地域全体で「創傷管理」に力 中部徳洲会病院 形成外科のマンパワー拡充
地域全体で「創傷管理」に力
中部徳洲会病院 形成外科のマンパワー拡充
(左から)久場医長、外間・副看護部長、勝連医師
中部徳洲会病院は昨年4月、久場良吾・形成外科医長と勝連今日子・同科医師が常勤となった。久場医長は「以前勤務していた病院で、介護老人保健施設(老健)や療養型病院を利用している高齢の方が、褥瘡などの創傷を悪化させ運び込まれる状況を多く経験しました。老健や療養型病院のスタッフが高齢の方を放置しているわけではなく、創傷への対応方法がわからず、気付いたら悪化しているというケースが多いようです」と指摘。
国内では高齢化の進展、糖尿病に起因する人工透析治療や末梢動脈疾患の増加にともない、包括的慢性下肢虚血や褥瘡など治りにくい創傷が増加、多くの医療従事者・介護従事者が慢性創傷にかかわる機会が増えている。こうした状況をふまえ、高齢者のケアにかかわるすべての人が創傷に対する知識を深めることが不可欠であると考え、久場医長は同院に入職後すぐに「地域で行う創傷管理セミナー」を企画した。
同セミナーは同院のような急性期病院が軸となり、地域の医療施設・介護施設と知識や経験を共有することで、医療従事者・介護従事者の不安を取り除き、創傷を重症化させず早期治療につなげることが目的。昨年8月23日に第1回を開催し、1~2カ月に1回のペースで実施。基本的に視聴可能期間を設けたオンデマンド配信となるが、テーマによってはライブ配信を行い、質疑応答の時間を設けている。
講師は久場医長や勝連医師に加え、外間美智代・副看護部長(皮膚・排泄ケア認定看護師=WOC)など同院で創傷管理に携わる看護師も務める。テーマは「形成外科の診療内容」や「WOCの役割」など同院と他施設との連携強化を目的としたものに加え、「軟膏の使い方」、「体圧管理やポジショニング」など高齢者ケアの業務に直結する情報提供も行っている。
勝連医師は「傷は経過により、良くも悪くもなります。この傷の状態で、処方された軟膏をずっと使い続けて良いのかなど疑問をもち、少しでも傷について考えるきっかけになれば良いと思います」
と強調。「セミナー開始当初に比べ、紹介患者さんが増え、傷が悪化しない状態で外来を受診するケースが増えたように思います」と手応えを感じている。
褥瘡回診を看護師が主導 医師「働き方改革」に寄与
看護師主導で行う褥瘡回診の様子
同院では創傷管理にかかわる看護師の育成にも力を入れている。これまで褥瘡回診は医師が患者さんの褥瘡状態を評価し指示を出すのみだったが、昨年11月から看護師主導に変更。看護師が評価し、対応を検討するディスカッション形式となった。外間・副看護部長は「まず自分で考えることで勉強になりますし、チーム医療の一員としての責任感も生まれます。先生方が相談しやすい雰囲気をつくってくださるので助かっています」と笑みをこぼす。
また、看護師の特定行為研修では4月に始まる2期生から「創傷管理関連」区分を追加する予定。特定看護師は複雑化した医療現場でチーム医療を円滑に行うキーパーソンとしての役割に加え、医師の「働き方改革」に資するタスクシフト(業務移管)にも寄与すると期待されている。
今後について外間・副看護部長は「創傷患者さんの紹介先は形成外科か皮膚科か判断に迷うことが多々あります。こうしたケースに対応するため、看護師による相談窓口をつくれば、地域の訪問看護ステーションなどとの連携強化につながるのではないかと考えています」と展望する。
地域で行う創傷管理セミナーは今後、実際の症例をベースにしたオンラインカンファレンス(検討会)も計画している。久場医長は「オンラインセミナーの参加・視聴人数を増やすために、しっかりと宣伝することが必要です。また、現在も紹介先の診療所や施設への情報提供書は、できるだけ詳しく書いていますので、こうしたことを地道に続け、地域全体に創傷管理の重要性を周知していきたいです」と意気軒高だ。