新しい頸がんワクチン 吹田病院 WEB講演会で啓発
新しい頸がんワクチン
吹田病院
WEB講演会で啓発
子宮頸がんワクチンの利点を訴える北田副院長
吹田徳洲会病院(大阪府)の北田文則副院長(産婦人科)は子宮頸(けい)がんの新しいワクチンが今年2月に承認されたことを受け、医療講演などで啓発に注力している。
子宮頸がんは性交によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって女性のみに発現する疾患で、「性交経験のある50歳までの女性の約80%が感染します」と北田副院長。多くの場合は免疫により、がん化する前にウイルスを体内から排除することができるが、なかにはウイルスが長期間、体内に残存するケースもあり、その一部ががん化する。
発症年齢が徐々に低年齢化しているのが特徴で、1990年には20~30代の発症率が10万人当たり7.8人であったのに対し、2014年には16.8人と倍増。同がんによる死亡者数は年約2,800人だが、「問題は、低年齢化により出産年齢のピークと発症年齢のピークが重なってきていることです」(北田副院長)。子宮頸がんは比較的予後が良いが、治療後に流産、早産しやすくなったり、治療のため出産を断念せざるを得なくなったり、進行すると子宮を摘出せざるを得なかったりすることがある。
同疾患はワクチン開発が進んでおり、検診とワクチンでほとんどの場合、予防もしくは重症化阻止が可能だ。ヒトに感染する型だけでも100種以上あるHPVのうち、とくにハイリスクの2つの型を予防する2価ワクチンと、2価ワクチンに加え良性の尖圭コンジローマの原因となる2つの型を予防する4価ワクチンが、小学6年生~高校1年生の定期接種ワクチンとなっており、同年齢は無料で接種が可能。2価もしくは4価ワクチンを受けるだけでも子宮頸がんのリスクを70%程度回避できると言われている。
さらに、このほど4価ワクチンに子宮頸がんの発生因子となる5つのHPV型を加えた9価ワクチンが承認。これにより子宮頸がんのリスクを90%以上の確率で予防できると見られ、「子宮頸がんは検診と9価ワクチンでほぼ制圧できます」と北田副院長は語気を強める。
ただ、日本では子宮頸がんワクチンには重大な副作用があるとの誤解が広まっており、なかなか接種が進んでいないのが現状だ。調査の結果、ワクチン接種後の症状とワクチンとの因果関係は認められなかったが、いまだ心理的な抵抗が強いせいか世界で接種が進む一方、日本の接種率は依然低迷しており、WHO(世界保健機関)も懸念を表明。
北田副院長は「このまま接種控えが続けば子宮頸がんは日本の風土病となってしまう可能性もあります」と警告し、「若くして亡くなる方、出産に支障が出る方を減らすためにもぜひ接種してください」と呼びかけている。