具志堅・中部徳洲会病院部長 25年にわたり「離島支援」継続 名瀬病院でIVRを400件超施行
具志堅・中部徳洲会病院部長
25年にわたり「離島支援」継続
名瀬病院でIVRを400件超施行
「離島で医療を完結させる」
「顔の見える関係だからこそ支援したい」と具志堅部長
具志堅部長は1996年に中部徳洲会病院に入職。放射線診断、肝臓がんに対する経カテーテル動脈塞栓術(TAE)などのIVRに加え、2002年には子宮筋腫外来を開設し、子宮を全摘せずにカテーテルで治療する子宮動脈塞栓術(UAE)にも注力。現在、院内のIVR件数は年間100件ほどだが、このうちUAEが約70件を占めている。
1997年に鹿児島県の離島にある名瀬徳洲会病院の支援を開始。月に2回ほど同院を訪れ、IVRや画像診断のアドバイスなど行い、2019年にはIVRの実施件数が400件を突破した。これを記念して同年11月9日に「感謝の気持ちを伝える会」が開かれた。同院の松浦甲彰院長は「沖縄から奄美大島まで往復約500㎞、400回以上の飛行距離は地球5周分に相当します。具志堅先生の負担は患者さんの負担軽減につながります。これを25年の長期間、継続していただいていることに頭が下がります」と謝意を表す。
現在、定期的な応援体制ではなくなったが、画像診断では6年前に導入した遠隔画像診断システムを活用し、より迅速かつ効率的に支援が可能になり、さらにIVRに関しては症例があればすぐに駆け付けるという体制に変更した。松浦院長は「画像についてディスカッションできる機会が減ったので、今後はオンラインカンファレンス(症例検討)ができるようになると良いと思います」と切望する。
こうした支援は名瀬病院に限らず、現在、遠隔画像診断は鹿児島県の離島に立地する笠利病院、沖永良部徳洲会病院、沖縄県の宮古島徳洲会病院、石垣島徳洲会病院の計5病院でも実施。合計で月間450件ほどの依頼があるが、具志堅部長は1日以内に診断レポートを返信することを心がけている。
IVRを施行する具志堅部長(右)と伊良波医師 治療の様子を見守る玉榮院長(左から2人目)ら
「以前は画像診断を外注すると、結果が出るまでに1週間以上かかることもありました。画像は“生もの”ですので、理想を言えばリアルタイムで診断を下すべき。自院の仕事もあり大変ですが、グループ病院で“顔の見える”関係だからこそ、離島で頑張っている仲間の力になりたいと考えています」(具志堅部長)
IVRは沖永良部病院でも実施しており、19年に4件、20年に3件、21年に2件行った。玉榮剛院長は「設備が整っていない環境で無理を言ってお願いしていますが、沖永良部島で唯一の病院として、島内で治療を完結できて非常に助かっています。また、遠隔画像診断も緊急の際には電話で対応してもらえますし、いつでも相談できる垣根の低さがうれしいです。今後、さらに院内の環境を整備したら、UAEなど新たな治療もお願いできればと思います」と展望する。
離島病院を支援する際、具志堅部長はスタッフとのコミュニケーションも大切にしており、「診療放射線技師と話すと向上心の高さに驚きます。学びたい、情報交流したいという気持ちにも応えたいと考えています」と強調する。また、現在は後進の育成にも注力。離島病院でIVRを実施する際、伊良波朝敬・放射線科非常勤医師も同行する。
具志堅部長は「読影室は病院のなかで“司令塔”のようなもの。診断することで治療方針が決まり、同時に緊急性も判断します。介入できれば、自分でIVRなどの治療も行います。離島でも、この司令塔としての機能が落ちないように、自分のできることは全力でサポートしていきます」と意気込みを話す。