八尾病院 コロナ重症例にECMO 徳洲会で使用件数トップ
八尾病院 コロナ重症例にECMO
徳洲会で使用件数トップ
「若手医師の教育に注力します」と緒方部長
人工呼吸器は肺に酸素を送り、換気を補助する一方、ECMOは体内から取り出した血液に酸素を与え、二酸化炭素を除去してから再び体内に戻す装置。体への侵襲は大きいが、人工呼吸器では酸素化・換気の維持が困難な患者さんにとって、ECMOは最後の砦(とりで)だ。
ECMOには2種類ある。静脈から取り出した血液を静脈に送るV─V ECMO(肺の機能を補助)、静脈から取り出した血液を動脈に送るV─A ECMO( 心臓・肺の機能を補助)で、このうちコロナ重症患者さんの管理に用いるのはV─V ECMOが中心。
同院はECMO(V─V専用)を3台保有し、患者さんにECMOを導入する際は、ELSO(ECMOの使用登録と、その集計報告などを行う国際的な非営利団体)のガイドラインを参考に実施。
スウェーデンのKarolinska Institutet でECMOコースを修了し、現在はNPO法人日本ECMOnetのコアメンバーで協力者でもある緒方嘉隆・集中治療部部長は「当院のECMO使用者数の多さは、大阪府でコロナ患者さんが急増した第4波の厳しさを表していると思います」と振り返る。
また、ECMOの管理の難しさにも言及し「とくにV─V ECMOは慣れないと扱いが難しい。肺を徹底的に休ませ保護するのが目的のため、中途半端な回復状態で離脱させては意味がありません。長期間、肺の機能を止めるのは勇気が必要ですし、出血や血栓など合併症、人工肺の膜交換など注意点が多々あります」と強調する。
同院ではICU(集中治療室)8床のうち3床をコロナ重症患者さん用に確保。昨年4月1日から今年8月19日までに、中等症を含む入院患者さんは約300人、そのうち86人に人工呼吸管理を行い、うち13人(平均年齢61・2歳)にECMOを導入した。
ECMOによる治療の様子
第4波で患者さんが激増した3~4月は、ICUの3床だけでは間に合わず、中等症用の病床でも人工呼吸管理を行い、最大で一度に人工呼吸器9 台を管理した時期もあった。
緒方部長は「一般病棟の看護師にも緊急でトレーニングを行い、管理に協力してもらいました。第4波の最中から作成した講義動画をeラーニングで学んでもらっています」と説明。今後の展望について「集中治療専門医が不足していますので、当院で若手医師の教育に力を入れていきたいです」と意欲的だ。