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徳洲会病理部会 遠隔迅速病理診断スタート 神戸病院が八尾病院とネット介し連携

2021.10.13

徳洲会病理部会
遠隔迅速病理診断スタート
神戸病院が八尾病院とネット介し連携

神戸徳洲会病院は八尾徳洲会総合病院(大阪府)を拠点とする大阪病理診断研究センター(TOP)と連携し、遠隔迅速病理診断を開始した。迅速病理診断とは、手術の最中に一部の細胞や組織を採取し、病変が腫瘍かどうか、腫瘍であれば良性か悪性かなどを限られた時間で診断すること。インターネットを介し、手術中の検体採取と病理診断を別々の施設で行うのが遠隔迅速病理診断だ。神戸病院には病理診断科がなく、これまで迅速病理診断が必要な手術はできなかったが、これを機に診療の幅が広がった。

手術の質向上・幅拡大に寄与

「離島・へき地病院を含め対応したい」と青笹・最高顧問

通常の病理組織検査では、ホルマリン固定や染色など多くの工程を経て組織標本プレパラートを作製し、顕微鏡で観察するため、結果が出るまで2~7日かかる。これに対し迅速病理診断では、検体を液体窒素で急速冷凍した後、クライオスタットという専用の器械で凍ったまま組織を薄く切り、染色を施して顕微鏡で観察する。院内で完結できる場合、手術室から検体が病理検査室に届き、術者に結果を報告するまでに要する時間は10~15分だ。

迅速病理診断の結果により、治療範囲を決めたり、より適切な術式に変えたりするため、がんの手術では欠かせない工程となる。一方、全国的に病理医が不足しているため、手術を行うすべての病院に病理医を配置できないのが現状。徳洲会病理部会は、センター化による人員集約により病理医不足をカバー、グループ病院の病理診断を一括受託している。今回初めて、病理診断科のない神戸病院がTOPと連携し遠隔迅速病理診断を実施した。

離島・へき地に対応へ

「手術の幅が広がった」と冨田院長

実施に先立ち、同部会は遠隔迅速病理診断の手順書を作成。「当日まで」、「当日」、「終了後」に分けて手順を示し、当日の注意点として①目的箇所は外科医が決定し、手術室でその部分を切除したうえで検査室に提出する、②目的箇所1カ所につき、原則として1ブロックに収まる大きさにとどめる──などを決めた。診断結果はTOPの病理医が、直接電話で神戸病院の術者に伝える。

6月21日に大腸がんの手術で1例目、同30日に乳がんの手術で2例目を実施。乳がんの手術ではセンチネルリンパ節生検で陽性が判明、術式を変更し対応した。冨田雅史院長は「データ転送の時間などに課題はありますが、手術のクオリティーを向上させる大きな一歩となりました。病理診断科がなくて手術の幅が広げられない病院は多くあると思いますが、当院が先頭に立って実施できたことは大きな価値があります」と胸を張る。

青笹克之・徳洲会病理部門最高顧問は「病理医のいない病院では臨床検査技師がクライオスタットを操作しますので、技師のスキルアップも必要。神戸病院での経験を生かし、今後は全国の徳洲会病理センターで、離島・へき地病院を含めた病理診断科のない病院の遠隔迅速病理診断に対応していきたい」と明かす。




遠隔迅速病理診断用に画像データを転送(神戸病院)

若手医師の教育にも活用

「ダブルチェックできることがメリット」と小川部長

中部徳洲会病院(沖縄県)は病理診断科があるが、神戸病院に先立ち、福岡徳洲会病院を拠点とする九州・沖縄病理診断研究センターと連携し、遠隔迅速病理診断を実施している。小川真紀・中部徳洲会病院病理診断科部長は「別の病理医と同じ画像を見ながら、ダブルチェックやディスカッションできるのがメリット。また、標本ではなく画像データとして管理できるので、非常勤の若手医師の教育にも役立てています」と説明する。

同院では、クライオスタットを用いた標本づくりを小川部長が担っているが、緊急時のために技師が担当する場合のマニュアルも用意。今後は画像データを管理するパソコンと電子カルテとの共有を進めるなど、よりスムーズな実施を目指す。

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