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平島・徳洲会奄美ブロック 総合診療研修センター長 離島から神戸病院を遠隔支援

2021.06.23

平島・徳洲会奄美ブロック
総合診療研修センター長
離島から神戸病院を遠隔支援

徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター長を務める名瀬徳洲会病院(鹿児島県)の平島修・内科部長は、神戸徳洲会病院の若手医師の指導を現地に出向いたり遠隔で行ったりする"ハイブリッド"で実施している。遠隔指導では電子カルテを共有しテレビカンファレンス(症例検討会)を実施、またWEB会議サービス「Zoom」を活用しベッドサイドでの回診にも同行する。より現地での実際の指導に近い形で行えるように工夫、若手医師の教育に注力している。

Zoomで若手医師と回診

「教育をしっかりするからこそ人が集まる」と平島センター長

平島センター長が指導を担当する神戸病院の仲道汐里・内科医師は、3月に初期研修を終えた医師3年目。来年度からは福岡徳洲会病院で専攻医として内科専門医研修プログラムを受けることが予定されているが、その前の1年間、神戸病院で経験を積んでいる。しかし、同院では指導医が不足しているため、平島センター長がサポート。

平島センター長は現在、名瀬病院での外来・病棟勤務に加え、週に1回ほど喜界徳洲会病院(鹿児島県)と岸和田徳洲会病院(大阪府)で研修医の指導にあたっている。このため神戸病院に毎週出向くのは時間的に厳しく、遠隔指導を加えた〝ハイブリッド"という方法を考案した。

遠隔指導は週1回の頻度で実施する。神戸病院の電子カルテは徳洲会インフォメーションシステム(TIS)により、共有できるように設定、ベッドサイドでの回診にはZoomを活用し、さらに互いの情報をシェアするためにノートアプリも用いている。

遠隔指導の当日、仲道医師がZoomをつないだタブレットを持ち、「これから画面越しの平島先生と一緒に診察させてくださいね」と患者さんに話しかけると、患者さんは興味深そうに画面をのぞき込んだ。

「こんにちは。調子はいかがですか」と平島センター長が話しかけ、和やかに問診が始まった。問診を進めるなかで患者さんの腹部膨隆に対し、仲道医師に打診を行うように指示。平島センター長がその様子を見守っていると、「打診はこうやった方がいいよ」と指の置き方や動かし方など、ディスプレイを通じアドバイスした。

Zoomで患者さんの診察を行い、仲道医師にアドバイス
情報のシェアにはノートアプリも活用

ベッドサイドでの診察が終わると、廊下に出て治療方針を話し合い、次の患者さんのもとへ向かう。1日に回診するのは、新規入院患者さんを中心に5~6人。時には「次回、神戸病院に行った際に、腹部診察についてミニレクチャーを開きましょう」と約束し、教育に厚みをもたせている。

遠隔指導でベッドサイドでの回診を行うのは「成熟していない医師が行った問診には、内容にばらつきがあります。取れてないといけない情報が何かを見破るには、ベッドサイドでの回診に同行することが必要不可欠です」と平島センター長。

たとえば患者さんのADL(日常生活動作)は、高齢であれば趣味、仕事をしているのであれば仕事内容によって獲得目標が変わってくるが、若手医師はこうした情報の重要性に気付かないことも多いと言う。

これは、いわゆる"テクニック本"による弊害と平島センター長は指摘する。「患者さんを診察する際、どうしても目立った症状に目が行きがちになります。たとえば患者さんの足に浮腫があった場合、その原因を探ろうとして質問を考えますが、その時に、頭の中には"テクニック本"があるのです。それも大切ではありますが、その症状により、患者さんの日常がどのように崩れ、何に悩んでいるのか、その本質をとらえることが必要です」と説く。

こうした考え方は、指導する側も言葉で説明するのが難しい。そのためベッドサイドで患者さんに診察する姿を実際に見せて、どのような姿勢で臨んでいるのかを体感してもらうことで、若手医師に気付いてもらう。

「気付けないところ指摘してもらい 新たな発見」

平島センター長は1~2カ月に1回ほど神戸病院を訪れ指導を行っているが、「1カ月間、ベッドサイドの情報を共有せず、電子カルテの情報をベースにテレビカンファレンスだけを行っていた場合、研修医が本当は何に困っているのか気付いてあげられません」と強調する。

さらに「患者さんの具合の悪さやADLの状態は、言葉だけでは説明しにくいケースもあり、ベッドサイドで患者さんの表情や動きをひと目見るだけで、得られる情報は格段に違ってきます。Zoomの音声も映像もきれいですし、途切れることもありません。患者さんもすんなり受け入れてくれますし、失礼にならないように気を付けています」と明かす。

こうした指導について仲道医師は「遠隔の指導でも、回診で自分では気付けないところを指摘していただけるのは、新たな発見があり、勉強になります。電子カルテだけでは伝わらない細かい情報まで共有できるのも心強いです。また、遠隔だけでなく、現場での指導も交えていただき、弱点に応じてミニレクチャーなど開いていただけるので、モチベーションアップにもつながります」と満足している。

今後の展開について平島センター長は、「デジタル技術の進化を教育に生かさない手はありません。教育をしっかりとするからこそ、そこに人が集まるのだと考えます。また、遠隔指導は1対1である必要はありませんので、今後は専門医を交えた回診を行ったり、大勢が参加するカンファレンスに活用できたりすれば良いと思います」と意気軒高だ。

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