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JDDW 徳洲会が8演題発表 優秀演題賞と若手奨励賞受賞

2021.11.17

JDDW 徳洲会が8演題発表
優秀演題賞と若手奨励賞受賞

第29回日本消化器関連学会週間(JDDW2021)が11月4日から4日間、神戸市で開かれた。徳洲会は8演題(ワークショップ1、一般演題7)を発表し、宇治徳洲会病院(京都府)の小寺徹・健診センター部長が優秀演題賞、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の市田親正・消化器病センター医長が若手奨励賞を受賞した。

AIGとPCA抗体価

小寺 徹 宇治徳洲会病院(京都府)健診センター部長

「自己免疫性胃炎の進行と抗胃壁細胞抗体価の関連について」。自己免疫性胃炎(AIG)は抗胃壁細胞抗体(PCA)が出現し、高度萎縮性胃炎(A型胃炎)を来す疾患。終末期にビタミンB12欠乏性貧血(PA)を合併することがある。自院で経験したAIG51例を検討した結果、AIGの進行にともないPCA抗体価が低下する傾向を認め、PA例ではPCAが陰性化する場合もある。AIGを疑う所見があればPCAが陰性でも、PCA再検査や他の検査の追加により診断することの重要性を強調した。

出血源同定率に有意差

市田 親正 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)消化器病センター医長

「大腸憩室出血に対する24時間以内の緊急下部内視鏡検査の有効性と安全性について」。大腸憩室出血に対する下部内視鏡検査の治療実績について、来院24時間以内に実施した群(緊急群)と来院24時間以上経過後に実施した群(待機群)で検討した。対象は2018年1月~20年12月までの354例。出血源の見極めやすさについては緊急群のほうが高かったが、再出血率や輸血量、入院日数、外科的処置への移行、合併症では明確な差が見られなかったとした。同発表は若手奨励賞のひとつに選出された。

血漿DNAの有用性示唆

伊藤 貴博 札幌東徳洲会病院 IBDセンター部長

徳洲会では唯一、ワークショップで発表した。テーマは「IBD患者における新規バイオマーカーの検討」。健常な方とIBD(炎症性腸疾患) 患者さん102人を対象に、血漿(けっしょう)DNAがIBDの活動性や予後予測に有用かどうかを検討した。結果から、血漿McfDNA(ミトコンドリア由来DNA)測定が健常な方とIBD患者さんの鑑別、血漿McfDNAとNcfDNA(細胞核由来DNA)の測定が寛解期IBDの再燃予測に有用な可能性を示唆。血漿DNAは寛解期から変化し既存のバイオマーカーよりも早期に再燃を予測できる可能性も示した。

まれな大腸癌症例を報告

藤川 幸一 鎌ケ谷総合病院(千葉県) 外科部長

「虫垂への管腔内(かんくうない)転移を同時切除した上行結腸癌の一例」。上行結腸がんの術前診断で腹腔鏡(ふくくうきょう)下右半結腸切除術を施行したところ、虫垂への転移も明らかとなった。

食道・胃・直腸がんでの管腔内転移は予後不良とされていることから、外来で補助化学療法を6カ月実施、術後1年経過した現在まで無再発で外来フォロー中のケースを報告した。「とくに大腸がんの虫垂転移はまれ」とし、過去の報告が少ない点を指摘。原因や発症メカニズムについて、今回の症例は過去に示された考察とは異なる可能性などを示唆した。

高齢者の悪性胆道狭窄症

山本 龍一 東京西徳洲会病院 肝胆膵内科部長

「高齢者の悪性胆道狭窄症例に対する内視鏡治療の検討」。80歳以上の悪性胆道狭窄症患者さんに実施した内視鏡治療の成績を検討した。対象は、2012~20年に山本部長が主に手がけた60例。①患者さん背景、②治療方法、③合併症、④生存期間(全体)、⑤生存期間(がん種別)、⑥生存期間に寄与する因子―などを検証した結果、高齢者の悪性胆道狭窄症例でも、内視鏡治療後に手術や化学療法が適応となるケースであれば、それらの治療を加えることで生存期間が延長できる可能性を示唆した。

耐性菌もリスク因子に

増田 作栄 湘南鎌倉総合病院 消化器病センター部長

「急性胆管炎におけるERCP後胆嚢(たんのう)炎のリスク因子の検討」。自院の206例を対象に、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管(すいかん)造影)後胆嚢炎のリスク因子を多面的に検討した。結果から、リスクには従来のSEMS(自己拡張型金属ステント)留置以外に初期抗菌薬への耐性菌も考えられる点を指摘。腸球菌など自院で多く見られた耐性菌を示した。ERCP後胆嚢炎を合併すると入院期間も延長傾向にあることから、「抗菌薬の過剰使用は耐性菌を増加させますが、入院時に耐性菌のリスクがすでにある症例には広域抗菌薬の使用を検討しても良いかもしれません」と提起した。

粘膜の色で早期がん発見

結城 美佳 出雲徳洲会病院(島根県) 消化器内科部長兼 内視鏡センター長

「経鼻内視鏡検査でLCIによる胃観察は早期がん発見に寄与するか」。近年、内視鏡検診ではヘリコバクターピロリ除菌後症例が増えつつあり、早期胃がんかどうか粘膜変化を短時間で確実に判断する工夫が求められている。結城部長は、経鼻内視鏡で粘膜の細かい色の違いを強調して診断をサポートする「LCI(Linked Color Imaging)」システムを活用した症例を報告。早期胃がんの発見、がんの深達度の診断予測に有用な可能性を示唆し、今後、多数例で検討されることに期待を寄せた。

下行結腸の内視鏡挿入性

仲道 孝次 福岡徳洲会病院 副院長

「鎮痛剤を使用しない大腸内視鏡検査における体位変換と用手圧迫の工夫」。検診での大腸内視鏡では、安全面から鎮静剤を用いないことが多い。痛みの少ないホールド法が知られているが、なかには内視鏡の先端が下行結腸から進められないケースもある。仲道副院長は、大腸内視鏡技術のトレーニング用モデルを使い、右側臥位(そくがい)で右側腹部を10㎝持ち上げると内視鏡の先端が約20㎝進んだことを報告。体位変換と手の使い方を工夫することで、挿入困難例でも容易に克服できる可能性を示した。

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