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徳之島病院 島内クラスター制圧に奔走 「遠隔診療支援システム」活用

2021.08.24

徳之島病院 島内クラスター制圧に奔走
「遠隔診療支援システム」活用

鹿児島県の離島にある徳之島徳洲会病院は2020年12月に島内クラスター(感染者集団)が発生した際、受け入れた陽性患者さんに対し、遠隔診療支援システムを活用しケアにあたった。同システムは19年度に総務省の「オンライン診療の普及促進に向けたモデル構築にかかる調査研究」に協力した際に導入。生体データ(心電図、酸素飽和度、血圧、体温など)を遠隔で確認でき、陽性患者さんとの接触機会を減らした。島内クラスターは1月中旬に終息、同院で院内感染は起きなかった。

院内感染は起こさず終息

藤田院長は厚労省指定オンライン診療研修修了

徳之島では12月1日に新型コロナ陽性者が発生、徐々にその数を増やし、9日にクラスターとして認定された。最終的に60人超の陽性者を確認。徳之島病院は、保健所からの要請で派遣された医師に加え、応援に駆け付けた福岡徳洲会病院の感染管理認定看護師、一般社団法人徳洲会医療安全・質管理部の野口幸洋・課長補佐らと共に終息に向け奔走した。

徳之島病院はクラスター発生期間、毎日、数十件の行政検査に対応。陽性者は鹿児島県本土の病院に次々と搬送されたが、それでも間に合わず、ゾーニング(区域分け)して6床のコロナ専用病床を用意。陽性患者さんと接触するスタッフの数を抑えるため、この期間は医師、看護師共に同病床の専従となり、主に軽症の患者さんに対応した。

遠隔診療支援システムでコロナ患者さんの生体データを管理 クラスター終息に奔走したコロナ専用病床のスタッフ

患者さんの管理にはセコムの遠隔診療支援システム「Vitalook(バイタルック)」を活用。同システムを用い病床とスタッフの待機場所をつなげることで、患者さんの生体データを常時リアルタイムに収集、電子カルテに蓄積し、医師や看護師が遠隔から状態を確認できるようにした。また、同システムにはオートアラート機能やビデオ通話、目的に沿ったデータ表示など機能も搭載。

藤田安彦院長は「スタッフがレッドゾーン(汚染区域)に入る回数が減り、PPE(個人防護具)着脱の負担軽減に加え、感染対策にもつながったと思います。スタッフの頑張りもあり、院内感染を起こすことなくクラスターは終息しました。今後もコロナの患者さんが入院する際には、遠隔診療支援システムを活用していきたいです」と胸を張る。

同院はこの期間も救急受け入れや外来を継続。来院する患者さんには入り口で、3人体制で体温チェックと問診を実施。これはクラスター終息後も2週間ほど続けた。

現在は院内の感染対策を強化しつつ、ワクチン接種に尽力。6月中に65歳以上の高齢者の方々が終わり、7月以降は基礎疾患を有する方や高齢者施設などの従事者を対象に行っている。藤田院長は「若年者までワクチン接種が終わり、集団免疫を獲得することで、少しでも日常生活が取り戻せることを願っています」と期待感をあらわにする。

離島・へき地の病院こそIoTを積極導入すべき

訪問診療で遠隔診療支援システムを活用する藤田院長

遠隔診療支援システムは、19年度に総務省の「オンライン診療の普及促進に向けたモデル構築にかかる調査研究」に協力した際に導入。同調査の背景には、厚生労働省が18年3月30日に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を公表し、同年4月の診療報酬改定で「オンライン診療料」を新設したことなどが関係している。

実際には同診療の立ち上げ方法などがわかりにくく、とくに地域全体での同診療の開始には地域戦略・地域ルール(方法論)が必要とされることから、総務省では複数の地域で同調査を実施した。

同調査は、効率的な手順の明確化、地域で展開可能な実施参照モデルの構築、IoT(モノのインターネット)機器を活用した疾病管理の検証などが目的。18年度には全国の4医療機関、19年度には徳之島病院を含め3医療機関が協力した。同院では実証期間中に在宅療養中の患者さん25人に対し、オンライン診療を実施。

藤田院長は「この調査でIoTの重要性を再確認しました。マンパワー不足解消、医療の質向上などを図るために、離島・へき地病院こそ積極的に導入するべきだと思います。調査を終えた直後にコロナが流行し始め、何かあった時は、このシステムが感染対策に有用だと考えていました」と振り返る。

藤田院長が厚労省指定のオンライン診療研修修了

また、藤田院長は20年5月30日に厚労省指定オンライン診療研修を修了した。同研修では医師がオンライン診療を実施する際に必須とされる指針や情報通信機器の使用、情報セキュリティなどに関する知識の習得を行う。同院は今後も主に訪問診療でオンライン診療を活用していく。

同院は24年に新築移転する予定。新病院では感染症の患者さん専用のエレベーターを設置するなど感染対策にも配慮。また、新規に緩和ケア病床を3床、HCU(高度治療室)を8床、回復期病床を38床設置し、診療機能も拡充する計画だ。

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