。