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田中・名古屋病院循環器内科部長 TAVIトラブルに新手技考案 米国心臓病学会誌『JACC』へ掲載

2022.03.09

田中・名古屋病院循環器内科部長
TAVIトラブルに新手技考案
米国心臓病学会誌『JACC』へ掲載

名古屋徳洲会総合病院の田中昭光・循環器内科部長は、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)施術時のトラブルに対する新手技を考案、米国心臓病学会誌『JACC』に英文論文が掲載された。同手技はガイドワイヤーを通して心臓の左室に人工弁を運ぶ際、アクシデントによりガイドワイヤーが抜けた場合のベイルアウトテクニック(救済法)。別の血管から入れたスネアワイヤーで人工弁をつかみ、左室まで“連れ込む”ことから、「TSURECOMI法」と命名した。また、同院は2022年2月にTAVIの治療件数が230例を突破、今後もスタッフ一丸となり地域の患者さんに貢献していく。

治療件数が230例を突破

「名を残せて、とても誇らしい」と田中部長

TAVIの施術中にガイドワイヤーが抜けるのは非常にまれだ。もし人工弁を心臓の左室に運ぶ際にガイドワイヤーが抜けたら、いったん人工弁を体外に取り出してから仕切り直す方法がある。しかし、取り出す際に血管を傷つけるリスクがあるうえに、人工弁は非常に高価なものであり、一度体内に入れると再利用ができない。

名古屋病院では2015年8月にTAVIを開始し、これまでに約230例を実施したが、施術中にガイドワイヤーが抜けた症例は1例のみ。田中部長は、その時のとっさの判断でTSURECOMI法を編み出した。

まず試したのは、リング状のLASSOカテーテルを用いた復旧。これは田中部長が放射線科医師にIVR(画像下治療)によるステントグラフト留置術の指導を受けた際に学んだ手技だ。しかし、LASSOカテーテルを使い人工弁を左室まで押し込もうとしたが、うまくつかめずに復旧はできなかった。

研修中の経験 ふと頭に

TAVI治療の様子 スタッフとともに200例突破時の記念撮影

田中部長はその時ふと、大阪大学でTAVIの研修中に使用したINDYのスネアワイヤーを思い出した。これを使い、再度同様の方法で復旧を試みたところ、人工弁の先端をつかみ、左室まで押し込むことができた。

田中部長は「放射線科医師にカテーテルの技術を学んだ経験、大阪大学でTAVIの研修を受けた経験、このどちらが欠けても思い付かなかった手技だと思います。これは特別な技術を必要としない、誰でもできる方法。TAVIの施術時にガイドワイヤーが抜けることは滅多にありませんが、この手技を知っていれば、高価な人工弁を無駄にしないですみます」と説明する。

田中部長は同テーマについて発表した「小倉ライブ2019」で、最優秀演題賞を受賞。海外では、米国心臓病学会が発行する学術誌『JACC(Journal of the American College of Cardiology)』(21年8月号)に英文論文が掲載された。

田中部長は「今後、世界中のカテーテル医師がこの手技を行い、それを学会発表した時に、当院で考案した手技として紹介されます。名を残せたことは、とても誇らしく思います。これは、ひとりの力で成し得たことではなく、今までの経験やチームメンバーの協力があってこそ。これからも臨床だけでなく、学術活動にも力を入れていきたいと考えています」と強調する。

また、同院はTAVIの治療件数を年々増やし、現在は1年間に60例ほど実施している。田中部長は「チームとして成熟してきて、治療時間が短くなり、合併症も起こさなくなりました。今やTAVIは特別な治療ではなく、自信をもって患者さんにおすすめできる安全な治療法だと言えます。この治療をもっと地域の方々に知っていただけるように、啓発活動にも力を入れていきます」と意欲的だ。

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