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佐々木・湘南鎌倉病院センター長 核医学分野などに多大な貢献 第13回永井隆平和記念・長崎賞を受賞

2021.03.02

佐々木・湘南鎌倉病院センター長
核医学分野などに多大な貢献
第13回永井隆平和記念・長崎賞を受賞

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)附属臨床研究センターの佐々木康人・放射線治療研究センター長は、第13回永井隆平和記念・長崎賞を受賞した。同賞は被爆者医療の向上・発展などに貢献した国内外の個人・団体の顕彰を目的として1995年に創設。2年に一度、授与されている。主催は長崎・ヒバクシャ医療国際協力会(NASHIM)。佐々木センター長は核医学分野、放射線防護分野、被爆者医療分野に関する多岐にわたる活動が評価された。

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本田所長(左)から記念の盾を受ける佐々木センター長本田所長(左)から記念の盾を受ける佐々木センター長

佐々木センター長は1963年に東京大学医学部を卒業、その後、東邦大学、群馬大学、東京大学などで教授を歴任し、放射線医学総合研究所長、同理事長などを務めた。

同賞の名称に冠される永井隆博士(医師)は、45年8月9日、爆心地から700mの地点にある長崎医科大学で勤務中に原爆被害に遭い、重症を負いながらも治療を受け、その後、被爆者の救護活動に尽力。白血病により43歳の若さで早逝した。著書『長崎の鐘』は古関裕而作曲の歌謡『長崎の鐘』とともに広く知られている。

賞を主催するNASHIMは長崎県や長崎市、長崎県医師会、長崎市医師会、長崎大学、長崎大学原爆後障害医療研究所などで構成。過去の受賞者には、被爆者医療の実態を活写した『長崎原爆記』を66年に出版し人々に感銘を与えた秋月辰一郎医師や、チェルノブイリ原発事故で被爆した人々への治療と放射線の健康影響に関する研究に尽力したウクライナのドミトリー・バジーカ医師などがいる。

授賞式は2月5日に実施。当初は長崎市内で行う予定だったが、コロナ禍のため、東京都内の長崎県東京事務所内で賞状や記念のブロンズ少女像「生命のともしび」(佐藤啓助作)の贈呈を行った。また、長崎県医師会館の会議室とオンライン中継で結んだり、NASHIMの構成団体の関係者がオンラインでそれぞれの場所から参加したりした。

授賞式では冒頭、長崎県医師会館からNASHIMの森崎正幸会長(長崎県医師会長)が主催者挨拶を行い、選考理由について「佐々木先生は、核医学の分野でシンチスキャナ(放射性同位元素で標識した薬剤を用いた画像検査)や、カテーテル型半導体放射線検出器、インビトロラジオアッセイ法(放射性同位元素を用い生体内での物質の挙動を試験管内で調べる方法)を用いた薬剤投与設計、乳糖分解酵素欠損症の診断法などに関し、先駆的な成果を上げられました」と説明した。

また佐々木センター長は、99年に茨城県東海村で発生したJCO臨界事故の際には、放射線医学総合研究所長として重度被曝者の治療の指揮にあたるなど、放射線災害医療の分野でも尽力。加えて、原子爆弾被爆者医療分科会長としての任期中には、新しい認定基準を定め、原爆症認定に関して「被爆者救済の立場に立つ」という理念を明確にした。

さらに、国際放射線防護委員会(ICRP)主委員会委員、国連科学委員会(UNSCEAR)議長などの重責を担い、放射線防護の国際的な基準の策定などに貢献した。

長崎県東京事務所の本田和人所長から賞状などが手渡され、長崎大学医学部の前村浩二学部長が佐々木センター長の功績を紹介。続けて、佐々木センター長が受賞者挨拶に立ち、「選考されたことを大変名誉に思います」と述べ、NASHIM関係者に謝意を表した。

これまでの足跡を振り返る記念講演をオンラインで実施これまでの足跡を振り返る記念講演をオンラインで実施

佐々木センター長は放射線医療の目覚ましい進歩を指摘する一方で、放射線が人体に障害を与える両刃の剣であることもあわせて強調。JCO臨界事故に言及し「決して二度と起こしてはならない事故であると痛感するとともに、再生医学の進歩により高度被曝の治療が可能になることを願っています」と力を込めた。

東日本大震災の発災後には原子力災害専門家グループとして長崎大学医学部の故・長瀧重信教授などとともに事故後の対応に参画。その経験をふまえ「放射線の基礎知識、その健康影響と防護に関する常識、リテラシー(適切に理解する能力)を高める必要性を強く感じています」と訴えた。

最後に佐々木センター長は「永井先生の思いをつないで、平和への願いを子や孫の世代に伝える役割を少しでも果たしたいとの決意を新たにしました」と思いを語った。授賞式後には「放射線の健康リスクと医学利用~放射線と共に歩んで」と題し、これまでの足跡を振り返る受賞記念講演を行った。

なお、湘南鎌倉病院は2021年4月に〝包括的がんセンター〟として先端医療センターを開設する予定。陽子線治療やBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)、RI(放射性同位元素)内用療法、PET(陽電子放射断層撮影)を用いた創薬研究・支援などに取り組む方針だ。陽子線治療やBNCTは21年末を目安に開始する計画。

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