名古屋病院 ロボット支援腎盂形成術導入の経験を論文で報告 2020年4月に保険適用
名古屋病院
ロボット支援腎盂形成術導入の経験を論文で報告
2020年4月に保険適用
「経験を重ね地域医療に貢献していきたい」と黒川部長
名古屋徳洲会総合病院の黒川覚史・泌尿器科部長は「ロボット支援腎盂形成術~市中病院における導入の経験~」と題する論文を日本泌尿器内視鏡学会の機関誌『Japanese Journal of Endourology』に投稿、掲載された。
同院では2012年に愛知県の市中病院として、初めて内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術を開始。同年12月には、徳洲会倫理審査委員会の承認を得てロボット支援腎盂形成術の第1例目を実施した。同手術は水腎症の標準治療として20年4月に保険適用となった。水腎症は小児に多く、腎臓でつくられた尿が尿管や周囲の血管の異常により、腎臓に停滞する病気。
同手術の術式は開放手術(腹部を切開する方法)と腹腔鏡下手術がある。開放手術は患者さんへの侵襲が大きいのに対し、腹腔鏡(ふくくうきょう)下手術は小さな孔だけで手術が可能だが、数ミリ径の尿管同士を縫合するのは難易度が高く、長時間の手術を余儀なくされる。
一方、ダヴィンチ手術であれば内視鏡画像を拡大でき、手振れを防止する機能も備わり、鉗子の可動域も人間の手首より広いため、短時間で精度の高い手術が可能だ。
論文では12年12月から20年8月に同院で実施した15例をもとに、ダヴィンチ手術の実績や、安全かつ有効に治療するための取り組みを紹介。手術適応では、一般的に体重10㎏以上かつ小児以上の患児に推奨されており、同院では安全性を考慮し10歳以上の患者さんを対象にしたと報告。手術手順では、体位や腎盂尿管移行部の剝離(はくり)、切除などに関し画像を用い解説。
ダヴィンチのアームに鉗子をセッティング
黒川部長は「論文にすることで、あらためて世界の報告と比較し、自分の手技を見つめ直すことができました。患者さんにメリットのある手術が保険適用となり、より治療が受けやすくなったので、新しい技術を積極的に取り入れ、腕も磨いていきたい」と意気込む。
同院のダヴィンチ手術の実績は12年1月から21年7月までで759例、うち泌尿器科だけで629例で、内訳は前立腺520例、腎臓がん94例、腎盂15例。黒川部長は「この10年で近隣にもダヴィンチを導入する施設が増えましたが、腎盂形成術まで実施している施設は少なく、いち早くロボット支援腎盂形成術を取り入れてきた意義は大きいと思います。今後も経験を重ね、地域医療に貢献していきたい」。