南部病院の放射線治療 「サイバーナイフ」好調 トモセラピーも駆使し地域に貢献 | 徳洲会グループ
南部病院の放射線治療 「サイバーナイフ」好調 トモセラピーも駆使し地域に貢献
導入1年で341件治療
眞鍋医長(前列左から3人目)や橋本医長(その右)、コメディカルが一丸となり対応
南部病院では昨年6月にサイバーナイフを導入し、今年5月末までの1年間で341件の治療を実施した。同期間のトモセラピーの治療件数は407件で、放射線治療件数は計748件。サイバーナイフ導入前の2019年のトモセラピーの治療件数は470件で、導入後もトモセラピーの治療件数を大幅に落とすことなく、サイバーナイフの治療件数を上乗せする形で、放射線治療件数を大きく底上げした。
この要因について眞鍋良彦・放射線治療科医長は「これまで紹介のなかった病院からも紹介が来るようになりました。サイバーナイフが適用外だった場合でも、トモセラピーで治療することができるため、取りこぼしなく対応できます。地域のなかで『放射線治療なら南部病院に任せれば安心』と認識されてきていると感じています」。
さらに追い風となったのは、導入直前の昨年4月の診療報酬改定で、体幹部定位放射線治療(線量を病変に集束する治療)の保険適用が拡大されたことだ。そのひとつが「直径5㎝以下の転移性脊椎腫瘍」。近年、脊椎転移に定位照射を行うことで高いコントロールが得られるメリットが明らかとなり、痛みや脊髄(せきずい)まひに至る前の早い段階から、保険診療として定位照射が可能となった。
ロボットアームが患者さんのまわりを自在に動き、多方向からビームを照射
脊椎は脊髄と数㎜しか離れていないため、脊椎の病変に絞って照射するのは従来の装置では困難だった。一方、サイバーナイフであれば極細の放射線ビームで狙い撃ちでき、安全かつ効果的な治療が可能だ。位置の調整にはCT(コンピュータ断層撮影装置)に加えMRI(磁気共鳴画像診断装置)も並行して使用し、正確な治療計画を立てる。
橋本成司・同科医長は「痛みがないと脊椎転移に気付けないケースも多いのですが、MRIや骨シンチグラフィーにより、早期発見できます。サイバーナイフで早期治療が可能なことを周知するため、近隣の医療機関での講演活動にも注力しています」。
適用拡大のうち「5個以内のオリゴ転移」も治療件数を伸ばした要因のひとつ。オリゴ転移とは、全身転移ではなく、少数個のみの限局的な転移しか存在しない状態を指す。転移があった場合、これまでは抗がん剤の全身投与が主流だったが、オリゴ転移であれば放射線治療により、予後改善や根治の可能性がある。
眞鍋医長は「近隣の医療機関からも、オリゴ転移への治療は好評です。これまで抗がん剤しかできなかったケースでも、放射線治療という選択肢が増えました。まだ当院での治療は始まったばかりのため、これから症例を重ねていきたい」と展望する。
転移性脳腫瘍の患者さんの頭部を診療放射線技師がマスクで固定し治療準備
手術困難な膵臓がん症例 半年後も完全奏功を示す
また、この1年で難しい治療も経験した。症例は病変部に血管を巻き込んでいたため手術が困難な膵臓(すいぞう)がん。主治医から放射線治療を相談されたが、膵臓は十二指腸に隣接しているため放射線が当てにくい。そこで主治医が腹腔鏡(ふくくうきょう)下で病変部に金マーカーを埋め込み、それを目印に定位照射し治療した。橋本医長は「サイバーナイフだからこそ実施できました。この症例では、半年後も完全奏功が得られています」とアピールする。
コロナ禍でも、がんの治療は必要不可欠なため件数を落とさなかった。外来での治療が可能で、サイバーナイフであれば治療回数を大幅に減らすことができるため、通院回数を減らしたい患者さんにとっても有用だ。
治療回数の少なさは、離島などからの紹介患者さんにとっても有益だ。眞鍋医長は「サイバーナイフであれば1週間程度で治療が終わります」とアピールしたうえで、「病変部の大きさや広がりによっては、トモセラピーが有効になりますので、患者さんへのメリットを考え、治療方針を決めます」と説明する。
橋本医長は「今後は、がんの患者さんやご家族の就労支援を重視し、現在の早朝照射に加え夜間の照射にも対応することで、沖縄県のがん治療に貢献していきたい」。