長崎北病院の人工透析治療 専門医による遠隔支援や リハビリ実施で質を担保
長崎北病院の人工透析治療
専門医による遠隔支援や
リハビリ実施で質を担保
宇和島徳洲会病院 小川部長がアドバイス
小川部長からアドバイスを受ける鬼塚院長(奥)
透析中もベッドサイドのセラピストがリハビリを行う
長崎北病院が新築移転後の目玉のひとつとして入院患者さん対象の透析を開始したのは今年5月。関連機器を導入、同時に体制整備も図り、鬼塚院長を中心に臨床工学技士、理学療法士、作業療法士からなるチームを結成、最大7人の患者さんに実施できる環境を整えた。「旧病院の頃から透析医療の地域ニーズは高く、新築移転をきっかけに始めたいと思っていました」と鬼塚院長は説明。
実施にあたり、とくに意識したのが質の確保だ。現在、同院に透析専門医は在籍していない。そのため、グループのスケールメリットを生かし、透析専門医の資格をもつ小川由英・宇和島徳洲会病院(愛媛県)泌尿器科部長(徳洲会グループが進める修復腎移植臨床研究総括責任者)の協力を仰ぎ、アドバイスを受けるかたちで実施している。
5月に初めて行った時こそ小川部長は来院したが、2回目以降はWEB会議システムを活用、鬼塚院長らは透析室のベッドサイドに電子カルテ端末を持ち込み、搭載カメラで患者さんを映したり患者さんのデータを共有したりしながら、遠隔でアドバイスを受けるスタイルに変更した。「まるで小川先生が横でサポートしてくださっている感覚。離れていることのデメリットは感じていません。診療時以外でも定期的に話し合い、検査での異常値に対する解釈やシャント造設の困難例など、主に課題があるケースについて助言いただいています」(鬼塚院長)。
専門医による遠隔サポートと透析中にリハビリを行う取り組みは、とくに脳卒中患者さんに奏功。鬼塚院長が脳卒中専門医であることから、同院に脳梗塞で救急搬送されるケースが多く、脳神経障害でまひしている上肢側にシャントを作成する方法を小川部長が提案。鬼塚院長は「小川先生から指摘されるまでその発想は自分の頭の中にありませんでした」と振り返る。
また、脳梗塞の急性期では、エダラボン(壊死(えし)した脳細胞の周囲から発生する有害物質から脳の正常な領域を保護する薬)を用いるのが一般的だが、透析を必要とするような重篤な腎機能障害がある場合、使用できない。そのため、同院では抗血栓治療で脳梗塞の再発予防を行いつつ、透析中に血圧低下を来さないように注意しながらベッド上でもリハビリを実施する。「脳卒中になった透析患者さんを受け入れられる地域の病院は大学病院か公的病院のみ。リハビリが充実している当院が加わることで、地域医療の課題克服に貢献できればと思います」と鬼塚院長は意気込む。
長崎県内で普及している在宅医療ネットワークシステムを活用し、在宅腹膜透析を手がける医療機関とも連携している。
長崎北病院の取り組みは少しずつ地域に浸透。リハビリを行いながら在宅を目指す透析患者さんを長崎県内はもちろん、佐賀県から受け入れたこともあった。
同院は将来的に外来透析の実施も計画。鬼塚院長は「透析専門医を確保し、外来透析を開始したいと考えています。それまでは入院透析を経験し透析治療について学び、今後は他施設との連携強化に努めたり、患者さんの団体とも定期的に接触したりしていくつもりです」と構想を明かす。