石井・札幌東病院医学研究所研究員 潰瘍性大腸炎の研究 今年度科研費に採択
石井・札幌東病院医学研究所研究員
潰瘍性大腸炎の研究
今年度科研費に採択
「新しいエビデンス構築に貢献したい」と石井研究員
札幌東徳洲会病院医学研究所の石井貴大研究員(同院消化器センター医長兼任)が計画した研究が、日本学術振興会の今年度科学研究費助成(科研費)に採択された。研究テーマは「潰瘍性大腸炎(UC)の発がんサーベイランスを目的とした分子病理学的解析」。
科研費は複数の種目を設けており、石井研究員は「研究活動スタート支援」で採択された。これは「我が国の研究機関に採用されたばかりの研究者や育児休業等から復帰した研究者等が行う研究をサポートするもの」。石井研究員は2017年10月以降3年半にわたり国立がん研究センター東病院に国内留学。今年4月に札幌東病院に復帰してから、新たに取り組む研究課題であり、同研究種目での採択は同研究所で初。
長期に及ぶUC患者さんは大腸がんの発生リスクが高いことから、定期的な内視鏡的サーベイランス(調査)が欠かせない。生検による病理学的な判定やP53免疫染色で評価を行うものの、早期がんの確実な発見は難しいのが現状だ。
研究では、UC患者さんの大腸粘膜から得た生検組織の組織学的異型度とP53免疫染色結果を再評価し、TP53遺伝子(がん抑制遺伝子)などのドライバー変異解析を行う。生検診断に遺伝子解析の結果を関連付けることで、発がんリスクの予測に有効な指標を得ることが目標だ。同院IBDセンターの前本篤男センター長をはじめ同センターのスタッフや、医学研究所の小野裕介・主任研究員らがサポートする。
石井研究員は「高い精度で、がんを早期発見する技術を確立できれば患者さんの利益につながります。新しいエビデンス(科学的根拠)の構築に貢献したい」と意気込む。
臨床のかたわら研究を行う石井研究員
医学研究所の水上裕輔・がん生物研究部部門長(旭川医科大学内科学講座がんゲノム医学部門・消化器内科教授)は「若手医師が研究医としてステップアップを目指すキャリアデベロップメントの良いモデルになると期待しています」。