湘南鎌倉病院 ビンダケル導入施設に認定 難病「心アミロイドーシス」治療へ貢献
湘南鎌倉病院
ビンダケル導入施設に認定
難病「心アミロイドーシス」治療へ貢献
学会制定の厳しい要件クリア
(左から)手島伸一・病理診断部部長、認定証を手にする齋藤滋・総長兼循環器科主任部長、髙橋副院長、川田純也・脳神経内科部長
心アミロイドーシスは、心筋細胞にアミロイドという異常なタンパク質が沈着し機能障害を来す病態で、主要な病型はAL(免疫グロブリンL鎖)型アミロイドーシスと、ATTR-CMに大別される。これらを合わせた有病率は人口100万人当たり6.1人と推定されている(心アミロイドーシス診療ガイドライン)。
ATTR-CMはトランスサイレチンというタンパク質がアミロイドに変異し、心筋細胞間質に沈着し心不全や不整脈などの症状を来す。主に加齢による野生型と遺伝子変異による変異型がある。
心不全の症状があり、心エコーや心電図で心肥大、不整脈、低電位などの検査所見を認め、同疾患が疑われる場合、心筋生検で確定診断を行う。現在、確定診断は心筋生検に限られているが、診断能の高さから核医学検査である99m Tc(テクネシウム)─ピロリン酸心筋シンチグラフィに注目が高まっており、湘南鎌倉病院も取り組んでいる。心筋シンチグラフィで、ほぼ心アミロイドーシスと判断した患者さんに心筋生検を行っている。
同院が認定を受けたのは6月7日(2026年6月末まで有効)。認定には表のとおり高いハードルの施設要件があるほか、医師要件もあり、同院は3例以上の診断経験がある髙橋佐枝子・副院長兼循環器科部長がビンダケル導入医師として認定を受けた。
投与した30カ月の死亡リスク30%減
「ATTR-CMの生存期間は確定診断から中央値で約3年半と言われています。国際共同臨床試験の結果ではビンダケル投与群はプラセボ群と比較し、投与した30カ月の死亡リスクが30%低下、心血管事象に関連する入院頻度が32%低下というデータが出ました。治療手段がなかったため適応拡大は朗報です」(髙橋副院長)
ビンダケルは野生型と変異型の両型を対象とし、剤形はカプセルで経口投与。アミロイドの形成や心筋細胞への沈着を抑制する働きがある。もともと難治性神経疾患による末梢神経障害の進行を抑制する治療薬として13年以降使われてきた。その後、国際共同臨床試験で死亡率の低下などを確認し、19年3月にATTR-CMが適応に追加。同院はこれまで、脳神経内科で末梢神経障害の進行抑制のためビンダケルを使用してきた実績がある。
髙橋副院長は「ATTR-CMは、まれな疾患ですが、当院では10年以降21年2月末までに、6人の患者さんに診断を付けてきました。治療に関して以前は大学病院に紹介していましたが、地域の基幹病院として診断から治療まで一貫して大学病院並みの医療を提供するため、ビンダケル導入施設の認定を取得しました。心筋生検は循環器科部長の村上正人先生が実施しています。同科に加え病理診断部や脳神経内科など関連する複数の診療科の体制が整っているからこそ取得できました」と強調。
3月以降も新たに3人の患者さんをATTR-CMと診断し、ビンダケル投与予定の患者さんがいる。
髙橋副院長は「高額薬のため現実的には指定難病の認定後に治療を開始します。心不全の症状が軽い患者さんに、より効果が期待でき、また認定まで一定の時間を要するだけに早期発見が大切。心肥大などの指摘があり、少し動いただけで息切れがするなど自覚症状がある場合は医療機関の受診をおすすめします」と呼びかける。今後は徳洲会グループのスケールメリットを生かし、離島・へき地病院と連携し、同疾患の疑いのある患者さんに対する検査・治療機会の提供に取り組む考えだ。