奄美長寿者の腸内細菌叢研究 「二次胆汁酸産生菌」有用
奄美長寿者の腸内細菌叢研究
「二次胆汁酸産生菌」有用
今里・岡山大院生が学会発表
「今後も多施設共同研究を進めていきます」と藤田院長
奄美群島に住む長寿者の腸内細菌叢を対象とした臨床研究で、これまでの成果をあらためて裏付ける研究報告が行われた。1月22日にオンライン開催された日本農芸化学会中四国支部第61回講演会(例会)で、今里研仁・岡山大学大学院環境生命科学研究科動物機能開発学講座博士前期課程2年生が「奄美群島長寿者腸内細菌叢における二次胆汁酸産生菌のin silico解析」をテーマに講演。昨年、二次胆汁酸産生菌と長寿の関係性を示唆する報告があったことから、健康状態にともなう菌属の変化に加え、二次胆汁酸産生菌を含むParabacteroides属が奄美長寿者の腸内に、どの程度存在しているかを調べた。
同研究は、95歳以上の奄美長寿者の自然排泄後の糞便を採取、腸内細菌叢を解析し、その特徴と健康状態との関係を明らかにするのが目的。徳之島徳洲会病院、名瀬徳洲会病院、喜界徳洲会病院、瀬戸内徳洲会病院(すべて鹿児島県)、全薬工業、岡山大学大学院環境生命科学研究科が共同で実施し、2019年には徳之島病院の藤田安彦院長が第23回腸内細菌学会などで、奄美長寿者の腸内細菌叢は比較的高い多様性を有し、健康状態の悪化にともない特定の菌属の構成比が低下することなどを発表した。
今回の研究発表でも、健康状態の悪化にともない、Bifidobacterium属、Akkermansia属、Faecalibacterium属、Prevotella属の構成比低下をあらためて確認。一方、二次胆汁酸産生菌を含むParabacteroides属と健康状態との相関は認められなかったものの、「研究対象の43人のうち42人の腸内細菌叢にParabacteroides属を確認したことから、本研究でも二次胆汁酸産生菌の保有は長寿に有用である可能性が示唆されました」(今里・博士前期課程2年生)。
発表を受けて藤田院長は「多施設共同で取り組んできた本研究の進展をうれしく思います。奄美長寿者の腸内細菌叢の特徴などについて、科学的根拠を示しながら、考察をより深めていきたい」と意欲を示している。