タンザニア 現地スタッフのみで腎移植を実施 長期にわたる徳洲会グループなどの支援が結実
2021.02.02
タンザニア
現地スタッフのみで腎移植を実施
長期にわたる徳洲会グループなどの支援が結実
アフリカのタンザニア連合共和国にあるベンジャミン・ムカパ病院に対する徳洲会グループと東京女子医科大学共同の腎移植支援プロジェクトが実を結び、現地スタッフのみによる腎移植手術が実現している。徳洲会グループは同国に2013年、技術指導や透析機器の寄贈などを行い透析センターの開設を支援。その後、同国からの支援要請に応え、腎移植のサポートを開始。医療者の派遣や日本国内でのタンザニア人スタッフの研修受け入れなど行ってきた。これまで徳洲会と東京女子医大のスタッフが現地スタッフをサポートしながら11例の腎移植を施行、技術移転を進めた。20年3月以降は、検査結果の確認などの支援を継続しているものの、手術に関しては同国のスタッフのみで取り組んでいる。
近隣諸国へ技術指導も期待
タンザニア人スタッフのみで腎移植を初めて実施(20年3月)
ムカパ病院は、アフリカ東部に位置するタンザニアの首都ドドマに立地。国立ドドマ大学の敷地内に建つ。以前は同大学付属病院だったが、18年に管轄が同国の教育省から保健省に移行。その後もムカパ病院とドドマ大学の間で人的交流が続いている。現地スタッフのみによる腎移植手術は、ムカパ病院で20年3月に1例目を実施したのに続き、同年6月に1例、同年11月に3例の計5例をこれまでに実施。いずれも無事に終了した。
直近3例のレシピエント(臓器受給者)は、透析導入から3~5年が経過した慢性腎不全の患者さんたち。2例は40代男性で、ともに兄弟間の移植。もう1例は20代女性で、兄妹間の移植だった。
徳洲会グループは〝生命だけは平等だ〟の理念を掲げ、国内にとどまらず海外、とくに医療が充実していない国々に対する支援を積極的に展開。タンザニアに対しては13年、技術指導や研修の受け入れ、透析機器の寄贈などを経て、ドドマ大学付属透析センターの開設を支援。
その後、16年に同国保健省から徳洲会に対し、次のステップとして腎移植実施のための支援要請があった。その当時、同国では腎移植を実施できる施設がなく、移植希望者はインドなど国外で移植を受けていた。腎移植の実績が豊富な東京女子医大から協力が得られたことから、徳洲会は支援要請に応え腎移植プロジェクトをスタート。
同国では移植医療に関する法制度が未整備だったため、法制度の整備を同国政府に求めるなど移植医療環境の整備に努めた。また、ムカパ病院の医師や看護師などに対する日本での研修と並行し、徳洲会スタッフが手術室やICU(集中治療室)の準備、患者選定に必要な検査の指導などのため、数回にわたって現地を訪問した。
18年3月22日、徳洲会と東京女子医大が派遣したスタッフがサポートするなか、タンザニアの医療者による初の腎移植手術が無事に終了。その後、同年8月に3例、19年3月に3例、20年1月に4例の計11例に実施し、現地スタッフへの技術移転を行った。
徳洲会と東京女子医大のスタッフが手術に参加し技術移転(18年8月)
20年3月には、初めて同国医療者のみによる腎移植手術を実施した。一般社団法人徳洲会国際部のムワナタンブエ・ミランガ・アフリカ担当顧問は「腎移植を希望されるタンザニアの患者さんに、国外に出向くことなく腎移植を受けられる機会を提供できるようになりました。現地スタッフのみで手術を実施できるようになったことは大きな進展です」と喜びの声を挙げる。
続けて「18年8月に行った手術では、コンゴとギニアの医師が見学のため参加しました。そのコンゴ人医師が自国からドナー(臓器提供者)とレシピエントをタンザニアに連れて腎移植を行う計画があると聞いています。今後、タンザニアが周辺地域の腎移植の拠点として患者さんに貢献し、将来的には近隣国に対し腎移植の技術指導を行えるようになるのが理想です」と展望している。