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沖永良部病院 重症患者搬送訓練を初実施 海上保安庁・消防本部と合同

2021.10.20

沖永良部病院
重症患者搬送訓練を初実施
海上保安庁・消防本部と合同

沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)は海上保安庁と消防本部との三者合同で、重症患者搬送シミュレーション訓練を初めて実施した。これは海上保安庁の巡視船で島から本土に重症患者さんを搬送する際の手順や注意点などを確認するのが目的。訓練では、重症患者さんに見立てた人形を使い、救急車から港に泊められた巡視船に搬送、さらに巡視船内での海保隊員や医師の動き、物品の位置取りなど細かいところまでシミュレーションした。同院からは玉榮剛院長と岡田祥・内科医師、応援に来ていた中部徳洲会病院(沖縄県)の平井慎理・麻酔科医師が参加。

巡視船内での動きなど確認

訓練では重症患者さんに見立てた人形を巡視船に搬送 訓練に参加した玉榮院長(左から4人目)、岡田医師(その左)訓練の場となった海上保安庁の巡視船「かいもん」

徳洲会グループは離島・へき地病院のマンパワー不足を解消するため、スケールメリットを生かし、主に都市部の病院から短期・長期にわたりスタッフを絶え間なく派遣。また、最新の医療機器・設備を導入し、都市部に近い医療の提供に努めている。しかし、専門医の少ない離島・へき地病院では、対応困難な救急患者さんが発生することもある。

こうしたケースでは、とくに離島病院の場合、本土の大規模病院に患者搬送が必要になる。その手段として用いるのが、優先度が高い順にドクターヘリ、消防・防災ヘリコプター、自衛隊のヘリコプター、海上保安庁の巡視船だ。活用する搬送手段は、天候や時間帯により決まる。巡視船は、ヘリコプターに比べると搬送にかかる時間は長くなるが、天候や時間帯に左右されずに活用できる“最後の砦(とりで)”だ。

鹿児島県の離島にある沖永良部病院は、これまで3回ほど巡視船での患者搬送を経験。この時の反省をきっかけに、海上保安庁と消防本部の三者合同による重症患者搬送シミュレーション訓練を実施することになった。6月15日に実施。訓練に参加した玉榮院長は「都市部の病院であれば近くに救急車で搬送すればいいですが、離島ではそうはいきません。こうした地道な訓練が重要になります」と強調する。

訓練では、重症患者さんに見立てた人形を使い、救急車から港に泊められた巡視船に搬送。病院から港に搬送する側、港で待機して船に乗り組む側、それぞれの役割を明確にし、スムーズに搬送できるように手順を整理した。

巡視船に乗り込む段階では、通路が狭かったため、救急隊員は患者さんの挿管チューブにつながれた機器をはずさないように、無理な態勢を取っていたが、岡田医師は「チューブ自体が患者さんから抜けなければ、少しの間であれば機器をはずしても大丈夫です」などアドバイス。船内では、どこまで医療行為を行うことが可能か、医療用酸素ボンベや点滴をどこに置くかなどを確認した。

岡田医師は「船内ではスペースが限られているため、持ち込める機器や道具は限定されますし、配置にも工夫が必要だと感じました。たとえば、船内の梁に点滴を直接つるすために、S字フックを用意すると良いと思います。搬送には医師が同乗しますので、医師として何ができるか考えながら訓練に臨みました」と振り返る。

このほか、コロナ患者さんを搬送するケースもシミュレーション。玉榮院長と岡田医師は船内のゾーニング(区分け)について助言したが、トイレに行くために必ず通らなければいけないところがあるなど、完全にゾーニングできないことが判明、「コロナ患者さんの場合は、なるべくヘリコプターを使い、短時間で搬送すべき」という結論に至った。

訓練を終えた後、院内で他の医師にもフィードバックし、船内に持ち込むべき道具などを用意。その後、2回ほど巡視船で患者搬送をする機会があったが、訓練内容を院内で共有していたこともあり、同院に応援に来ていた医師が同乗した場合でも、スムーズに搬送することができた。

今後も継続的な訓練を

海上自衛隊鹿屋航空基地内の第22航空隊鹿屋航空分遣隊が2022年度末で廃止されることが、9月1日にわかった。廃止後の具体的な部隊運用は現時点で決まっておらず、鹿児島県は離島の搬送体制維持を防衛省に求めている。玉榮院長は「現時点ではどのような体制になるかわからないので、沖縄県の自衛隊にも協力要請をする予定ですが、このタイミングで海上保安庁と訓練ができたのは、とても良かったです」と吐露。

今後について「定期的な訓練に加え、実際に搬送した症例について事後検証もできれば良いと思います。これからも顔の見える関係を続けていきたいです」と意気盛ん。

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