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伊藤・湘南藤沢病院部長ら 「MRgFUS」で論文22本 認知症患者さんに振戦治療も

2021.06.16

伊藤・湘南藤沢病院部長ら 「MRgFUS」で論文22本 認知症患者さんに振戦治療も

「メンバーも次々に論文発表しています」と伊藤部長

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の伊藤恒・脳神経内科部長らは、これまでにMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)に関する22論文を発表した。直近ではアルツハイマー病を合併した本態性振戦の患者さんに対し、添付文書を根拠に同治療を実施した症例を報告。

日本脳神経外科学会のガイドラインには、アルツハイマー病患者さんはMRgFUSの対象から除外されると明記。一方、厚生労働省が所管する医薬品医療機器総合機構に承認されたMRgFUS治療機器の添付文書には、「意思疎通が困難な症例」を除外すると記載されている。伊藤部長は初期のアルツハイマー病を合併した本態性振戦の患者さんに対し、「添付文書はガイドラインの上位にあるので問題なし」と治療機器メーカーに確認、同治療を行った。

患者さんと頻回にコミュニケーションを取り、安定した精神状態を保ったまま治療を進め、右上肢の振戦はほぼ消失。伊藤部長は「認知症は増加の一途をたどっており、本態性振戦やパーキンソン病の患者さんが認知症を合併することもあります。このような患者さんにもMRgFUSが振戦やジスキネジア(不随意運動の一種)の治療選択肢のひとつになることが示されました」と説明。

同症例について詳述した論文は日本神経学会の英文誌に公開、これがきっかけとなりガイドラインが改定される見込みだ。

また、同院では本態性振戦10例、振戦優位型のパーキンソン病11例、ジスキネジアを呈するパーキンソン病3例を対象として臨床研究を実施、それぞれ長期予後を含めた臨床研究に関する知見はすべて論文で発表した。

伊藤部長は「新しい治療であり、かつ長期予後までまとめた論文は世界的に少ないので、臨床研究に関する論文はすべて英文にしました。オーストリアやカナダからも治療の問い合せをいただいています」とアピール。

「当たり前かもしれませんが、振戦の改善ではなく消失を目指すことが大切だとわかってきました。1回の治療で効果が低い患者さんや症状が再発した患者さんへの対応法も確立されつつあります。一例一例、丁寧に経験を積み重ねていくのみです」と意欲的だ。

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