湘南藤沢病院 中和抗体療法に尽力 外来拠点病院の責務果たす
湘南藤沢病院
中和抗体療法に尽力
外来拠点病院の責務果たす
「地域に重症者が増えないようにしたい」と日比野部長(左)と右松師長 院内の病床逼迫のためプレハブで中和抗体療法を実施
外来拠点病院は①投与終了後1時間の経過観察を行う、②投与終了後24時間は常時副作用など問い合わせに対応する(電話対応、病態の悪化など必要に応じ入院を含む緊急対応)、③副作用確認や重症化時は自院で入院対応する、④県や他院が紹介する患者さんを優先的に受け入れる体制を構築する――が条件。中和抗体療法で使用する薬剤は供給量に限りがあるため、厚生労働省が薬剤を買い上げ、対象患者さんが発生した医療機関の依頼に基づき無償譲渡を行っている。
同院が同療法に取り組み始めたのは、外来拠点病院に指定される以前の第5波初期。日比野真・呼吸器内科部長は「重症者を増やさないために、なるべく多くの患者さんに実施できればと考え、発熱外来で対象者の拾い上げをしていました」と述懐。当時は急を要さない手術の延期が余儀なくされ、日帰り手術の実施を縮小していたため、日帰り手術センターの看護師が中心となり、院内で対応した。
第6波では昨年末頃、県から依頼を受けた患者さんに対し、院内で同療法を実施していたが、病床逼迫を予測していたため、早い段階で同療法を実施するための場所、人の確保について検討。急きょ第5波の時に転院の待機場所として使用した敷地内のプレハブを、処置室として活用するために保健所に届け出をし、日帰り手術センターの看護師が中心となり対応することにした。
県全域から患者さん来院 「熱が下がり楽になった」
病床が逼迫したら同療法を中止するという選択肢もあったが、日比野部長は「拠点病院に指定されたからには、責任を果たさなければなりません。何とかプレハブに4床を確保し、午前と午後で計8人に対応できる体制を整備できました(2月8日からプレハブで開始)。外来で対応できる病院は少ないので、県全域から患者さんが来院されます」と明かす。
日帰り手術センターの右松栄里・看護師長は「第6波では日帰り手術の件数は減っていませんでしたが、準備にスピード感が求められていたこともあり、第5波での経験を生かし、通常業務と並行して対応しました。第5波で作成したマニュアルがありましたので、それをプレハブ用に改訂し、実践しながら足りないところを補いました」。
同院では、同療法を終えた24時間後に必ず患者さんに“電話訪問” を行い、安全性の確保に努めている。右松師長は「インフュージョンリアクション(輸注反応)が出る可能性があるので、丁寧なフォローを心がけています。患者さんに電話すると、熱が下がって楽になったなど効果を実感している様子がうかがえます」と強調する。
同療法を受けるために来院した患者さんが、同院に到着した時点で症状が悪化していたため、すぐに入院になったケースもある。同院はコロナの軽症・中等症用に42床を確保しており、入院も積極的に受け入れているからこそ、スムーズに移行できる。
日比野部長は「コロナは流行の波があるため、柔軟な対応、体制の構築が求められます。第6波が落ち着き、院内に中和抗体療法用のベッドが確保できるようになったら、プレハブは別の用途で使用することもできます。今後とも重症者が増えるのを防ぎ、地域に貢献していきたい」と意欲的だ。