鹿児島病院 新病院に入院患者さん無事移送 グループ最長距離“引っ越し大作戦”
鹿児島病院 新病院に入院患者さん無事移送
グループ最長距離“引っ越し大作戦”
シミュレーションの成果発揮
鹿児島病院の移転先は直線距離で約8㎞。これまでの徳洲会病院の新築移転では最長の引っ越しとなった。患者さんの移送にあたり、同院は職員を旧病院と新病院のそれぞれに配置。
さらに、徳洲会グループの大隅鹿屋病院(鹿児島県)、山川病院(同)、屋久島徳洲会病院(同)、徳之島徳洲会病院(同)、中山クリニック(同)、開聞クリニック(同)、介護老人保健施設(老健)光徳苑(同)、福岡徳洲会病院、長崎北徳洲会病院、宇和島徳洲会病院(愛媛県)、岸和田徳洲会病院(大阪府)、野崎徳洲会病院(同)、宇治徳洲会病院(京都府)がサポートするとともに、外部業者の協力も仰いだ。
同院は入院患者さん144人を「重担送」(呼吸器などが必要な重症の方)、「担送」(呼吸器などが必要ない方)、「護送」(車いすの方など)、「独歩」(歩行可能な方)の4つに区分し、それぞれに担当チームを配置。まず病室で患者さんの状態を確認し、搬送可能と医師が判断すると、ストレッチャーや車いす、歩行など患者さんの状態に応じて移送車両に運んだ。新病院に到着後は、同じく患者さんの状態に応じた方法で病室に搬送。
午前6時から引っ越し開始。まず、重担送担当チームが集合し、ミーティングで患者さんの情報を確認した後、午前6時半過ぎに最初の患者さんを移送した。重担送以外の担当チームは午前7時半に集まり、同様に患者さんの情報などを確認。午前8時過ぎから移送を開始。
支援に入ったグループ内外の35台の車両が、順次、患者さんを移送。発熱など患者さんの状態が変わり、移送方法を急きょ変更したケースもあったが、大きなトラブルはなく、午後2時50分にすべての患者さんを新病院に運び終えた。鹿児島病院の池田佳広院長は「無事に終わり、ほっとしました。ご協力いただいた皆様に本当に感謝しています」。
旧病院を取り囲むように移送車両が待機
午前6時半過ぎに最初の患者さんを移送
午前7時半に重担送以外の担当者が集合。他者に役割がわかりやすいように係のゼッケンを付けている
慎重に患者さんをベッドからストレッチャーに移し替える
重担送以外の患者さんは正面玄関から移送。ストレッチャーの停止位置もテープで表示
続々と新病院に移送車両が到着
随所にリスク減らす工夫
「安全かつ迅速」な患者さん移送を実現したのは、きめ細かい役割分担と入念な準備があったからだ。同院は池田院長を本部長、中村彰副院長を副本部長とし、現病院と新病院の責任者をはじめ移送リーダー、院内搬送、安全管理、リネン撤去・ベッド移動、病棟担当医師、救急重担送サポート、エレベーター、ストレッチャー載せ替え、交通整理、院内誘導、通信など、それぞれの役割を明確化。また、患者さんごとに状態や区分、入退室する病室、時間(退室、出発、到着、入室)、担当するチーム、使用するエレベーター・車両などを記載した一覧表を作成し、一糸乱れぬ行動を実現した。
また、当日までにシミュレ―ションを3回実施。中村副院長は「1回目は旧病院の病室から玄関まで。2回目は旧病院から新病院の玄関まで。3回目は新病院の院内までと少しずつ距離を伸ばしていきました。ストレッチャーひとつとっても、いろいろな種類があり、操作が異なるものもあります」と振り返り、徐々に改善した模様をアピール。「トレーニングの賜物です。統制が取れた動きで頼もしかった。私自身、ラグビーを経験していますが、まさにワンチームでした。今後も日本一の病院を目指し、一致団結します」と目を細めた。
旧病院で責任者を務めた片田淑子・副看護部長と和田茂人・総務課課長補佐も「皆が真剣に取り組んでくれた結果」と安堵した表情。「目の前のことに集中しがちなので、とくにベッドとストレッチャーの載せ替え、ストレッチャーの車両乗降時に事故リスクが高いと思い、一歩引いて事態を把握する人が必要だと考えました」と、係のひとつに「医療安全」を設けたことを強調した。
倉掛真理子副院長兼看護部長は「とにかく無事に終わり安心しました。何度も皆で話し合った成果が出ました」と顔をほころばせていた。
重担送の患者さんは申し送りや引き継ぎなどを行わず、旧病院から同じチームが移送
新病院に到着した後、患者さんをストレッチャーからベッドに移すスタッフ
到着した患者さんをすぐに移すため新病院ではベッドを準備
大隅鹿屋病院の中原梢・初期研修医(右)と鹿児島病院の石川義彦・初期研修医も参加
感染対策でストレッチャーは1人の患者さんに使用するたび簡易シーツを換え消毒